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ボランティア参加 中学校の福祉教育

 中学校での福祉教育にボランティアとして参加しました。具体的には、車椅子の扱い方法と介護支援のやり方のプログラムと高齢者の身体的な制約状態の体験プログラムです。
 福祉教育は、生徒に社会の中での役割や責任を理解してもらい、他者への思いやりや協力の精神を育てることを目的としているそうです。その為に、地域の福祉施設、高齢者施設への訪問やボランティア活動が教育の一環として行なわれているそうですが、今回参加させて頂いたのは、学校での実際のワークショップと言う形で、授業の一部として組み込まれているものでした。実行のために、地域の社会福祉協議会の傘下でボランティアとして参加させて頂いた次第です。
 まず、車椅子の扱い方法と介護支援のやり方のプログラムでは、車椅子の基本的な操作方法として、①車椅子を開閉してのセッティングのやり方、②車輪の固定具の操作方法と重要性、③車椅子への乗り降り方法、④乗車者のステアリングハンドルの使い方、⑤段差の乗り越え方、⑥介護者の支援方法(押し方とブレーキ操作、特に、⑤で後輪を軸に前輪を持ち上げて、段差を超える方法)、⑦介護者のコミュニケーションの重要なことを説明しました。また、実際に車いすを用いて、生徒2名が一組として、車椅子に乗る者と介護者になり、校内の設定コースを回りました。コースには、10㎝程度の段差やちょっとしたスロープも設定されており、車椅子初体験者には、ちょっと戸惑う場面も設けられています。段差を乗り越えるためには、後輪を軸に、介護者が後ろから、車椅子の取手とステップバーに体重を乗せて、前輪を上げて、まず段差に前輪を乗っけて進み、続けて大きな後輪で、車椅子を体ごと押すことにより乗り越えていきます。スロープでは、車椅子の進行方向を180°回転させて、バックで介護者が先に降りて行くようにします。設定コースでは、手洗い場も回ることになっており、車椅子に乗ったままでの水道の蛇口操作にも挑戦します。動作、移動の伴う実習ですので、その体験の印象は強いものの様です。一度コースを回ると、乗る者と介護者の役割を入れ替えて、もう一周します。

車椅子(筆者描画)

 車椅子の実習で恐れていたのは、子供たちがはしゃいでしまい、暴走までは行かないまでも、実際の趣旨通りに車椅子でコースを回れるのか? 小さな事故が起こらないか? が危惧されましたが、生徒たちは、結構、真面目に対応して頂き、ほぼ、コースの意図通り実習が出来たと思われました。終了後に聞いた参加生徒の感想では、「車椅子の扱いを体験出来て良かった。今後、介護の参考にしたい。」、「車椅子で段差を乗り越えるのが怖かった。」とのコメントを受けましたが、まっとうなもので、このプログラムの実施の意味があったというものでした。

 次に、高齢者の身体的な制約状態の体験プログラムでは、人間の視覚、聴覚、手足の動作を制約する装備を実際に装着し、高齢者のおかれる身体状況を疑似体験するのです。まず、視覚障害を模倣するために視野が狭く、且つ、ガラスの曇ったゴーグルを装着します。聴覚障害の模倣の為には、大きなヘッドフォンを両耳に装着し、聞こえ辛くします。身体的な制約を模倣するために、膝と肘に、ローラースケート時に装着するようなプロテクターを着け、可動域を制約します。加えて、手首には重りを巻き付けさせられ、手には軍手を着けることになります。また、膝のプロテクターには首からぶら下がった紐が結ばれ、腰の曲がった状態が作り上げられます。足首には重りを巻き、更に、重たいサンダルを履くので、歩行に対して、相当な負荷が負わされます。これらを装着した状態で、歩行を体験し、階段の上り下りも行います。ちょっと危険が伴います。私も体験してみましたが、階段では、手摺を握ってしまいました。更に、非常口表示やトイレの男女表示等の公共表示サインが見えるかに挑戦します。これ位は出来るのですが、新聞や折り込み広告は、とても読むことが出来ません。記帳用紙に自分の名前を書くことをトライしますが、なかなか指定された枠内には、名前が収まりません。次に、財布から指定された金額の紙幣とコインを出そうとするのですが、これにはかなりの困難さが伴います。最後に、ちょっと離れた場所から、声掛けを行いますが、強力なヘッドフォンにより、聞き取ることが難しくなっています。

高齢者の身体的な制約疑似装備(筆者描画)

 生徒たちは、これらの装備を装着しても、私が装着した時に比較して、相当自由に行動できていました。恐れていたのは、はしゃぎ過ぎて、体験処では無くなってしまわないかとの危惧でしたが、これは全くの必要の無い心配で、スムーズに体験が進んでいきました。生徒の感想では、「ゴーグルを着けることにより、相当見え辛くなる。こんな見え方では大変だ。」、「腰が曲がり、足に重りが付いた状態では、普通に歩くことも難しくなる。」とのコメントであり、この体験プログラムが、有意義で在ったことが確認された次第でした。
 今回の体験プログラムの対象者は、中学1年生でしたことから、まだまだ初々しい様子で、ちょっとはしゃぎながらも、プログラムを逸脱することなく学習して頂けたと思いました。正直、私の子供が中学時代には、今回の学校も、ちょっと荒れていた状態でしたが、当時から10年も経過して、前向きな生徒の眼差しと我々への敬意のある対応は、お手伝い程度の支援者である私も、温かい心持ちを得ることが出来ました。感謝!

感想
 反対にちょっと気になったのは、生徒の皆さんは、真面目で従順な気質になって来ており、これは、社会的には平和の方向にいい傾向なのかもしれませんが、一方で、その気質故に、悪だくみに秀でた族に操られてしまい、昨今の「闇バイト」事件にハマってしまうのではないかとの危惧を考えてしまった次第です。生きていくためには、反抗心や拒絶するためのエネルギーも必要かも?

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