環境債とは?
環境債(グリーンボンド)とは調達した資金を環境対策事業(グリーンプロジェクト)に使うことを条件に、企業または地方自治体等が発行できる債権です。
世界では、環境債の利回りが普通債よりも低くなる、グリーニアム現象が発生しています。しかし、世界における環境債の発行額は増加しています。ここではグリーニアムとはどのような現象なのか、グリーニアムが起きているにもかかわらず環境債への投資が増加している理由についてご紹介します。
利回りが普通債権より低いにもかかわらず、企業や地方自治体等が発行した環境債を、投資家が購入するグリーニアム現象があります。現在、環境債の発行が活発な欧州を中心にこのグリーニアム現象が拡大しています。
普通債より利回りが低いにもかかわらず投資家が環境債を購入する理由は、以下のようなメリットがあるためです。
投資家としてのイメージが向上する。
投資を通じて環境問題に貢献できる。
分散投資によるリスク管理ができる。
2021年10月にEUが世界最大規模となる15年物の環境債を発行しました。ここでは世界各国の環境債の発行事例についてご紹介します。
2021年10月12日にEUの欧州委員会が、環境債として120億ユーロを調達したことを発表しました。日本円に換算すると約1兆5700億円になる環境債は、過去最大の発行額になります。EUは2026年末までに最大2500億ユーロの環境債を発行する計画があることを示しており、今後世界全体の債券市場に大きな影響を与える可能性があります。
中国は環境債の発行額がアメリカに次ぐ世界第2位です。2021年2月に調達資金の使途をカーボンニュートラルに特化し、64億元、日本円に換算すると約1,000億円の環境債を発行しています。中国にとってカーボンニュートラルに限定した環境債は初の試みでしたが、国をあげて脱炭素に取り組む姿勢を見せているため、今後の活用の広がりに注目が集まっています。
イギリスは2021年9月に初となる環境債を発行しました。環境債で集めた資金の使途を政府主導の気候変動対策に限定し、償還期限を2033年7月31日で、表面利率を0.875%に設定しています。環境債の発行額は100億ポンド(約1兆4,900億円)でしたが、実に1,014億ポンドもの応募が投資家から集まりました。この額は世界最大であることから、投資家の間でいかに環境債への関心が高まっているかがうかがえます。
EUや中国による大胆な新しい環境債の発行は債権市場に大きな影響を与えます。一方で、環境債が本当に環境事業へ使用されているのか、その環境事業は実際に環境問題を解決する術となっているのか、投資家は発行体への監視の目を光らせておく必要があります。
今、環境への問題意識から、石油自動車からEVへの転換が行われています。ただEVが本当に環境にやさしいのかは議論の余地があります。走行時のCO2排出量は確かに少ないものの、製造時の排出量は多いです。また、EVは製造時に大量の鉱物資源を必要とするが、この生産・精錬は水質汚染や土壌汚染などの環境問題を抱えています。EVは必ずしも石油自動車よりも環境にやさしいとは言えないのです。
これからも環境対策事業は増えてきます。それらの事業は果たして環境問題の解決につながっているのか、投資家たちは確認する機会を設けておくことで、真の持続可能な世界を作ることができるでしょう。
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