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「中国を見破る」を読んで

 楊海英著「中国を見破る」(発行所:㈱PHP研究所)を読んでみた。

 中国はお隣の国で、多くの人々が行き来している。私自身は、昔、イギリス領時代の香港に行った事があるくらいで、中国に行った事はない。最近の日中関係は、経済的なつながりも大きいらしいが、なんだかんだと対立することもあるよう。 結局、いつも断片的情報を得る程度での知識しかない。
 そんなこともあって、本書を手にとった。

 本書のタイトルは「中国を見破る」だけど、まぁ、たった一冊の本を読んだだけで、中国を知った風になるのは難しい。というか無理。
中国は、大きくて、広くて、深い。
本書を読んで、知らなかった中国をいろいろ見せてもらった。学ぶ事も多かった。 北欧の小国フィンランドですら、学びきれないけど、お隣さんの中国のことにも関心を持ちたいと思った。

教育こそが、国づくりのはじまり

 子供の頃に見たTVドラマやマンガは、大人になっても結構覚えている。「ご老公」と言えば「水戸光圀」で、「老公」の意味も知らずに偉い人と覚えている。
仮面ライダーやタイガーマスク、明日のジョーを見て、「正義は必ず勝つ」とか「努力は報われる」と学んでしまう。 もちろん、世代によって、見るものは違うけど。
無垢な子供の頃、TVの影響や学校で学んだことは、新鮮で印象深く。心の奥底に留まっていて、真実だと思ってしまう。ある種の情報統制のようで、考えてみれば恐ろしい。 

 私が子供の頃は、「中国三千年の歴史」なんて言われてた。それが正しいのかどうかも分からず、中国は三千年と鵜呑みにしてた。

 でも、私が現役を引退した頃には、「中国四千年の歴史」が当たり前になっていった。 何かヘンとは思ったけど、世界の四大文明の一つに中国地域があるから、いろんな発掘・発見があって、四千年の歴史があることが証明されたんだろうな、とこれも無条件に受け入れてた。

 今は「中国五千年」だとか。 また、1,000年増えてる。 
「中国三千年の歴史」と学んできた私たちなら、「五千年」に気付けるけど、幼少期から「中国五千年の歴史」と学んできた人には、何の不思議もないだろう。 何万人も、何世代にも渡って「五千年」と学び続ければ、それが社会常識になって疑う余地もなくなっていく。 

 もちろん、大人になるに連れて学びを深め、事実を多面的に見て、自分自身の考えをまとめ、判断するようになれればイイ。 けど、ウッカリすると、「葵の御紋を振りかざせば、皆がひれ伏す」的な考えになりがち。気を付けよう。

人間という生き物の集まり

 本書を読んで、改めて考えたのが、「国家って何だろう」ってこと。

 平成16年に衆議院憲法調査会事務局がまとめた資料によると、「国家は、国際法における主要な法主体であり、国際法上、国家であるためには、①永続的住民、②一定の領土、③政府、④他国との関係を取り結ぶ能力(外交能力)の四つの要素が必要である」。

 地続きの国と違って、日本は島国。海を境にするので、領土は分かり易い。Wikipediaによると、日本には、大和民族が多数派で、他に琉球民族、アイヌ民族の3つ民族が同居して仲良く暮らしてる。と思う。
第二次大戦後、憲法も改まり国家体制も相応にまとまってるし、何より高い経済力で世界に冠たる国として、多くの国々に認められている。

 以前読んだ本には、「インドとチベットの間にあるヒマラヤ山脈の峻険さが、両国の国境を曖昧にしているそうで、その距離3,500km」とあったけど、地続きの国々の領土の境目は難しい。
 山や林、川や湖などは、微細だけど年々変化する。大昔に隣地との境界線としてあった川が、長い年月で蛇行すれば、領土の境目も変わってしまうのか、はたまた・・・。今なら人工衛星で領土を特定できるのかも知れないけど、それを関係国が認め合わねばならず、やっぱり、難しい。

 狭い日本の中では、「地籍」という所有地の戸籍のようなものが法律で定められている。それでも、時々、隣地との境界線で争い事があったりする。

 日本は、狭い島国なので、「長いモノに巻かれろ」的な共存・和平の生き方が定着し易い。 けど、地続きの国々では、より住み易い地域へ移り住むのが平易で、そうなると「同じ言語や文化や風習を持つ者同士」というのは、民族単位ではなく、家族とかのより小さな単位になりがち。他言語や文化風習の異なる者同士の諍いも起こり易くなりそうだ。

 本書によると、中国は、いろんな民族が覇権を争ってきた歴史があって、今日につながっている。今は、漢族が中心。だから、他民族との争いが絶えないのか・・・いや、共存の道を探しているのか。わからん。

 文化風習や言語や文化風習、身体的特徴の違いなんて、昆虫とゾウほどの違いでもない。 
所詮、狭い地球の中のこと。「人間」という生き物の集まりが国家、でも良いような気もするが。

 沖縄の与那国島は、沖縄本島から500km以上離れているけど、台湾とは111km。ごくごく稀だけど、天気が良ければ与那国島から台湾を望むこともできるそうだ。飛行機なら10分もかからない距離。
 14,000余の島で成り立つ国家日本には、離島はいくらでもある。
 「地籍」のような領土を定義する国際法があって、人工衛星等で科学的に特定出来て、関係各国間が合意出来れば、領土争いも無くなるのだろう。けど、そんな世の中になるには、まだまだ時間がかかりそうだ。
それまでは、みんな、期待して待っていて欲しいな。争わずに。

                            (敬称略)

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