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【コラム】腹黒い11人の女Spin-outコラム

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わたしの二作目の長編小説『腹黒い11人の女』のスピンアウトコラムです。以前、連載していたWebマガジンがなくなったので、noteに再掲載しました。主人公・ちえりの独り言、ちえりの…
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2022年4月の記事一覧

【第1回】そう言われたらわたし、何も言えないんです:「二人、いつか稲穂が輝く場所…

 指名客は、ノルマを達成出来るぎりぎりの分だけいればいい。客が多い程、時給は上がるが面倒…

三谷 晶子
2年前
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【第2回】君がお店に勤めている女の子だって事を俺はよくわかっているんだ。:「二人…

 それから田守は週に三日、店に来るようになった。しかも、早い時間から営業終了時間までだ。…

三谷 晶子
2年前
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【第3回】でも、わたし、そんな風にしてまでは来て欲しくはないです。:「二人、いつ…

 その言葉に男は口を閉ざした。口を開け、呻くように、出来れば、と言いかけた。しかし、すぐ…

三谷 晶子
2年前
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【第4回】そして、同時に自分にも恐ろしさを感じていた:「二人、いつか稲穂が輝く場…

 田守はその日、いつものように、開店とほぼ同時に店に来た。おしぼりを出し、飲み物を出し、…

三谷 晶子
2年前
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【第5回】あ、もしかして指輪が気に入らなかった?:「二人、いつか稲穂が輝く場所で…

 その言葉に、田守は笑顔でこう続けた。 「え、それはもちろん一緒に暮らすんだから、今後は…

三谷 晶子
2年前
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【第6回】今までもずっと指名以外の何も欲しくなかったの:「二人、いつか稲穂が輝く場…

 お願いだからわかってくれ。そう祈りながら言った。田守の顔は蒼白になっていた。唇の端から…

三谷 晶子
2年前
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【第7回】わたしは何処からどう見てもすべただ:「二人、いつか稲穂が輝く場所で」

 酢豚、かと思った。あれは一見簡単そうに見えるが具材の全てを下揚げしなければならないので、意外と手間隙がかかる。そんな風に考えた後、わたしはようやく彼が言った言葉が料理名ではないことに気付いた。すべた、だ。要は、あばずれだ。  あまりに前時代的な言葉だ。わたしは、その言葉を現実の生活で始めて聞いた。そのせいか脳がどうやら認識してくれなかったようだ。わたしは、ようやく言葉の意味を理解し、それからまたしばらくして、自分が罵られているということに気付いた。 「この、すべたが」

【第8回】けれど、だからこそ、わたしは彼をあのように残酷に切ったのだ:「二人、いつ…

 わたしが田守を切った日から数週間後。田守は出勤時間に、販売所にやって来なかった。田守に…

三谷 晶子
2年前
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【第9回】でも、あいつはこう言い張ってた。『ちえりちゃんはそんな娘じゃない』って…

 やっとの思いでグラスをテーブルに置いた。そのまま、わたしは手を額に当てた。手についてい…

三谷 晶子
2年前
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【最終回】その願いを叶えることは出来ないけれど:「二人、いつか稲穂が輝く場所で」

 翌日。暇な早い時間につけていたテレビでは、最近話題になっている田舎を舞台にした純愛ドラ…

三谷 晶子
2年前
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【第1回】尻軽罰当たらない女~腹黒い11人の女~

 私には罰は当たらない。何故なら、後悔しないから。  そう言うと、同僚のちえりは「それ、…

三谷 晶子
2年前
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【第2回】「俺、じゃあこの家のダスキンになる」:尻軽罰当たらない女

  永樹は現在十八歳だ。住んでいる場所は三重県。東京には、昨日来たばかりだという。夜行バ…

三谷 晶子
2年前
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【第3回】この瞳の方がずっと綺麗だ。:尻軽罰当たらない女

 その日は久しぶりの休みで、永樹と私は六本木ヒルズにいた。永樹は、東京に来てから私の家の…

三谷 晶子
2年前
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【第4回】「俺の子なのに俺が殺すんだ」:尻軽罰当たらない女

  永樹には、付き合って一年程になった恋人がいたそうだ。だが、一ヶ月程前のある日、その恋人は「妊娠した」と永樹に告げた。避妊を万全にしていた訳ではなかった永樹には心当たりがあり、何とか堕胎費用をかき集めた。病院に付き添いしようと言ったが、女は断った。そして、それから、連絡が取れなくなった。 「それで、地元の友達から、『あいつ、先輩と三ヶ月前から付き合ってたよ』って聞いて」  その女は、その後、自分の友人に「もう別れるつもりだったから子ども堕ろすお金を出してもらった。本当は