『王妃の首飾り』-その1 「ベルサイユのばら」の首飾り事件との違いを検証する-
(Spoiler Alert!ネタバレ注意!)
みなさん、こんにちは!
以前予告した通り、今回は『王妃の首飾り』の感想を書きたいと思います。
『王妃の首飾り(Le Collier de la Reine)』は、アレクサンドル・デュマ Alexandre Dumas が1849-50年にかけて書いた物語で、マリー・アントワネットの首飾り事件がベースになっています。
首飾り事件は、一言で言うと、フランス王妃マリー・アントワネットの名前を騙った詐欺事件で、ベルばらの読者にはおなじみの事件ですね。
この事件は、フランス革命勃発の遠因の1つと考えられていて、この事件以降、ブルボン王朝は急速に衰退していきます(革命後、一度王政復古しますが・・・)。
何度か今迄の記事にも書いてきましたが、私はアレクサンドル・デュマが大好き。
ビクトル・ユゴーと並ぶ、偉大なフランスの作家の1人だと私は思っています。
私は、デュマ&ベルばらが好きなので、以前からこの『王妃の首飾り』は、ずっと気になっていました。
(記事の一番下に、ベルばらのYouTubeを貼っておくので、宜しければご覧ください)
そして、やっと最近この本を読んでみたのですが・・・
大長編の物語なので、読んでも読んでも終わらない💦
(上下巻それぞれ4㎝ほどもある分厚さ!そして字が小さい!!)
しかも、登場人物が多すぎて、読んでいて混乱してしまう💦
この『王妃の首飾り』の前に、デュマは『ジョゼフ・バルサモ』というストーリーを書いていて、実は『王妃の首飾り』は、『ジョゼフ・バルサモ』の続編らしい・・・ということを、初めて知りました💦
その上、上巻はほとんど”首飾り事件”の前振りなんじゃないの⁉と思うくらい、なかなか本題に入らないというか、先にも書いたように、上巻に登場する人物だけでも多すぎて、理解するのに一苦労しました・・・。
例えば、冒頭のカリオストロとの食事会の席にデュ・バリー夫人も参加していたり・・・。
ですので、この記事では、なるべくベルばらの首飾り事件に関する人物に焦点を当てたいと思うので、その他大勢の登場人物のご紹介は省きたいと思います。
個人的に、下巻になってようやく本題の”首飾り事件”のストーリーが展開される印象を受けました。
そのため、私は上巻よりも下巻のストーリーのほうがグイグイ引き込まれて読み応えがありました。
特に、下巻のエンディングで、ジャンヌがコンシェルジュリーの牢獄に入れられ、まさか自分が烙印の刑に処せられるとは思っていないところから、じわじわ不安→恐怖→戦慄と彼女の心情の変化を表した描写は、素晴らしかったです。
(これについては、また追々記事で書いていきます)
「首飾り事件」という史実をベースに、こんな壮大なストーリーを書くとは、さすがデュマだなと思う反面、ベルばらの首飾り事件のストーリーが頭にインプットされている私は、読んでいて、どんどん違和感が・・・💦
どういうところに、違和感を感じたのかも含めて、これからご紹介していきたいと思いますが、ここから先はストーリーのネタバレになるので、まだ本を読んだことがない方はご注意くださいね。
まず、マリー・アントワネットがとても行動的で溌溂とした女性に描かれています。
なんと、マリー・アントワネットがお供の女性と2人だけで(!)、パリのサン・クロード通りに住んでいるジャンヌの家に、お忍びで訪ねる場面から始まるんです。
マリー・アントワネットは、慈善会の婦人として身分を隠し、ジャンヌの家を訪れ、100ルイの金貨を与える。
そして、その帰りに(しかも夜中!)ベルサイユ宮殿の門が閉められていて、マリー・アントワネットは宮殿内に入ることが出来ず、アルトワ伯の家に泊まることになってしまうという・・・。
もうこのあたりからして、ベルばらを読んでいる私は、違和感しかありませんでした💦
私が前編にあたる『ジョゼフ・バルサモ』を読んでいないからかもしれませんが、なぜかマリー・アントワネットはジャンヌがヴァロア家の子孫であるということを知っているんですよね。
それで、お忍びで彼女の家を訪れていたようです。
ヴァロア家の末裔となると、十分な年金がもらえて当然だからだと・・・。
アントワネット、義賊なんじゃないの⁉と思わずにはいられない展開です。
そして、この後も、ジャンヌとマリー・アントワネットが会話を交わす場面が何度かあるのです。
まず、ここで、ベルばらとの違いを見てみると、「ジャンヌとマリー・アントワネットは顔見知りだった」ということです。
ベルばらでは、この2人の女性が会うことはありません。
史実でも恐らく、会うことはなかったと思われます。
衝撃の冒頭から読み進めていくうちに、全くロアン大司教が登場する気配がないので💦いつ出てくるのかと思っていたら、ようやく上巻の中盤あたりで登場!
ここで、ジャンヌは、ロアン枢機卿に対して敬語で話しているので、ベルばらのジャンヌとは違うイメージです。
ベルばらのジャンヌは完全な悪女として描かれていますが、こちらのジャンヌは、”落ち着いた静かな野心家”というイメージを持ちました。
そして、ロアン枢機卿は、ジャンヌが「王妃自らが恩恵を施しに来ている王族(ヴァロア家)の女性だ」ということに気づくのです。
そして、ジャンヌとロアン枢機卿は、お互いを利用しようとします。
ロアンは、ジャンヌを通じて、王妃と近づきたい。
ジャンヌは、ロアン枢機卿を通じて、社交界(ヴェルサイユ宮殿)へ行きたい。
ここにも、ベルばらとの違いがありますが・・・
ベルばらでは、ロアン枢機卿が一方的にジャンヌに騙された(利用された)という構図でしたが、こちらのストーリーでは、お互いがお互いを利用しあう(利用しようという魂胆があった)んですね。
この後、ロアン枢機卿のつてで、ジャンヌはヴェルサイユ宮殿に足を踏み入れることになります。
この後、ジャンヌは、なんと、あの首飾りを直接目にすることに・・・。
ここから先は、次回の記事で書くので、一旦区切ります。
続く。