「フィンランドの教育はなぜ世界一なのか」を読んで
岩竹美加子著「フィンランドの教育はなぜ世界一なのか」(発行所:㈱新潮社)を、大急ぎで読んだ。
買ったのは一年以上前。ずっと積読山に埋もれていたけど、先日、本屋さんで、著者の最新刊を見つけてしまったので、掲題著書を慌てて読み始めた。
2022年に経済協力開発機構(OECD)が実施した教育の総合的なランキング(OECD Better Life Index Education)で、フィンランドが1位になっていた。どうも、教育に関するいろいろな統計があるみたいで、この1位が何を示すものか、どの程度の信頼度があるのか、良く分からなかった。
別の統計調査では、日本が1位になっているものもある。
まぁ、統計調査なんて、結構、恣意的に出来てしまう。のは、舞台裏を知っている人たちにとっては公然の事実。
まぁ、細かい事は別として、日本もフィンランドも、共に高い教育水準にあるらしい。
なのに、本書によると、フィンランドの夏休みは6月中旬から8月中旬までの2カ月間もあるそうで、学校が休みになる日が、日本よりも遥かに多いこと。
夏休みの他にも、秋休みは1週間、クリスマス休暇は2週間もある。2月にはスキー休暇が1週間あるそうだ。だから、フィンランドの授業日数は190日程度と、OECDの中でも少ない。授業数も日本の半分くらいだとか。
そんな事なら、もっと休みが欲しかったよ、まったく、もう。
結局、平均値で見れば、数多く、教室に縛り付けられても、頭に入ってくる量には大差ない。もちろん、勉強の出来る子にとってはイイのかも知れないけど。
授業だけでなく、部活や委員会活動なんかをやっていれば、子供の人生の大半が学校(関連)生活になってしまう。
“学校”に偏り過ぎ。 そりゃ、良くない。
ひょっとすると、現場の先生たちも、そう思ってるかも。
でも、日本の学校教育は、法律に定められ、教育行政の中で決まっている。ので、教職員や保護者が声を上げたくらいで、どうこうなるものでもない。
政治の力が必要だ。
その上、長く「前例踏襲・十割主義」の行政を続けてきた結果、いつの間にか「長いものに巻かれることが正義」と誤認する輩が増えてしまったから厄介だ。残念ながら。
人生を教える教育
本書を読んでいて、著者の新作「フィンランドの高校生が学んでいる人生を変える教養」(発行所:㈱青春出版社)をチラっと読んでみて、フィンランドは子供の主張を大事にする国なんだな、と思った。
というか、自分が学校に通っていた頃、
「子供には様々な権利がある」
なんて考えたこともなかった。
生徒手帳には、強制的に縛り付ける校則だけがハッキリ記されていて、「子供の権利」なんて書いてなかった。
親になっても、子供の権利なんて考える余裕はなく、分け与えるだけ。
本書によると、フィンランドでは、小中学校には、6つのカテゴリーがあって、それぞれでいくつかの授業を選択できる。その中に「個人、会社、社会」というカテゴリーがあって、そこで「宗教」と「人生観の知識」等々という選択ができるようになっている。
この「人生観の知識」は、小学校から高校まである。小学生に教える「人生観」って何だろうと思ってしまうが、本書を読んでいくと、なるほどと頷いてしまう。
「友情」「異質なことと寛容」「良い人生」「正義と公平」等々と学ぶ内容をチラ見すると、子供の頃にあった「道徳」という木で鼻を括ったような授業より、「人生観の知識」の方が、人の温もりを感じる。
「考えること」を教える教育
現役時代、研修講師を担うこともよくあって、その際に、知識や技術を「分かり易く伝えること」だけでなく、その物事を「受講者自身に考えさせ、理解を深めること」を大事にした。
人は、見聞きしたことだけで行動するんじゃない。
「腹落ちしたこと」に基づいて行動する。
そして、腹落ちするには、自分の頭で考えることが大事。
子供たちだって、学校で知識や技術を学ぶだけじゃなく、自分の頭で考える、考え直すことが、イイ。
そういう意味では、本書に示されている、フィンランドの「考える力を育てる教育」は素晴らしいと思った。
(敬称略)