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その猫が必要なはずだよ

年末に編み物しながら、宮沢りえ主演の「グーグーだって猫である」を観た。(2回目)
その感想を少し。

実在の漫画家さんをモデルに描かれた有名な作品で、小泉今日子主演でも映像化されている。(そちらも観た)
彼女の日常を淡々と描いた作品で、漫画家としての苦悩やひとりで生きる女性の強さと儚さが丁寧に紡がれている。

とにかく根底にある「孤独感」がビシビシ伝わってきて、苦しくなるんだよね。でも何度も観てしまう。

漫画制作のアシスタントの女性たちや若い頃からついてくれている男性編集者さんなど、彼女を支えてくれる人はたくさんいて、それぞれに親しみを持って心を通わせているのに、最終的にみんな彼女の人生から去っていってしまう。

裏切られたわけでもなく、それぞれの人生が交わっていた時期が過ぎ去って別々の道を歩み始めただけのことで、仕方のないことだし、それが現実なのもわかっているんだけど、哀しくて切なくてどうしようもない。

残ったのは多頭飼いしている猫たちだけで、彼女が苦労して生み出したたくさんの素晴らしい作品や、輝かしい経歴や、権威ある賞の受賞を持ってしても、彼女の心を潤して満たすことはできなかったように思う。

***

猫のグーグーを浮浪者のおじいさんから譲り受けるシーンで、おじいさんが彼女に言った言葉。

「その猫が必要なはずだよ」

これは、彼女の心にも視聴者である私の心にもすごく響いた。
彼女の人生を支えてくれる存在が「猫」だけだったことに絶望すると同時に、「グーグー」がいてくれたこと、彼女の人生に寄り添ってくれたことへの感謝の気持ちが湧いてくる。

「あー、これっぽっちなのか」と思うか、「これがあってよかった。ありがたい」と思うか。

猫であれ、人であれ、モノであれ、思い出や記憶であれ、自分にとって大切なものがあれば人は強く生きていけるし、孤独にも耐えていける。
多くのものを望んでも、結局自分に寄り添ってくれるものはそんなに多くないような気もする。
縁あって自分に寄り添ってくれたものを大事にしていくだけだ。

<宮沢りえさんについて>
彼女の目の演技が大好き。
彼女の大きな瞳が潤んで、水を湛えて、かすかにゆらゆらと視線が揺れる。
不安な気持ちや、心細い心理描写を目だけで表現できる稀有な人。
繊細な役柄をやらせたら天下一品だといつも思う。


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