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再生不良性貧血になった大学生

はじめに

この度、指定難病である「再生不良性貧血」になってしまいました。かなり珍しい病気なので、その実態や闘病生活について、少しでも多くの方に届けば良いなと思い、「再生不良性貧血との闘病日記」というタイトルでnoteを執筆いたします。今回は、再生不良性貧血の実態に焦点を当てて、病気の詳細や治療方法をわたしの病状を含めて解説します。


再生不良性貧血とは

再生不良性貧血とは、白血球・赤血球・血小板といった血液の成分を作る造血幹細胞が、何らかの原因で攻撃されることでこれらの成分が全て減少する病気です。罹患率は毎年100万人に8.3人・羅患数は年間1000人であり、かなり珍しい病気です。病気の原因は、先天性と後天性がありますが、ほとんどが後天性の特発性 (原因不明) です。

入院までの経緯

身体の異変を感じたのは、2024年10月中旬ごろで、口内に血豆が多発するようになりました。その翌日には、身体中に赤い点状の内出血が現れ始めました。この時点でかなりおかしいなとは感じていましたが、ストレスや他の軽い病気だろうと考え、とりあえず皮膚科と口腔外科を受診しました。しかし、点状の内出血が現れた翌日には血尿が出たため、これはただ事ではないなと感じ、急いで付近の病院に手当たり次第連絡し、なるべく早く大きい病院への紹介状を書いてもらうことを目指しました。血尿が出た2日後には、血液検査の結果が出て、血液が異常な数値 (このときは血小板が通常の100分の1程度) であったため、その日のうちに紹介状を書いていただき、九州医療センターで検査・即日入院しました。

診断までの流れ

最初の検査では、血小板の数値が異常であったため、別の指定難病である「特発性血小板減少性紫斑病」が最も疑われていました。しかし、白血球の数値も少しだけ低かったため、骨髄検査 (骨髄液を吸い取る骨髄穿刺と骨髄の一部を切り取る骨髄生検) を行い、それらの結果から「再生不良性貧血」の疑いが最も強いという診断になりました。その時点では、血小板以外の数値がそれほど異常ではなかったため、「疑いが強い」ということでしたが、その後の入院中の血液検査を通して、白血球・赤血球の数値も徐々に下がってきたため、「再生不良性貧血」が最終診断となりました。

入院後の経過

入院して2日目には、白血球の数値が2000から900まで下がりましたが (通常は3500〜8000) 、3日目は900から1200に一時的に増えたため、このまま安定するのでは?という期待もありましたが、その後徐々に下がり続け、好中球(白血球の一種)の増加を促すG-CSF製剤を使用しても、白血球数が400〜600、好中球数が10〜20 (通常は1800〜7500) となりました。
もともと、入院2日目の時点でステージ4 (ステージ1〜5のうち)であったため 造血幹細胞の移植は必須でした。そのため、最も一般的な方法である骨髄移植の日程やドナーについての話が何度かありました。しかし、血球 (特に白血球) の減少があまりにも早く、このままでは、骨髄移植の準備に必要な1ヶ月強の間の感染症リスクが非常に高いとのことで、緊急で「末梢血幹細胞移植」という方法による移植の準備に取り掛かりました。この時点で、わたしの病状は、ステージ5の更に上の「劇症型」に進んでいました。

造血幹細胞移植

先述した造血幹細胞の移植方法には主に3つの方法があります。1つ目が「骨髄移植」です。こちらは、ドナーから採取した骨髄液を患者に移植する方法で、準備に1ヶ月強と最も時間がかかりますが、最も成績が良い手法です。2つ目が「末梢血 (まっしょうけつ) 幹細胞移植」です。こちらは、G-CSF製剤をドナーに投与することで骨髄から溢れ出てきた造血幹細胞を採取し、それを患者に移植する方法です。3つ目が「臍帯血 (さいたいけつ) 移植」です。こちらは、出生時に「臍帯血バンク」に保存される、へその緒と胎盤中の血液 (臍帯血) に含まれる造血幹細胞を患者に移植する方法です。後者の2つは、準備に1週間強〜2週間と短期間で準備が可能ですが、骨髄移植と比較すると成績が落ちます。わたしの場合は、骨髄移植の準備期間中の感染症リスクと治療のリスクを比較した結果、「末梢血幹細胞移植」を行うことにしました。

ドナー探し

血液の成分のうち、白血球にはHLA型と呼ばれる型が存在します。この型がある程度一致していないと移植を行うことはできません。そのため、このHLA型が合う人 = ドナーを探す必要があります。ドナーを探す方法は2つあり、1つ目が骨髄バンクを利用する方法です。骨髄バンクに登録する際には,登録者のHLA型を検査して記録してあるので、その中から型が一致する人を探します。この方法では移植までに、①骨髄バンクから型が一致する人を探す→②一致した人がドナーになることを了承する→③移植に適しているか健康診断を行う→④移植準備 というステップを踏む必要があるため、移植まで4ヶ月半程度かかります。2つ目が血縁者から探す方法です。HLA型は、父親・母親からそれぞれ半分ずつ引き継ぐため、兄弟間の一致率は25%となります。また、両親とは最低でも半分はHLA型が一致する (半合致) ということになります。そのため、わたしのように時間的に余裕がない場合は、後者の血縁者から探すことになります。わたしには兄弟が2人いますが、検査の結果、片方は完全不一致、もう片方は半合致という結果でした。そのため、半合致の兄弟から移植することになりました (HLA型が完全に一致していなくても移植は可能で、半合致の移植はハプロ移植と呼ばれます) 。

移植準備・移植

ドナーが決まった後は、移植準備を行います。ドナー側は、まず健康診断を行います。その後1週間程度入院し、①G-CSF製剤の投与→②血液中の造血幹細胞を採取 という流れになります。患者側は、自分の免疫が移植する他人の造血幹細胞を攻撃しないように、前処置と呼ばれる抗がん剤治療・放射線治療によって、一時的に血液中の成分を完全にゼロにします。その後、ドナーの造血幹細胞を血液に投与し、それが患者に定着し血球が増えるのを待ちます。移植方法にもよりますが、定着までに2〜4週間程度かかります。

移植の危険性

ある程度想像が付くと思いますが、移植はハイリスクな治療方法です。その過程で多くの危険があります。まず1つ目が、感染症リスクです。前処置から定着までの約1ヶ月の間、免疫機能がほとんど失われてしまうため、非常に感染症にかかりやすく、また重篤化しやすいです。主なリスクとしては、肺炎・敗血症・ウイルス類が挙げられます。2つ目が、治療の副作用です。抗がん剤・放射線は、粘膜・消化器・腎臓・肝臓といった様々な臓器に障害を起こす可能性があります。また、将来的に二次ガンのリスクも増加します。3つ目が、移植片対宿主病(GVHD)、いわば拒絶反応です。これは、移植された造血幹細胞に含まれるリンパ球が、患者の臓器を異物と認識して攻撃することが原因で起こります。GVHDは、移植後3ヶ月以内に起こる急性GVHDと、移植後3ヶ月以降に起こる慢性GVHDがあります。これらは、免疫抑制剤によって抑えることが可能ですが、特に慢性GVHDの場合は、退院後も長期間にわたって症状が出る可能性があります。仮に移植が成功した後も、健常者と比較すると様々な病気の発症率が増加するため、二次ガン・慢性GVHDのことも考慮すると、一生涯付き合っていく病気・治療であると言えます。


おわりに

今回は、病気の説明・治療の流れとその危険性について、わたしの病状も含めて解説しました。まさか自分がこのような病気になるとは、夢にも思っていませんでしたし、治療に向けた準備のペースも非常に早かったため、正直自分でもまだ完全に消化できてはいません。この記事を執筆時点(2024年11月7日)では、前処置2日目で抗がん剤治療を受けています。いろいろ将来のことを考えてしまいますが、とりあえずは現実を受け止め、治療に専念したいと思います。


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