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避けるべき2つのストレスとは?

適切なストレスと避けるべきストレスがある

ストレスチェックが実施され始めて5年以上経ち、企業で年々ストレスへの関心が高まっており素晴らしいと思います。その一方、ストレスは私達にとって悪いものでとにかく避けるべきであるというニュアンスを感じます。結論から申しますと、ストレスには適切なストレスと避けるべきストレスがあります。元来ストレスは生物が生存確率を高めるために発達した機能と推察されており、ストレス反応のおかげで、脳が処理する情報の学習・記憶化が促進され、以降の反応速度が上がり、直感力と推測機能が向上し、生存確率が高まります。一歩外に出ればクマなどの猛獣に襲われる可能性のあった太古の昔と、安全な環境ながら膨大な情報や複雑な人間関係が織りなす現代社会では、ストレス機構の役割自体を見直し、適切なストレスと避けるべきストレスを再定義する必要があります。

適切なストレスとは?

適切なストレスとは、自分がやりたいこと、やろうとしていることから受けるストレスです。自分が達成したいことであったり、納期が迫ってくるとそれまでとは別人のように作業がはかどった経験をされた方も多いのではないでしょうか。このように、適切なストレスは私達のパフォーマンスを高めます。メカニズムの一端としては、情動をつかさどる扁桃体が活性化し、ストレス反応が起動すると青斑核が反応してノルアドレナリンが生成されて行動が促進されますし、腹側被蓋野が活性化されてドーパミンが分泌されてモチベーションが高まるとともにシナプスの結びつきが強くなり集中力や記憶定着が進みます。他には神経伝達物質を制御し、精神を安定させるセロトニン、快楽物質であるβエンドルフィンも放出されます。そして、視床下部-下垂体-副腎皮質から構成されるHPAラインによって副腎皮質からコルチゾールというステロイドの一種が合成され、神経細胞の回復・修復に寄与するとともに過剰な免疫反応や炎症が抑制されます。

「慢性的」「過剰」なストレスを避ける

適切なストレス以外が避けるべきストレスですが、具体的には「慢性的」「過剰」なストレスの2つです。慢性的なストレスとは人間関係の不安や人生・仕事への不安などが頭の中で繰り返されることによる精神的な負荷、過剰なストレスとは慢性的なストレスを避けるべき理由は上述したコルチゾールにあります。慢性的にコルチゾールが出続けていると脳から神経ペプチドの一種であるサブスタンスPという物質が放出され、私達の体内のいたるところで炎症が惹起されますし、抽象的な思考や集中力を司る前頭前野の働きが低下したり、海馬など神経細胞が萎縮することも最近の研究でわかってきました。2つ目の過剰なストレスを避ける理由ですが、望まない結果を招くことが多いからです。例えば上司から部下が叱責されて頭が真っ白になるなどが挙げられますが、このような場合には心理的危険状態により、前頭前皮質の統制を失って感情が先走ってしまい感情のみに基づく行動が促進されてしまい、思い描いた行動を誘発する確率が低くなります。相手にとって過剰なストレスとなりうる言動を慎むことはもちろん、自分にとって過剰なストレスを受ける状況を回避してしまったほうが、少し遠回りだとしても、望ましい結果が得られる可能性が高まりそうです。

ストレスと向き合うことから始まる

では(避けるべき)ストレスをどのように対処すれば良いのでしょうか。まず何よりも大切なことは、ストレスと向き合うことです。特に真面目な方ほど仕事や生活するうえでストレスを仕方のないものだと捉え、ストレスの原因をなかったことにしたり対処を後回しにしたりしがちです。瞑想やリラックスした時間など、定期的に自分の心身と向き合うことが望ましいですが、少なくとも年に1度実施されているストレスチェックを活用することが有効です。業務内容、心身のストレス反応、周囲のサポート状況など多角的かつ体系的に自分の現状を知ることができます。まずはストレスチェックをきっかけにストレスを自覚し、「慢性的」「過剰」なストレスを回避しましょう!


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