ショート小説『リスキーさん』※1282文字(約3分)
「リスク管理表は確認していたのか?」と、課長がいつものように人を試すような声で聞いている。2つ下の後輩が手を大きく動かしながら説明をしているが、課長は腕を組み、眉間に皺を寄せたまま動かない。
隣に座る同僚が、目線をパソコンの画面に向けたまま顔を少しだけ寄せてきて「またリスキーさん怒ってるよ」と小声で言う。
課長をよく思わない社員は、陰で課長のことを「リスキーさん」と呼んでいる。3か月ほど前の出張研修という名の東京観光の後から、やたらと「リスク管理が」と言い始めたからだ。