【人材定着の土台作り】その3 配属と役割編
人材定着の土台部分の最終回です。従業員が感じる【仕事へのやりがい】という部分です。転職希望者が転職を考え始めた理由の中にも、よく出てくる内容です。
これまで、前2記事で、人材定着の土台作りとして、①給与 ②残業と休日 と見てきましたが、今回の③回目は、従業員に【やりがい】を感じてもらうための方法について述べています。
退職理由についての調査結果
本題に入る前に、退職理由について、ネット上で発見できる調査結果を共有したいと思います。いろいろな調査結果が出てきます。お時間ある際に、以下などもサラリと一読してみてください。
上記は(↑) 調査時期が 2007/04/26~2007/05/17 となっていますので、ややデータが古いですね。
といった調査結果がでています。それぞれの調査では、調査時期や、質問項目、調査対象者などが異なりますので、調査結果にやや差異があります。
そこで、ざっくりと乱暴に(勝手に)総合的にまとめた一覧表を作成してみました。
正確に各調査項目の結果数値を分析、集計して、ランキングしたわけではないので、主観的なところもあるかもしれませんが、そこはご容赦ください。
この中で、3位:職場の人間関係 4位:仕事へのやりがい という部分は、今回お話する【配属と役割】への対策で改善ができるというのが当社の考えです。
前置きが長くなりました。では、さっそく、具体的な対策内容を見ていきましょう。いつもどおりの、8象限に区分しています。
1.適材適所
私も経営者として、会社組織内での適材適所は、なかなか実現できない永遠のテーマだと思っています。当然に、従業員がやりたいこと、得意なことを、その当人の仕事として割り振ってあげることができれば、労働生産性は高まります。人は、得意なこと=好きなことですし、不得意な人と比べれば、時間もかかりません。残業代などを考えれば、人件費削減にもつながります。
しかし、そう分かっていても、目の前の業務や、今、売上を上げたい仕事があるときに配置換えをしようと思うと、今いる従業員の中でやりくりする必要があり、適材適所への配慮はしつつも、最終的には、従業員の得意、不得意、希望ある、なし、に関わらず、人員配置を進めなくてはいけない状況が生じます。
つまり、向かない人に向かない仕事をやらせる状況は必ずあります。誤解を恐れずにお伝えしたいことは、完全な適材適所は無理です。『何を当たり前のことを・・』と思われると承知の上で、でも、この無理に果敢に挑戦しようとする経営者の方がいるので、私は、それは止めた方が良いとは言いませんが、無理なことと理解しておくべきと思っています。到達しない理想の世界という意味です。
(補足的に説明しますと、理想を求め、組織の完成度(最高得点)を上げる方法もあると思いますが、当社では、組織内の最高点はそのままに、平均点を上げる努力とその調整方法を優先するという考え方でサービスを提供しているので、このような内容になっています。)
話を戻します。人員配置を行う際に、従業員の情報を理解した上で、人員配置を行うのか?それとも、理解せずに、人事異動だからという命令だけで行うのか?によって大きな差が生まれます。
経営者側が、従業員側の特性を、ある程度、理解した上で組織作りを敢行すれば、その際に生じる歪は小さくすることができます。歪は小さい方が、組織内での不満も少ないことは当然です。
2.自己申告
定期的に、従業員からの希望は聞いてあげて欲しいです。ですが、必ずしも希望通りに配属してあげる必要もないと思います。人は、常に自分の好きなこと(やりたいこと)=得意なことではありません。特に仕事の面では、好き=得意となっていない場合が多くあるように思います。
たまに転職希望の方から、『毎年、異動願い出しているのに聞いてくれない!』という不満の声を聞きます。お気持ちもわかりますが、この場合の不満は、希望が叶わないではなく、叶わない理由を聞かされていないという点にあるように感じています。つまり希望が放置されていることに不満を感じているのです。
なぜ、配置転換ができないのか? その理由を、会社側からの理由(例:今は君がトップ営業だから)に加えて、会社側からみた本人側の理由(例:あの仕事はミスのない正確さを要求されるが、あなたには向いていないと思っているから。→本音をズバリ言う)も伝えてあげる必要があると思います。
やんわりした、『そのうちに、考えておくよ。』という回答が、一番、マズいパターンになります。本音をズバリ言われると、たいていの場合、相手は怒りますが、でも、私は、ゆるーい不満が、じっくり時間をかけて積み上がっていくことの方が、組織内でのマイナス面は大きいと思っています。言い難いことは間違いないのですが、でも、言い難いことを言うためにも、オフィシャルに希望を聞く機会を作り、その希望に対峙してあげることが必要だと思います。
3.相性診断
共感いただけないかもしれませんが、私も含めて、大抵の人間は、自分と相対している相手の人物は、自分と同じ“常識”を持ち、自分と同じ考え方をしていると、無意識のうちに思っています。互いの関係や距離が近ければ近いほど、そう思いがちです。理屈では人は皆違うと思っていますが、感情的になっていく過程において、人は、自分と、相手との違いを見落としがちになります。
と言いつつ、私は占い師ではありませんので、細かい性格分類までは、わかりません。単に、仕事をする上では、仕事のやり方というかアプローチ方法が違うということをご理解いただければと思います。
既に聞いたこともあるかもしれませんが、仕事のする上では、大きく分けて下記の4タイプあると言われています。
タイプ1.目標達成型
設定されている目標は達成するべきである。達成するためには、当初予定されていた手段が多少ブレても、最後に達成すればOKである。手段を守って、達成できないなど、愚の骨頂である。
タイプ2.手段重視型
決まった方法や手段は、尊重するべきである。仮に変えるにしても、結果からの検証などにより、改善という意味で変更するべきである。目標達成も重要であるが、手段が確率していないと、再現性が生まれない。後々の苦労も考えると、手段を確立させることを優先させるべきである。
タイプ3.理由大切型
目標達成が重要であり、そのための手段や方法が大事であることに同意しているが、達成できたから正しいのではなく、その行動が正しいという理由が解明されているべきである。理由なき行動での達成は、偶然かもしれない。行動の正しさの理由もわからないのに、一生懸命に取り組むのは無駄である。
タイプ4.評価絶対型
1でも2でも3でも良いけれど、結果、評価されることが重要であり、その時々に、上司や顧客に求められる行動をするべきである。相手に気に入ってもらえなければ、結果として、何をやっても無駄である。相手からの評価を引き出す方法を第一に考えるべきである。
といったタイプ分類です。
4つのタイプが、均一に配置されていると最も生産性が向上すると言われています。従業員のタイプを見極め、バランス良く異なるタイプを配置しておくと良いです。でも、これを知らずに間違った組み合わせ方をすると、最悪の人間関係を生じることもあるので、注意が必要です。
4.相互理解
前述の4タイプを、従業員間でも相互に知っておくと、トラブルが少なくなります。理屈では、人はそれぞれ違うと分かっていながらも、どう違うのかがわからないので、ついつい、相手を口撃してしまったり、見下してしまったりします。これが職場の人間関係を悪くする原因だと考えています。そこで、まずは同僚や上司が、どのタイプなのか。自分はどのタイプなのか。を知っておくことで、相手の発言や行動に対する理解も変わります。
違いを知る。たったこれだけで、人間関係の安定(良くはならないです。悪くならないだけです)には効果的です。
5.努力要求
少し占いみたいな話が続いてしまいました。内容を変えましょう。必ずしも従業員全員が希望する仕事につける訳ではありません。ですから、そもそも人事とは、希望通りにならないことも明確にメッセージしておくべきです。お若い従業員が多い会社ですと、『熱意を買って』ということで、希望を通してあげる人事もあるかと思いますが、これには、上手くいくケースと、上手くいかないケースの両方があります。
上手くいかないケースの場合、周囲の従業員には多大な迷惑になるので、当然に不満も溜まりやすいです。
希望通りにならない場合、『たとえ会社が決めた仕事だとしても、自分が希望した仕事と思いなさい』というメッセージを伝えておくことが大切だと思います。
興味のないことでも、自ら興味を持ち、好きになる努力ができるかどうかも教育の一環と信じ、それを期待し、従業員には、そこでの成果で評価するとも伝え、希望しないことも、やってもらうことが必要です。
ちなみに好きになるプロセスは定量的に評価はできないので、好きになったかどうかではなく、あくまでも仕事の成果で評価するのは言うまでもありません。(評価については、以下を参照ください)
6.業務標準化
リモートワークだとか、テレワークだとかが、強制的に導入されている今だからこそ、良い機会と捉え、業務の標準化(マニュアル化)に取り組むべきと思います。全ての会社で、全ての仕事が標準化できるとは思えませんが、それでも、まだまだマニュアル化できる部分があると思います。
これまで、属人的に取り組まれてきた仕事を、今一度、洗い出しながら、作業工程を分解すると良いと思います。そうすることで、上手い人と下手な人の違いも発見しやすくなり、上手い人はより上手く、下手な人もそれなりに仕事ができるようになります。結果として、誰がやってもできる仕事になり、配置換えもしやすくなります。
前述の適材適所が整い易い環境へ改善もできます。
更には、優秀な人材には、この標準化されたマニュアルのさらなる改良と仕組み化に尽力してもらうことで、よりクリエイティブな仕事を担当してもらえうようにもなります。
今日までの日本の経済発展を支えてきたのは、製造現場でのマニュアル化と改善の歴史でした。日本の会社、従業員が得意なところでもあるので、仕組みつくり、仕組みの改善の中にこそ、日本式イノベーションがありそうな気もしています。
7.ベタ褒め
正直に言えば、私が最も苦手な部分ではありますが、従業員は、褒めることが大切です。褒めて育てるという領域には、いろいろな書籍や文献がありますので、詳細は譲りますが、文句を言うくらいなら、褒める。
褒めて、褒めて、次にまた褒めるためのアドバイス(指導)を行うと良いと思います。(私は出来ていませんけど・・)
人は褒められると、その分野が得意になったと思うらしいので、前述の得意なこと=好きなことという心理的効果もあるようです。
8.配置変え
大手企業と中堅・中小企業との最も大きな違いは、定期異動だと思います。大手企業の場合、3年から5年で必ず、部署を異動していきます。しかし、中堅企業の場合、そこまで部署やポストが多くないということもあって、異動が不定期だったり限定的だったりします。結果として、トップ営業は、常にトップ営業であり、そうでない人は、ずーっとそうでない、という状態を繰り返します。部門長がエースを出したがらないという話も良く聞きます。
しかし、前述の業務の標準化という観点も含めて、短期的なデメリットや不安はありますが、それでも思い切って、従業員は常に回転させておく方式をお勧めします。
結果として、部署毎の問題や悩みを全社で共有することにも繋がり、社内のコミュニケーションが活性化するという利点もあります。
まとめ
退職理由の上位にあがる、職場への人間関係、仕事へのやりがい、という点への対策として8つの項目について述べてみました。
採用時の話になりますが、採用の際に重視すべきポイントは、会社と候補者のビジョンや価値観が一致しているかどうかであることは間違いありません。しかし、ビジョンや価値観が同じで、従業員が満足する働きやすいオフィスなどを用意したとしても、働きに見合った給与や労働条件を用意しなくては社員は必ず、離れていきます。
日本の会社では、社会的に年功賃金の影響をまだまだ強く受けているので、『いくら頑張っても同期と給与の差がほとんどない』という状態は、今でもよくある話です。
私が、お伝えしたいのは、いきなり社会システムを変えようという話でもありませんし、どこかの大手IT企業のように、新卒1,000万円という話をしているわけでもありません。
お伝えしたいことは、
・人事評価の仕組みを変えて、小さくても差を明確にしましょう
・個人の中で、キチンと、上がり、下がりをつけましょう
下がって悔しいから、上がって嬉しいとなります
ずーとちょっとずつ上がっていくのは、不満の源です
・労働時間とお休みは労働者の権利として、理由も聞かずに与えましょう
・テレワークが当たり前になっていく社会において、【監視前提】の労務管理は止めましょう(プロセスではなく、成果で評価してあげてください)
・仕事へのやりがいや、職場での人間関係に影響を与えそうなことは、できるだけ標準化、パターン化しておくことで、対策しましょう
ということです。
従来の日本的経営においては、曖昧さが良かったような気もしていますが、これからは、今一度、会社の【土台部分】を見直して、曖昧で良いものはそのままに、ハッキリサせたほうが良いものを明確にしながら、社員が平均的に満足する社内制度をぜひ構築し直してみてほしいと思います。
次回からは、【人材定着の中核部分つくり】編です。
・マネジメント
・社内交流
・人材育成
に焦点をあてて、人材が定着する組織つくりについて、更に考えていきたいと思います。お時間ありましたら、引き続きお付き合いください。
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