【読書】上橋菜穂子/風と行く者
本屋さんに久しぶりに行って何気なく歩いていたら平積みしていたので思わず手に取りました。あれ、バルサの新作やないか、これは読まないと!ってあまり後先考えず買って帰りました。
上橋先生の作品の面白さが詰まっています。
読み始めて何となくあれ〜、知ってるな〜、この話、と思い始めたけど深いことは考えず、素直に面白さに身を任せて、一気に読んじゃいました。やっぱり上橋さんの本は面白い!豊かな日本語表現で、空想世界がまことしやかに綴られる様はまるで本当の国、本当の(?)時代劇を見ているかのような気持ちにさせてくれます。
洋物好き、和物はあまり手を出さない私もはまるこの面白さ
私はわかりやすく言うと外国かぶれで映画も音楽も外国物が好き。邦画は見ません。テレビドラマも普通にやっているものはもう何十年も見ていないかも。音楽は若い頃から洋楽一辺倒。邦楽は中学生で卒業してしまいました。小説もスティーブンキングを筆頭に洋物ばかりを読んでいます。一部例外は上橋先生、烏シリーズの阿部千智さんです。
なぜ他の日本の小説を読まないのか、音楽やドラマを見たり聞いたりしないのか、と言うと、音楽やドラマは歌詞や台詞、世界観に入り込めないのです。嘘くさくて。海外ドラマでも出来の悪いものはとうぜんあるし、くさい芝居や陳腐な音楽は当然ありますが、R&B、R&R、POPSの先達が積み上げたものが大きくてどうしてもそちらにしか意識が行きません。
バルサの話、それと上橋先生の作品とは、2007年くらいでしょうか、NHKのアニメ版精霊の守り人をみて、面白かったと思った時に書店でもうプッシュされていて、それを読んだ時からのお付き合いです。その後バルサ・守り人のシリーズ、獣の奏者、鹿の王と全部読んでい流のは言うまでもありません。最新作「香君」も出番を待っているところでとても楽しみです。
ではなぜこのお二人は例外なのかと言うと、この二人の作品はファンタジーでありながら先ほども書いたように日本語の豊かな表現が詰まっていることです(私のこの陳腐な日本語なんて及びません、あー、恥ずかしい!)それからストーリー、作品世界、そう言うものがきちんと積み上げられていて、まるで丁寧な刺繍や職人仕事のような、そんな気がするのです。
作品に話を戻しましょう
本作は超大作以外では久しぶりの長編になります。お話の構成としてはバルサの過去と現在が交錯して綴られる、そしてそれは必ずと言って良いほど出てくるジグロと過ごした日々の話で、闇の守り人の話を思い出させてくれます。面白いなぁ、と思うのは現在の視点では死んでいるジグロがあたかも生きていて主役の如く活躍している様を描いてて、それがめっちゃかっこいいんです。
15、16の頃、ジグロと共に護衛にあたり旅をしたサダン・タラム〈風の楽人〉の面々と再び出会い、再び同じように彼らの旅の護衛につくバルサ。そして過去と同じようにまたも襲われるサダン・タラムたち。そこを丁寧に掘り下げつつ、過去と現在を交錯させながら話を進めていくあたり、もう上橋さんうますぎます。
メインテーマは別れ?
本作のメインテーマと思われるのが、(後書きにもありましたが)例えばご両親や大切な人との突然の別れには引き継ぎきれなかったであろうことがたくさんあり、辛い思いもあるでしょうが、それは何かの形でうまく伝わっていたり、気づかされることもあると言うところの不思議さ、大切を物語の中に染み込ませているんだなぁ、と感じました。
ラッルとか空想ごはんも相変わらず美味しそうです
お約束のおいしい食事シーンも出てきます。カンバルの人はあっさりした方が好み、だとかロタの食べ方でもここではちょっと違う、とかは関東、関西だけでなく、県や町で特色ある食事をしている我々って外から見るとこうなんだな、と思わされます。人間観察がきちんとできていないとこう言う描写はなかなか出てこないですよね。
実は前に読んでました
さて、散々読んで読み終えてやっぱり読んだ気がするなぁ、と思って本棚を探したら、なんとありました。軽装版というハードカバーよりもちょっと小さいやつでした。通りで話がスイスイ頭に入ってくるわけです(^o^)
映画もそうですが本も読み返すとこれがなかなか面白い!1度目には気づかなかったことを見つけることがあったり、頭に話の筋が入っている分中の人への感情移入や俯瞰的な見方とか色々な見方で読むことができるようになります。
昨今はすぐに新作を求め、次から次へと消費することばかりを考えがちですが、繰り返し読む、読んでも楽しい、それに耐えうる本ってやっぱり名作なんだなぁ、と思わされました。バルサのお話、また一から全部読み直したくなりました。いつかトライしたいですね。
おすすめ度:★★★★★(バルサを知らない人は全シリーズを一から読めるのだから幸せですし、読んだことがある人にはもっとおすすめできます。)
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