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夫の趣味が、我が家を救う【ローマでちょっとグレタさん生活】

芸術を生業としている夫はとても優しく、ときどきちょっと面倒なくらい繊細な心の持ち主だ。
もともと料理がものすごく上手なうえ、掃除や洗濯もそつなくこなす人であり、ここ1年ほどは、娘の専属スタイリスト業にも本格的に精を出すようになった。
そういった意味では、かなりベータ寄りの男性である。
本人もそのことは自覚していて、トラックの運転手さんや建築現場の作業員さんなどなど、野性味あふれた男性が集うバールに入ってしまうと、自分がその場に全く馴染んでいないことを実感するようだし、それをネタにした自虐的なジョークがボイスメッセージとして送られてくることは、我が家ではごく当たりまえのようにお送りされることとなっている。

しかし、そんな彼にも、1年に数回ほど華麗なる変身を遂げ「ザ・男の中の男」感をまき散らす期間が訪れる。
既に折を見て、ここでも綴っているのだが、実は夫は日曜大工をこよなく愛し、ことあるごとに頭の中で「次はいつ、のこぎりを使おうかな♡」と考えている、DIY大好きっ子なのである。

幼少期は、工具と調理器具に並々ならぬエネルギーと資本を投入し、インスピレーションが下りてきたため突発的に家具を作りはじめたり、総勢30人の親戚を迎え10kgの小麦粉でピザ生地を仕込んだり、ときどき盛大に失敗しながらも我が道を貫く叔父を眺めながら過ごしていた夫は、実の父よりもそちらに影響を受けて育ち、今でもその情熱を失うことはないらしい。

というわけで、我が家では基本的に電気、水道、電話などのライフラインに何かがあった際は夫が直すことになっており、ちょっとしたインテリアを作ったり問題を修繕するときにも夫が満を持して登板する。
こちらが申し訳ないと感じていても、本人は楽しくてしかたがなく、むしろ熱烈歓迎であるらしい。
作業服に着替え、ストックルームからはしご、ドライバーにパーツを引っ張り出してくる夫は本当にうれしそうで、そんな日の夫はとにかくハイなため全ての手順などを聞いてしまうと、詳細をそれはそれは丁寧に、必要に応じてアルファ男性の専門用語を解説してくれながら説明してくれて、こちらのその後の予定に支障を来たすため、わたしも最近はあえて首を突っ込まないようにしている。

夫の作品

というわけで、我が家を見渡せば、ありとあらゆるスペースに「made by 夫」のものがあるのだが、特に本人がご満悦なのが、わたしたちのワークスペースである。

夫はときどき、こうして眺めながら「自画自賛だけど、やっぱりいいよねー」という

もともと、ここはストックルームだったところで、あまりにも無駄に広かったため、夫の父から「それを縮小させて、プライベートのスペースを作ってみては?」との提案があり、リフォームによって作り出されたエリアなので、工事のすぐ後は全く何もない空っぽの状態だった。
夏が明けて、キッチンに棚や引き出しを取り付け、2か月ほど経過した頃だろうか、夫はこのワークスペースに着手した。
普段の夫はそもそも、芸術センスを本業に全て持っていかれたのか、絵心というものはまるで持ち合わせておらず、彼が手がけたくまの絵は百発百中、ネコと間違えられるほどの腕前なのだが、こういうときはそんな一面も影を潜め、さらっと理想の完成予想図と思われるものをスケッチし、それから図面に起こして必要な資材を綿密に計算し、あっという間にホームセンターに行って、さくさくっとデスク、そして棚を取り付けてくれた。

しかも、当初の予定では、デスク下のキャビネットはどこかで買おう…と話していたものの、やる気のスイッチが全開だった夫は「ひょっとしたら、できちゃうかも♡」と言い、これまたインスピレーションと勘をフル活用し、気が付いたときには既に完成していた。

これが

こうなる

夫は本質的に全てを感覚に任せてやっているので、誤差があることだってあるし、あとになって「こうすればよかったかも」と感想を述べることもあるし、作業期間中は「ぎゃー」「どぅわー」「てぃえー」と、仕事中のわたしがびっくりして飛び跳ねるほどの絶叫がこだますので、心臓に負担がかかる。
でも、格闘の末、どうにか無事に完成し、夫がそれはそれは誇らしい顔をしていたり、温かくてベータな人柄が伝わって来る作品を見て「満足度と自給率が比例する趣味って、究極の幸せなのかもしれない」と思うのだ。
自分の手で自分の好きなように、自分の素敵な場所を生み出すことができるのだもの。
あるものから選ぶのではなく、自分の想いを100%反映したものを作る、ということの意味や大切さについては、夫から学ぶことが多い。

でも、このマメさは、やっぱりベータ

今は、いろいろと他のことに忙しくて、なかなかこうして自分の好きなことに向き合えていない夫だけれど、一段落したら、またきっと、いろいろと始めることだろう。
わたしもわたしで、毎回「また、始まったよ…」と思いながら、クリスマスにDIYラバー御用達のお店のギフトカードとかをプレゼントしちゃうのが悪いんだよな。

娘は、いつかアルファガールになっちゃうかな

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