「人口と世界」を読んで
中国の繁栄とその後を考えると、国力は「人口」がベースと気付く。
調べてみると、CIA分析官だったレイ・クライン氏は、
国力=(人口・領土+経済力+軍事力)×(戦略目的+国家意思)
という方程式を考えていた。
クライン氏の発表は1975年。丁度、日本の人口減少の兆しが見え始めた頃で、日本の未来を思い描いてたのだろうか。
そんなこんなで本屋に行った時、日本経済新聞社編「人口と世界」(発行所:株式会社日経BP 日本経済新聞出版)に出会って、即買い。
予想どおり「人口と世界」は面白くて、あっという間に読み終えた。
現役時代、馴染のない産業等を調べる時に「日本経済新聞社編」の本に出合う事が多かった。この手の「日経新聞社編」には、最新の情報と、斯界の有識者が一同に集められているので、最初の取っ掛かりとして、とっても役に立った。
本書「人口と世界」は、世界中で起きている人口問題を、斯界有識者へのインタビュー結果と、それに関連する調査結果等々を基礎に、取材班の考察を添える形で解き明かしている。「なるほど!」と「やっぱり!」の連続。
人口減少問題の厄介なところは、「時差」があるところ。
例えば特殊合計出生率が2を切ったからと言って即座に経済力に影響が出るわけではない。けど、20年度には必ず影響するし、碌な対策を講じてなければ、人口問題は津波のように押し寄せて破壊的な影響を及ぼす。
日本の場合、「時差」だけでなく、高度経済成長の頃に稼いだ資産がふんだんにあるので、問題の本質がわかり難くなり、対策も緩慢になっている。
本書によると、日本に限らず、ヨーロッパでもアメリカでも、中国でも、人口減少問題が、ジワジワと影響を見せ始めているらしい。
それだけでなく、インドやインドネシア、ナイジェリア等々では、人口の拡大を基礎に急成長し、経済大国となって、まるで主役交代の様相で、これはこれで難しい問題を引き起こし始めている。
就職や転職、あるいは、家を買うとか、家族を持つとか、人生の大きな転機を迎えようとしている人たちは、自分が住む国や地域の人口の未来を考えることをお薦めしたい。
人口減少時代を生きていく
国際連合広報センターのHPでは、「世界の人口は、2030年までに85億人に達し、2050年には97億人に増加」となっている。そして、「2010年から2050年にかけて。いくつかの国は人口減少を経験すると思われるが、他の国では人口の増加が続く」と、人口の継続的な増加が予測されている。
これに対し、2020年に、ワシントン大学の保健指標評価研究所(Institute of Health Metrics and Evaluation)が、医学専門誌に発表した世界の人口推計が衝撃的だった。この発表によると、「世界の人口は2064年に97億人でピークを迎え、その後減少し続け2100年には87億人になる」というものだ。
人口が増える国がある中でも、深刻な人口減少の方が多いようだ。
日本だって、津波のように押し寄せた人口減少の影響はこれから本格化していく。本書にも示されているパーソル総合研究所と中央大学による「労働市場の未来推計」では、「2030年の日本は650万人弱の労働力不足に陥る」らしい。労働人口の一割弱の働き手が足りないというのは、これは緊急事態と言ってもいいんじゃないか。
世界中で労働力不足への対策が練られているようだけど、今のところ、直接的な対策は3つしかない。
◆ AIやロボットを使ったDXの推進
◆ 外国人労働力の受け入れ(移民等の推進)
◆ リスキリングによる既往労働力の変革
外国人労働力を受け入れるといっても、日本には「日本語」の壁がある。英語圏の国々のようにはいかない。そもそも少数民族の日本が積極的に移民を受け入れるとも思えない。
そうなると、DXとリスキリングだけ。でも、これほど政治が揺らいでいると、こちらも何だか心許ない。
DXやリスキリングの支援施策や少子化対策の事業支援に、50兆円位投資すれば、新しい局面を迎えられそうな気もするが・・・。
既得権を持つ年寄たちは、四の五の言わずにお金集めだけ頑張って、具体策は若い人達にバトンタッチすればいい。若い人達の未来は若い人達がつくるべきだろう。戦後の日本を立て直した時のように。
たぶん、そうして課題解決すれば、日本だけでなく、世界を救う。そうなれば、50兆円の投資しなんて簡単に回収できるはず。
本書を読んで、そんな夢を描いてみた。
(敬称略)