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さなコン2024 感想まとめ

さなコンは私にとってお祭です。書いてなんぼ。そして読んでなんぼ。ただの「感想」されど「感想」。

インターネッツのかたすみに置いておきます。(昨年までの分もまとめてみました→「さなコン3(一部さなコン2)感想」)

前半はエックスでぽつぽつポストしていたもの。エックスの相互さんを中心に、FF外の方の作品でも気になったものを読んで、感想書いて、という感じでした。自作の投稿直後ハイの状態で書いたものについては、あまりにも言葉が足らないため、補足を付けているものもあります。
後半は最終選考作品で、一部は二次通過発表以前にエックスで書いていたもの、それ以外は直近で読んでみた感想となります。


さなコン2024感想一覧

こちらは物語の砂漠」 冬野みはる さん

おすすめです。さなコン2024で私がいちばん好きな作品のひとつ。じっくり堪能しました。

ブックシェラ」 Yoh.kumoha さん

「ブックシェラ」というネーミングがスマートです。本当に、当日に冒頭イメージが浮かんで書き上げたのだとか。ひえー。

「僕と彼と彼女の日々」辻井 豊 さん

書き出し付近の、純粋に日記に取り組むアンドロイドの描写が健気で好きです。ラストシーンは人類の希望を見送る、ヒトではないものたち。そこには確かに心の交流があったのだと思わされる。別れとは切ないものである。

「日本SFを阻止せよ!」九頭見 灯火 さん

SFラバーの筆者さんが楽しそうで良き。そしてそこまで詳しくない私は「そうだったのか」と勉強になる作品でもあります。SF識者たちが読むと、「いいぞ、もっとやれ」って思うのかもしれません。

「言の葉を埋めた土に咲く花」龍野 陸 さん

龍野さんの作品は、文体の凄みと美しさのバランスが好きです。直近は、精神的な痛みを書かれることが多いのかな。

「オガタハルオの、ある1日」筒井 透子 さん

何度読んでも上手いなあ。筒井さんが元々持っている特殊能力なのだろうか。文体が、上手い。そしてめっちゃ面白かったです。笑わせる文章って誰にでも書けるものではないと思う。現代のおとぎ話のような。

「読めないページのめくり方」冬寂ましろ さん

百合の名手、冬寂さん。どの作品も、「場所」が映像で浮かぶ描写力。何回か行ったことのある神戸にまた行きたくなりました。もちろん海の近くで!
「おしり」は表紙をご覧になって。

「納豆が嫌いでしかたがない兄の行方」武石勝義 さん

強い思い込みが現実となる様子が不気味ゆかいでした。そしてTLで何度も何度も目に入る「納豆」…。人気作ですね。

「イカゲソくんはアッパラ・プープーパー」笹 慎 さん

するする〜っと読めるかる〜い文体。とことんのどかである。私、実は、最後まで読んで、日本酒飲みてえなぁと思っていました。

「夜の煮凝り」津早原 晶子 さん

作中作のようにも感じられる、日記の中身が良いですよね。文体にスリラーみがある。タイトルも、ずしん、とくる。煮凝り。

「もう帰れない夏の日に」蒼桐 大紀 さん

平和を願って書かれているのだろうなという内容の作品も複数お見かけしまして。なかでもこちらの作品は、最後に明らかになる「始点」の設定に驚きました。確かにそうかもしれないなと。

「文字虫」花 千世子 さん

品切れの品を探し回る描写はけっこう、いや、かなりタイムリーな描写ですね。

最終選考作品の感想


『バブル・ダブルドロップキック』/葉月 氷菓さん

とても爽やかな作品です。とにかく冒頭の日記がクスッと来る。

『花が咲いた日』/秋待 諷月さん

最終候補の中では、最も多くの人が「良い」と言うであろう、良心的作品と私は捉えています。「いい話」って、書こうと思ってそうそう書けるものではないとも思います。書く力がないと難しい。すげーな、と思う。

『言の葉の翳を游ぐ』/志村麦穂さん

筆者さんが書いた「日記」の捉え方は、「日記とは何であるか」とその機能を考えた時の、正解の一つではないかと思う。

『雪盲』/坂水さん

初見ですごく難しいと思ってしまったお話ですが、「わからない」を紐解くことは楽しめば良いとして(選評に勝手に期待している私、他力本願です)、もっと大事なことが書かれているように思う。戦争で言語を奪われるというのは、字を生業をしている、またはそれを目指している人間からすると、屈辱的である。身に沁みる内容ではないでしょうか。

『恋するパペッティア』/TYPEさん

冒頭でAIのアヤがパクパクするシーンがかわいくてたまらない。あと、日記を人に見られる恥ずかしさを仮想体験できます(身悶え)。日記に感情移入するAIがかわいい。後半は想像以上の戦闘が繰り広げられて唖然とするが、妙に人情味のあるAIがキラキラとしていてずっと楽しいのである。

『THIS IS THE END NOW 1983』/東京ニトロさん

なぜこうもしつこくカタカナ表記が続くのだろう、と思った読み始めから、ああ、そういうことかと、あまり続きを読みたくなくなる。でもそれは許されない。逃げるなよと読み手に訴える作者の圧を感じた。でもポカリのCMみたいな爽やかさがありました。最初から終わりまで強風が吹いてる感じ。疾走感というのか。そして作者さんは日記よりも音楽が好きそう。

『魔女の遺言』/珠宮フジ子さん

魔女が出てくるからといって、ファンタジーというわけでもない。魔女の存在が世の中に認められ、生活に溶け込んでいる世界観が、SFであるように感じました。

『回帰不能点の通過記録』/やすきさん

人類はもう戻れないところに来てしまった。一見してハッピーエンドなのだが、未来は果たしてどうなのだろう。これはただの通過点なのです。AIに限らず様々な科学技術に当てはまる視点ではないでしょうか。

『宇宙戦争で僕とお茶を』/鳥辺野九さん

サラリーマンの延長線上にあるような、とても穏やかな宇宙戦争のお話です。平和的戦争として、理想の形なのかもしれない。そんなことよりお茶を、という力の抜けた空気感が独特だった。
そもそも知的な生き物が行うものなのだから、戦争の進化の仕方は、本来こうあるべきではとすら思う。
(…三河弁、ではないよな??)

『クラウドの星から』/こう墨さん

キーアイテムである日記を介して分岐するという概念は私の作品と似ているところがあるけれど、こちらの作品は新しい世界を希望として扱っている。私のは「タブー」として扱っている、という大きな違いがありました。

『ぼくをわすれないで』/にゃんころさん

句読点のリズムが心地よい市井の物語。それから、一人称を固定したうえで、他者の視点を詳述することが出来るということを学ぶ。このお話好き。
…ただ、SFか? とは思ってしまったのだが、すこしふしぎが力量で最終選考に残った、と考えて良いのだろうか。とても好きな文体でした。

『いきものはみんなしぬ』/natukawa_skyさん

なるほど。複数人による日記。日記から視点が離れない小説です。課題文にある「日記」というアイテムを終始日記として扱っているところに、凄みを感じました。

『やたら賢いハンスの誤謬』/深津 弓春さん

「頭いいキレキレ文章」が書けないと成立しないお話である。
馬が。
馬が??
全てを馬が廻す世界観に度肝を抜かれる。
タイトルの誤謬と字面は似ているが異なる意味の言葉が出てくる。それには、無謀や独裁といった怖い概念が潜んでいるように私は思った。そして、もっと身近なところにも、潜んでいるのでは、と。小説を書く人、とか…? などと考えて身が引き締まるのであった。「落馬時代」「超馬的」とか、ネーミングが大好き。

『右手にハートマーク』/morioさん

前半が、得体の知れない現象になっていて、怖かった…。「夢で」っていうのはちょっとあっさり感がある。それも持ち味、と言えそう。

『『たのしいパーティーでしたね!』』/山海泰風さん

かわいいお話だったな~。リレーのバトンを渡していくような物語である。なぜ、「あづまのあ団地」なのだろう。何か意味があるのかな。ちょっと調べてもわからなかったです。

『終身永年懐古厨とページに挟まる女(meta null character)』/鳥原継接さん

終身永年懐古厨の殻をかぶった現実逃避厨ではないだろうか? なぜなら、一万字弱の中の随所に、花びらのように散らばった「予感」があるからだ。

『月浜』/アゴさん

最後の一文が、オシャレで、がつんと来ました。良い話であり、その一文でさらに華やぐ、というか。落語って、寄席って、そういう空気がありますよね。(1〜2回しか行ったことないけど)
寄席とSFの融合。よく思いつくな。書いてる人の得意分野なのかな。書いてる人がめっちゃ楽しそう!と思える作品だった。

『シアワセニナッテ』/魚崎 依知子さん

読み始めと読み終わりのギャップがすごいなと思った。派手なシーンは無いのに、小さな世界から大きな世界へ。懐が大きい文章で、騙された、っていう読後感。

『どうかわたしになれますように』/ちょろぎ・月本十色さん

読み終わってからタイトルの願いが深みを増す。自分の場合は、キャプションを読み込むことで、より、「なるほど」となった。

『言葉は泣く』/矢向 亜紀さん

なんて素敵な話なんだ…。しかし、ちょっと、私には、物足りない!!そこが良いのだろうけど。でも素敵。ドキッとしたのが、日記を愛する人の気持ちはそのまま、小説を愛する人と重なるように思ったところです。

『箱がひらくとき』/夏原秋

最後に自作語りです。

性格がまったく異なる母と娘。決して嫌いではないけれど、お互いがよくわからないというビミョ〜な関係を軸にしたお話を、SF的設定で味付けしました。
最初は、「この書き出し文でなければもっとおもしろいのになあ」と応募要項を恨むくらい苦労したのですが、思い切って書き出し文の次に来る「意味のわからない」一文を変更することで、もうこの書き出し文が必須だな、という塩梅に完成し、ほっとしたのを覚えています(変更前はタイトルを使っていました)。
誰が読んでもSFだと言えるものを書いてみたくて、がんばって書きました。
ぜひ読んでくださいね。

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