宮崎事件 その1
大学病院の検査入院で母が前頭側頭変性性の疑いと診断されてから、しばらくは母はそれまでと同じように生活していたと思います。
診断はされたものの、とりあえずの家事や身の回りのことはできていたし、一緒に生活していた義父も特に困ったことはないとずっと言っておりました。
2019年2月上旬。
仕事中に義父から電話が入りました。
「お母さんが宮崎で事故を起こして警察に事情聴取を受けている。
警察の方と全くコミュニケーションがとれないらしく、家族に来てほしいそうだ。」
医者である義父は手術が入っておりどうしても母を迎えに行けないとのことで、私に行ってほしいとのことでした。
仕事を切り上げて、2時間ほどかけて宮崎市内の警察署へ向かいました。
警察署に着くと、担当の警官の方が出てこられました。
「遠いところ、すみませんね。お母さん、全く話が通じなくて‥実況見分もできなくて相手の方からしかお話は聞かなかったんです。自宅の住所も教えてくださらなくて、保険証からご主人のところに連絡しました。」
母は、側道から本線に合流しようとして、本線の直進している車に突っ込んでいったと推測されるとのこと。
何よりショックだったのは、事故の相手が小さい子供を乗せた妊婦さんだったこと。
自分にも同じくらいの子どもがいる私は、事故のお相手の方の心情を思うといてもたってもいられないくらい申し訳ない気持ちでいっぱいだった。幸い、怪我はなくお子様もお腹の赤ちゃんも無事とのことでしたが、これからの妊娠期間、この事故の衝撃がどう影響するのか、妊婦の方もさぞかし不安でいっぱいだろうなと胸が痛くなった。
その事実を担当の警官の方から聞いた後で、母が保護されている部屋へ通された。
母は私を見るなり、屈託のない笑顔を見せた。
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