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宮崎事件 その2

母は、私の顔を見るなりニコリと笑った。

そして席を立って部屋から出て行こうとした。

「いやいや、ちょっと待って。まだ何も終わってないから。」

と言う私の言葉も理解できているのかどうか、微妙な表情で私を見ている母。
とりあえず、母の腕を掴んで引っ張って私の隣のパイプ椅子に座らせた。

担当の警察の方が、事故の状況や母の様子を詳しく話してくれた。
その間も母は、話に興味を示すことなく、早く帰りたそうに立ったり座ったり落ち着きない様子で、出されたお茶を飲み干し、急須からまた注ぎ足し‥を繰り返していた。

事故の相手が妊婦さんだった。
そして、小さなお子さんも同乗していた。

妊娠の経験もあり、同じくらいの子どもがいる私は、相手の方は怖い思いをされ、これからずっと不安な妊娠期間を過ごさせてしまうことになるかもしれないという申し訳ない気持ちで胸がいっぱいだった。
そして、それとは裏腹に、その事態を引き起こした張本人であるにも関わらず、全く人ごとのように振る舞い、飄々としている母に心底苛立っていた。

「ねえ?分かってるの?妊婦さんと子ども、事故に巻き込んだんだよ!」

警察官の方もいる前で涙ながらに母に対して声を荒げてしまった。

その言葉にも、母はヘラヘラと笑っているだけだった。



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