「第三の大国 インドの思考」を読んで考えたこと
笠井亮平著「第三の大国 インドの思考」(発行所:文藝春秋)を、読んでみた。
少し前に伊藤融著「インドの正体」を読んで、面白かった記憶があって、本書を書店で見つけた。
その後、フィンランドに出会ってしまい、インドは二の次になってしまった。 けど、フィンランドの行政や政策について、調べようにも調べられず行き詰まって、インドに戻ってきた感じ。
やっぱり、英語くらい、しっかり勉強しておけばよかった。
地政学的な難しさ
本書を読み始めて、改めて地図を見た。中国やネパール、パキスタイン等々と隣接し、広くインド洋にも面しており、大陸国家であり海洋国家でもある国。 中国やパキスタンとは、何度も紛争(戦争)を起こしてきた。
インドは、1947年にイギリスから独立。 中国の独立も、その二年後で、同じような時期に、同じような悩みをから解放されたんだろうか。
隣人同士、長い束縛の日々から脱出したけど、宗教も国家体制も全く違う2つの大国。 仲良しこよしではなく、是々非々でのお付き合い。 しかも、インドと中国の間にあるヒマラヤ山脈の峻険さが、両国の国境を曖昧にしているらしく、その距離3,500km。
フィンランドを調べた時、ロシアと1,600kmもの国境を接してる、なんて驚いてたけど、その2倍以上で、しかも国境がはっきりしないなんて・・・
中国と対峙するものの、イギリスと仲良しのアメリカとも距離を置き、インドはロシアから武器を輸入。一方で、太平洋の仲間として日本、オーストラリア、アメリカと協調。もちろん、中国とも経済面での交流はある。
ロシアのウクライナ侵攻時、世界最大の民主主義国家を標榜しているにも関わらず、ロシア側に立っていて、ちょっと驚いた。けど、本書を読んで、その複雑性を理解できた。
インドの複雑性を考えると、日本の国会協議が情けなくなる。来年度予算審議を止めてまでも、領収書がどうのこうのと騒いでいる場合か、と。日本だって、ロシアや中国等々との付き合い方を、もっと議論して、その上で防衛費がどうのこうのとか、半導体産業の育成や関連する情報保護や物流の合理化等による産業振興とか、増え続ける暇な高齢者を少子化対策に活用出来ないか、とか、大事な話がもっとあるんじゃないか、と思うのだが・・・
民主主義インドへの期待
最新の人口統計調査で、世界一になったことがわかったインド。
人口では中国を抜いたけど、経済規模では、まだまだ伸び代がある。でも、おそらくは、あと10年もしないうちに、世界一の経済大国になる国。
その時、インドは、世界をどのようにリードしていくのだろうか。
中国も、人口増加を背景に急成長し、アメリカと伍して二大大国として世界に君臨している。本書でも、「一体一路」戦略等々が紹介されている。経済大国として、あり余るお金を世界中に投資し、そして、新たな覇権を目論んでいる。その様は、イギリスやアメリカが辿ってきた民主主義型のかたちとは違うけど、素人目には、同じような構図。
いずこも自分たちの繁栄だけを目指し、今に至っているけど、世界最大の民主主義国家インドも、同じなんだろうか。
それとも、弱者にも目の行き届いた覇権国家を目指すのだろうか。 いや、インドが世界に君臨する時、世界中に目を行き届かせ、弱者を助ける勇者になって欲しい。と強く願う。
インドが台頭する頃、インドネシアやブラジルなんかも人口が爆増し、諸外国からの積極投資の力を得て経済大国として台頭してくるに違いない。新台頭国同士の小競り合いもあるだろうし、老成した欧州やアメリカも加わって、新たな覇権争いも始まるのかも知れない。新しい地球連合のような枠組みが出来るのかも知れない。
その時、日本は、どうなるのだろうか。
莫大な資産を持ち、水資源が豊富で、どこの国から見ても魅力的な国、それが日本。コロナ禍での対応なんかにもみられるように、温厚で従順な人柄は、世界中から称賛されるほど。けど、第二次大戦で見せた狂気を、世界は忘れていないし、相応に国防にも力を入れている。おそらくは、巨大地震による内部崩壊が最大のリスク。どうなるんだろうか。インドは助けてくれるんだろうか。
本書を読んでいたら、これからの10年ほどの未来を、あれこれ夢想して、期待と不安でないまぜになってしまった。 あれこれと考えさせられる本だ。
(敬称略)