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ライカM3。工芸品として愛でてみた。


ささじあきひで です。

前回に続き、欲しかったこともなかったライカM3を何故か所有していた不思議体験からわかったM3の魅力です。

感覚美のイタリア
イタリア人は理論をすっ飛ばして感覚的に美しさを求めて作るくせに実際の性能に結果が伴っているという他には類をみない民族です。
様式美のフランス
フランス人は美しさを分類して何を作るにしても美しさの分類を優先して不便なものを作りだすへんてこな民族です。
混合美のスペイン
スペイン人は色んな視点の要素を取り込むのに余念がなく不思議な美しさを生み出す民族です。
迷走のイギリス
イギリス人は一生懸命なのに出来てくるものは何かおかしいという変態的民族で、たまに真理を見つけ出します。
機能美のドイツ
ドイツ人はとかく融通が利きません。理論からルールを作り出し頑なに守って作ったものには不思議な美しさがあります。

私が音楽美術工業を通じて感じたヨーロッパ諸国の印象です。

ライカはドイツ人が作ったカメラです。
M3も色んな機能美を見出すことができます。
主観的でミーハーな私の感じたライカM3の魅力をどうぞ!


シャッタースピードダイヤル、シャッターボタン、フィルムカウンターの円形の大きさと位置のバランスが美しい!

ライカM3

ついでに言うと反対側のフィルム巻き戻しノブの円形とのバランスも美しい。

ライカM3。


M2も35mm標準のファインダーだし、いいんですが、フィルムカウンターの位置と大きさが馴染めません。(シャッターレバーと同軸で、バルナックライカっぽい。まさかバルナックオマージュ?)
M4以降の斜めったフイルム巻き戻しクランクも。どうして他のメーカーのように素直に置けなかったのでしょうか? 機能的には断然、クランク好き派です。


よ〜く見て見て、サイドの外形って半円でも楕円でも無いんです。前の方が少しRが緩いのが分かりますか? 人間工学的な何かなんでしょうか? それとも製作過程の都合なんでしょうか?
雲型定規を思い出させるシャッターレバーも美しいです。収納時の飛び出し具合も絶妙。普通、外形内に収めないですか?
飛行機屋さんだったので、翼断面のような複合Rには無条件で愛を感じちゃいます。

ライカM3



異論の多い距離計窓、採光窓、ファインダーの飾り額縁。私は好きです。うるさ過ぎず、シンプルし過ぎず。採光窓にギザギザがないのもいい。
ギザギザ窓だと、飾り額縁がうるさくなるのかも。
リバースレバー、セルフタイマーレバー、レンズロックボタン、フレーム選択レバー、カメラじゃないけどレンズのフォーカスレバー、大小円形が主となっていて美しい。M4からはレバーの先端が角張る。
同じくレバーなら同一部品にした方がコストが下がるだろうに、全部異なる大きさなのは使う人の気持ちを優先して設計したライカの誇り。

ライカM3



上面の面一に対するこだわり。
部品が傷つかないようにするための配慮だと思います。

ライカM3


上部にはごちゃごちゃ文字が書いておいて欲しい。
書いていない機種を見るとやっぱり萎える。
こういうのはデザイン的に大事なんだなと思い知らされる。

他はドイツ語なのになんでGermanyだけ英語なんだろうっていつも思う。Deutschlandってドイツ語にすればいいのに。
戦後だからか?

ライカM3


背面の形のバランスも好き。
四角い外形を黒で切り取り、銀部分には黒い丸のファインダー。白いフラッシュ/ストロボ端子。
黒い方は更に絶妙な比率で裏蓋があって、トドメは銀地の円に赤いスポット。

ライカM3


他のM型ライカもフレーム有りのファインダー機も覗いて見た事ないけど、充分に余白がある丸角の50mm用フレームの美しいこと。まるでLEDかなんかで表示しているよう。とても光学的に出している明るさとは思えない。
望遠側のフレームが慎ましいのもいい。

ライカM3

ちょっとだけ裏話。
第5世代戦闘機って分かりますか?
ステルス化とデータリンク化を主にこれまでの戦闘機の概念を変えて設計された戦闘機の種類です。
守秘義務があるので詳しくは書けませんが、要するにレーダー無効!相手も自分も。そして、自分が捕捉した脅威のデータ上げるから、他の人が攻撃してもいいよ!っていう仕組みです。
で、レーダーや無線を封殺した結果、何の技術が発達したかというと光学系センサー類なんです。
ウクライナ/ロシア戦争で光学伝達ドローンが公開されたので、多少は話せる時代になってきたと判断しましたが、今にこの光学技術の恩恵の一部はカメラ界にも降りてくると思います。
だから、私にとって、光学的優秀さにはドキューーンなわけです。
ちなみに現役を退いて久しいので、自白剤打たれようが、拷問されようが、現在の最新鋭技術は話せませんので、そのスジの方、ご了承ください。


さて、光学系といえばレンズ。
そういえば、コンパクトカメラでウニョーンとせり出してくるレンズ、あれも沈胴レンズだなぁと思い当たるんですが、ライカに触れるまで、特に、外形を保ったまま、引き出す沈胴レンズって見た事がなかったんです。

ライカM3。沈胴レンズがよく似合う。Summicron f=5cm 1:2

光学設計においては扱う「光」そのものの特性から「光の振る舞い」というものが存在し、また、光学素子の透過率の問題もあるので、どこで収差と明るさと光学素子の構成の闘いで見切りを付けるかというのが重要になってきます。
出来上がった写真とかを見ると、よくぞ沈胴という携帯性と光学性能を両立させたものだと感心させられます。

私はカメラのレンズにおいては、どんなに大きくて重いレンズでも光学性能が良ければ優先するタイプですが、航空機の世界では小型軽量は絶対的正義なので、ライカのレンズを選ぶ時だけは、ライカに敬意を表してライカ沈胴レンズの機能美を優先させます。
とはいえ、「貴婦人」とか評される数々の「銘玉」レンズを求めて散財に走ったところは、皆さんと同じなんですけどね。
三桁にも届くレンズはさすがに手は出ませんが、どんな描写をするのでしょう?

三桁にも届くNikonのZレンズはいつか買う予感がしますが(先にNikonのミラーレスを買え)、何故か、三桁のASPHライカレンズは買う予感はしません。
それとも、予感無しに買ったM3と同じく所有することになるんでしょうか?

さて、いずれもドイツ製造に固執した(カナダもあるけど)、ドイツクラフトマンシップに基づく機能美であるんですが、20世紀になったとたん、電子機器に関しては、おいおいゲルマン魂どうした と思わんばかりの低落を見せ始めます。(ミリタリー基準)

デジタルライカにも非常に興味があるんですが、いまいち三桁を出してまで買う魅力はないなぁと思う理由でもあります。
同様の理由で電子シャッターになったM7も多分手を出しません。
逆に露出計に信頼性があるのなら(寡聞にして知りません)、より多数のブライトフレームを装備したM6は興味あります。

興味があるライカM6。1984年デビュー。
出典:パブリックドメイン

それにしても、最初のM型ライカであるM3からの変わりなさっぷり。
調べたら、復刻版出ているんですね、M6。でも、ボディで88万円かぁ。新品があれば、復刻版でも新品を選ぶタイプです。
88万円あったら、先にNikonのZ8かZ9かFUJIFILMのGSX100Sⅱ買いますぜ。

ライカのHPでシリアル番号毎の製造年が分かるんですが、私のM3は1957年製でした。ダブルストロークの倍数SS表示です。
劣化が少ない機械式とはいえ、67年の月日を感じさせないとは。
「ライカで家が買える」だけの製造コストをかけただけのことはありますぜ。当時のLaitzさん。高級精密機械式腕時計なみの高品質ぶりです。

復刻版ライカM6  2024/12発売中。 出典:Leica HP


ライカM3。1957年製。


この、変わらなさぶり、同じドイツのポルシェ911に通ずるものがありますね。

初代ポルシェ911 1964年デビュー。 
出典:パブリックドメイン


最新のポルシェ911カレラT。2024年発売中。 出典:PORSCHE HP

このデザインはRR(リアエンジン/リア駆動)のポルシェが高速走行時に車前方部に下方向の空力荷重がかかるようにする事で、静的重心とバランスが取れ、コーナーリング性能、ブレーキ性能が良くなるようにする最適解だと言われています。
漫画「サーキットの狼」でご存じのポルシェ930ターボ(当時の私の愛車は同じロータスでも主人公の乗るロータスヨーロッパではなくロータスエランでした。)に乗せてもらったことがありますが、みしりともしない重心性能や強烈なストッピングパワーには驚きました。車重が半分以下で慣性が少ないはずのエランのブレーキが急に頼りなく感じたことを覚えています。

いかん、また脱線が過ぎた。

このように、ドイツクラフトマンシップに対する信頼と尊敬の他に、ライカにはポルシェ911と同じ「変わらないこと」の安心感があるんだと思います。

でも、逆説のように「M型ライカはM3で既に完成した」と言われることもあります。確かにデジタルライカは別にしてM6やその他のM型フィルムカメラがM3を下取りにしてまで欲しいかというと、M3で充分と答えると思います。実際触ったら分からないけど。
カラーネガやリバーサル、白黒、感度、色んなフィルムを入れっぱなしにしたいことを考えるとM型ライカ増やしても良さそうだけど、その時は何を選ぶんでしょう?
もしかしたら、M3を買って、自分でペイントしちゃうかもしれません。

ライカ信者は新製品に対して否定的とも聞きますね。
M3発表当時もバルナックライカ使いの一部からはでかいとかチープとか批判があったといいます。
だからM3発表後もバルナックⅲgまでバルナックライカを併売したということもよく言われます。(と言う割にはM型ライカに対してバルナックライカの中古市場の値段はずいぶんお得な気もしますが。)

開発側の視線からしたら、廉価版モデルは別として、満を期して発表したモデルが旧モデルのM3に満たないなんて言われたら。。。

融通の効かないドイツ人のことです。良かれと思って出した画期的アイディアとかも「それはM3から続くM型ライカのルールに反する。やりたいならばライカから出てやりたまえ。」なんて言われているんでしょう。
目に浮かぶようです。

またまたいかん。
誇大妄想癖として統合失調症と診断されちゃう。
(精神疾患の診断なんてそんなものだと思っている。奇異行動とかね。あなたにとって「普通」じゃないだけじゃないの?って思う。)
では、まだ診断が双極性障害だけのうちに。


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