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「ビル・ゲイツの生声」を読んで

 久しぶりに行った本屋さんで「生声」シリーズを見つけ、これだ!っと思って買ってしまった。ジェフ・ベゾス、スティーヴ・ジョブス、イーロン・マスクなど、著名人でシリーズ化されてる。その中で、ベストセラー作家のリサ・ロガク編著「ビル・ゲイツの生声」(発行所:㈱文響社)を買ってみた。
 著者の自伝は、もちろん面白い。けど、このような「キリトリ」本も、違った面白さがある。読みながら、調べ、考え、また調べて考える。なかなか、前に進まないけど、こうして補強しながら読むのが、自分だけの読書になってイイ。

「生声」シリーズ

 「生声」シリーズは、著名人の発言をまとめた「発言集」。いろんな切り口で、著名人の発言を整理しているので、その著名人がどんなことを言ったのか、理解し易くなっている。
 「ビル・ゲイツの生声」は、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツの語った言葉を整理し、わかり易く整えた発言集だ。いろんな話が書いてあって、面白い。 発言だけでなく、各章の冒頭に「ビル・ゲイツの歩み」として、簡単な年譜が付いている。
 だけど、読んでみて気付いた。本人の発言録ではあるけど、断片ばかり並んでいるので、掴みどころがないというのか、頭に入って来ない。自分がボケてるだけかも知れないけど。発言の前後の文脈がないので、文意を読み取り難いのだと思う(私の場合は)。
 例えば、「エコノミークラスの方がお得です。ファーストクラスと同じ速さで、目的地に到達できる・・・・」という発言が記載されている。これだけ見ると、『世界一のお金持ちになった人が、なんてケチなことを言うんだ。倹約家なのかな』と思ってしまう。
 なんか違うかなぁ、と思ってWebで調べてみた。すると、来日したビル・ゲイツが、マイクロソフトの日本法人のアテンドで、どこかに出張する際の航空券がファーストクラスだったので、怒ったことがあるみたいだ。日本法人のお金の使い方に注意喚起する意味の発言らしい。けれど、この時は、きちんと事情を説明したら、怒ったことを謝罪して、ファーストクラスに乗ったらしい・・・。著書の話とだいぶ違うトーン。
 マイクロソフトは株式を公開しており、利益を生み出す会社。だから、ビル・ゲイツも利益を得るために合理的に行動しているだけなんじゃないか。無駄使いは論外だが、節約や倹約とも違う。収益を得るために最適効率性を全うしているように思えた。(確認したわけではないけど)
 お金で時間を買いたいほど、超多忙なビル・ゲイツ。移動時間が短縮されるなら、取引先までヘリコプターで移動しているし、直行便がない空港間の移動は、飛行機をチャーターするかプライベート・ジェットを飛ばしているらしい。
 もっともビル・ゲイツは、マイクロソフトの社内規定を順守していて、旅費規定を超える費用は、全て自分で払っている。だから、プライベート・ジェットで移動したら、自分で払っているらしい(社内規定にプライベート・ジェットの利用なんて書いてないんだろうな)。
 世の中には、「名言集」や「語録」類はたくさんある。
 ほんとに、その有名人が言った言葉たちなんだろうけど、「キリトリ」文章だけでは、わからないことも多々ある。文脈がわからないと、誤解することも増えるのかも知れない。そういう意味では、発言集や名言集等は、慎重に読まないといけないな。
 

キリトリは難しい

 少し前に、フジTVのワイドナショーで、芸人の松本人志が、「キリトリ記事禁止」の直筆ボード掲げていた。何回か見かけたので、結構、本気だったのだろうか。
 確かに、このところ「キリトリ」の度が過ぎている、気がする。
 「キリトリ」が困りものになるのは、「キリトリ」そのものが拡散される時。一部の「切り取られた」言葉や映像だけが独り歩きし、伝言ゲームのようになり、当初の意図と異なる方向に進むのは、良くあることで、厄介だ。
 有名人ならば、あれこれ言われるのは“有名税”。なんて意見も聞くけど、少なくとも間違った情報が響き渡るのは、どうなんだろうか。

 「キリトリ」するなら、前後の文脈を知り、発言者、著者の意図を理解した上で、「発言者や著者の意図を切り抜く」べきだ。出来れば、出所の異なる情報源で発言者や著者の意図を確認しておいた方がいい。
 自分の発言や意見を補強するために、発言者や著者の発言や文書の一部を「キリトリ」するなら、少なくとも発言者や著者を伏せて、「〇〇という発言(意見)もあるようだ」としておけばいい。
 誰かが「キリトリ」したものを使うなら、「キリトリ」前の発言や文書全体をきちんと理解してから。そして、「キリトリ」した発言や文書の出典や出所を明記しておくことも大切だ。
 ともかく、「キリトリ」は扱いが難しい。ということが良く分かった。
 
                             (敬称略)

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