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これからのパラグライダーとの関わり方を考える ~第43話 パラグライダーで墜落 そして入院~

パラグライダーの墜落をきっかけとして、Noteにパラグライダーの事、入院のこと、治療のことを綴ってきて、退院までの日記は終わりました。
気がついたら40話を越えました笑

さて、今後は今回の事故をきっかけに思ったことや気づいたこと、そして学んだ事などを総集編としてテーマ別にまとめたことを綴って行こうと思います。

その第一回目となる今回のテーマは
「事故を振り返りつつ、パラグライダーのことと、これからの自分のパラグライダーとの関わり方」
を話していきたいと思います。


~また空を飛びたいと思っている~

自分は不運にも死にかけるような大事故を経験してしまいました。生きていたのが本当に不思議なくらいの事故でした。。。。そんな体験をしても、、、それでも、、、また飛びたいと思っています。

その話を周りの人に話すと、反応は真っ二つにわかれます。「まえしーならそう言うと思ったよ。」という反応と「信じられない、理解できない。」という反応です。正直、後者の反応の方が多いです。

こんなことがあってもまた飛びたいと思ってしまうこの気持ち。
とてもわかりやすい例え話を見つけたんです。それは、、、。

わんちゃんがいたとします。
幸運か不幸かはわかりませんが、そのわんちゃんは外を散歩する楽しさ知ってしまったのです。ある日、大好きな散歩中、不幸にも事故にあってしまいました。大怪我をする酷い目にあってしまい、深く傷ついてしまいました。それでも、治療をして元気になった時には、そう、また歩くことができるようになった時。きっとわんちゃんはまた「外を散歩したい」と思うはずです。わんちゃんにとって外の散歩はそれくらい楽しくて、なくてはならないものだと思うんです。

自分にとってのパラグライダーもこの気持ちと同じなんです。そこには根源的な悦びがあるんです。その悦びを知ってしまった以上、それがない人生はもう考えられないのです。だから、また飛びたいと思っています。

~これまでのパラグライダーとの関わり方~

これからパラグライダーとどう関わっていくかという話に入る前に、まずは今までどう関わっていたかの話をしたいと思います。

事故をするまでは「日本代表」を目標にして頑張ってきました。(ちなみにパラグライダーは50代のおっちゃんが世界選手権で優勝したりする、選手生命の長い、経験がものをいうスポーツです。) 

ある時、世界大会の様子の映像をSNSで見たんです。上昇気流を捕まえて何十機というパラグライダーが一緒になって旋回して飛んでいる、パイロット目線の映像です。それを見て思ったんです。
「私も世界のトップパイロットと一緒に大空を飛んでみたい。」
それからはワールドカップや世界選手権に出ることを目標にして頑張ってきました。
参考動画↓

事故のせいで、8月以降の大会に出場できませんでしたが、2023年のJ1リーグランキングは11位でした。また、事故をした2ヶ月後に開催された韓国でのワールドカップアジアンツアーにもエントリーをしていました。「もしあの時、事故にあっていなければ、どうなっていたんだろう?」ということはどうしても考えてしまいます。おそらく目標にかなり近づいた1年になっていたのではないかと思います。

事故の後、また飛びたいと思っていますし、ワールドカップに出たいという夢もなくなったわけではありません。
でも自分は事故をしてしまった。死にかけた。そういったことを考えると、リスクの高い、競技用グライダーにまた乗ることには「それでいいのか?私はあのリスクをもう一度許容できるのか?」という思いが出てきています。

~パラグライダーのリスクについて~

誤解を恐れずにいうと、パラグライダーは本質的に危ない部分というのがどうしてもあります。そりゃそうですよね。人間は空を飛べないのに、飛んでいるわけですから。どう対処しても墜落というリスクは飛ぶ以上、必ず伴います。そのリスクについて、ちょっとマニアックな話になってしまいますが、グライダーのクラスを交えて少し専門的な話をしていきます。

パラグライダーは安全性能で5つのクラスに別れています。A(初心者用)、B(中級者用)、C(上級者用)、D(エキスパート用)、CCC(競技用)と言った感じです。簡単に言えばAクラスは性能が低い分、コントロールが簡単です。CCCクラスは車で言うとF1みたいなものです。超高性能な分、コントロールが非常に難しくなってきます。

でも実は普通に滑空して飛んでいる分には、CクラスあたりからCCCクラスまでコントロールの難しさには決定的な差はあまりないと思っています。それぐらい、今のグライダーは技術革新によってかなり飛びやすくなっているんです。決定的な差がでるのは翼が潰れた時です。乱気流などの影響で翼が潰れる直前、潰れる瞬間、潰れた後、全てにおいてグライダーのクラスが上がれば上がるほど、シビアな制御が求められます。

結論を言うと、私はCCCのグライダーが潰れたときに制御する技量を持っていないのに、CCCのグライダーに乗るという選択をしまっていました。実はこれ、世界中でおきている問題でなんです。潰れる事はめったにないし、潰れたとしてもCCCでも多くの場合はすぐに翼は元に戻ります。だからみんな「乗れる」と思ってしまうのです。自分もその一人でした。

その結果、大会中に私は墜落してしまいました。おそらく乱気流による影響ですが、翼全体の70%が潰れる大潰れをくらいました。ただ自分が他の人と決定的に違っていたのは地上約30mと、非常に低い高度で大潰れをくらったことです。対地高度が高ければ高いほど、リカバリーするチャンスがありますし、それがだめでも緊急パラシュートを開く余裕もあります。自分の場合はその高度の低さ故に、そのチャンスがほとんどなかった。。。。

墜落時のビデオを見る限りでは制御に色々と反省点があるのは事実です。でもそれが出来ていたとしてもおそらく墜落していたと思っています。あまりにも高度が低すぎました。なのでCCCグライダーを制御する技量があったら結果が違っていたか?と聞かれたら、おそらく答えは「NO」だと思っています。

パラグライダーで飛ぶ以上、そういうリスクはごくわずかですが、やはりあるものなんだと思います。ちなみに、これはパラグライダーの話だけではありません。外を歩いていれば車にひかれるリスクだってわずかですがあります。みんな意識していないだけで、生きている以上、常にリスクはあるんです。自分は運悪くそのリスクに当たってしまったんだと思います。


~これからのパラグライダーとの関わり方~

1~2年後に予定している腰の追加手術を終えて、また飛べる体戻ったら、まずはBクラスの安全な機体でまた飛びたいと思っています。そして飛ぶ悦びを取り戻したいです。そこからパラグライダーとどう関わっていくかは安全なグライダーで飛びながら考えて行こうと思っています。けど、どうしてもリスクのあるCCCグライダーに乗ることは自分の中で許容できない気がしています。たとえCCCグライダーを本当の意味で乗りこなせるようになるためのSIVと言われる特殊訓練を受けて、その技術を手に入れたとしても、、、やっぱりCCCグライダーはリスクがあります。現時点ではそこは許容できない気がしています。CCCグライダーに乗らないとなると、日本代表になる、ワールドカップや世界選手権に出場するという夢は叶えられなくなります。でもそれでもいいかなと今は思っています。そう思うようになったのはある気づきからでした。

「なんでパラグライダーで飛ぶの?何を求めて飛び続けているの?」と自問自答したときに出てきた答えは2つでした。
・空を飛ぶということ自体がとても楽しい
・もっとうまく飛べるようになりたい。自分の力量が上がり、もっと高く、もっと長く、そしてもっと遠くに飛べるようになって行きたい。新たな世界がみえていくことがとても楽しい。

本質的に自分が求めているのはこの2つなんだなと自問自答して見えてきました。「もっとうまくなりたい」という思いの結果、ワールドカップや世界選手権に出たいと思うようになっていたんだと考えています。

ワールドカップや世界選手権にでなくても、いくらでもうまくなって自分の世界を広げいく方法はあるはずです。多分、、、自分はまた事故にあったら、次は確実に死ぬか、半身不随とかになる気がしています。CCCグライダーに乗るリスクを考えると、そのリスクをとって死んでしまったり、飛べない体になってしまうことのほうが悲しいな、、、と思っています。

これからの人生、可能な限り、長く飛んでいたい。なるべく長く空を楽しみたい。競技などを含め、パラグライダーとどう関わっていくか、具体的なことは、また飛べるようになってからでいいかな。飛びながらゆっくり考えていけばいいかな。まずはまた空を楽しみたい。そのために頑張っていこう。

今はそう思うようになってきました。

~そんな中、とんでもないニュースが!~

まだ飛べもしないくせにそんな風にこれからどう飛ぶかに妄想を広げているわけですが、そんな中ですごいニュースが舞い込んできました。

「FAI(国際航空連盟)がCクラスのパラグライダーでのワールドカップ開催を検討」

自分にとってはまさに希望の光となるようなニュースです。Cクラスの2ライナーの機体なら、翼が潰れた時の制御の訓練(SIV訓練)をちゃんと受けて、技術がつけば乗ってもいいかなと思っていたんです。まだ検討している段階らしいので、どうなるかはわかりません。でもCクラスでワールドカップが開催されるなら、挑戦してもいいんじゃないかと思っています。

今後どういう展開になるかわかりませんが、またワールドカップを目指せる状況になるかもしれません。なので正直に言うと、今からめちゃめちゃワクワクしています。

このニュースで自分のパラグライダーとの関わり方にも新たな光がみえてきたんです。

新たな目標へ向かっていくために

さて、どのような展開になろうとも、自分のやるべき事は明確です。

・リハビリを頑張って体を戻す。そして飛べる体を取り戻す。
・またパラグライダーを楽しめるだけの経済力をつける。そのためにも、戻ってきた愛知でしっかり仕事を作っていき、頑張っていく。

言葉にしたらシンプルですが、具体的にやることは山のようにあります。進んでいくしかりません。より進んでいくための心構えとして、入院中に学んだ2つの大切な教訓があります。(この話はまた別途Noteに綴ろうと思っています)

「その瞬間、瞬間で、できることをやっていくしかない。そうやって積み上げていくしかない。」

「進みたいと思っていても、どうしても進めない時もある。人間だから、そういう時もある。そんなときは進むのではなく、ほんのちょっと前にズレるだけでもいい。その意識とズレる積み重ねがその先で大きな一歩へとつながっていく。」

この2つの言葉を胸に、「墜落後の人生という新たな旅」を前へ進む、いや、前へズレていこうと思います。


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前島聡夫/空飛ぶ写真家
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