4 研究職に求められる知財能力
企業研究者として避けて通ることができない知財について、お話したいと思います。
○大事なのは、特許、契約
大学の時に、触れる機会は少ないのではと思いますが、会社に入ると、実務上最も必要になります。ここら辺、知財部門に丸投げすればという意見もありますが、個人的にはこれぞ企業研究者の醍醐味だと思っております。
○特許はクレームが命
細かい特許のイロハは、ここでは割愛します。権利書にあたるクレーム案をしっかり練ることが何よりも大事です。
例えば、ある化合物を作る菌を見つけたとして、特許にする場合、菌そのものを権利化しても、似た菌を他社が見つけてしまえば、排他性は失われます。また、他社の侵害を感知できないクレームであれば、我々の権利を守ることはできません。知財は基本的に攻めと考えて、戦略をしっかり練ることが大事です。そのためにも、この発明をどうビジネスにするかを念頭に置かなかければ、強い特許は作れません。その辺りを考える癖を新人時代から徐々に身につけることはとても重要です。
○契約は色々な未来を見通せるかが大事
世間ではオープンイノベーションが盛んで、社外と手を組むことが当たり前の時代です。この中で特に大事なのは、共同研究等の契約です。契約には、委託、共同研究などあります。総じて言えるのは、色々な未来を考え抜けるがポイントです。検討がダメだった時、上手く行った時、相手が倒産した時、破断した時、情報だけ盗られることはないかなどなど。ビジネスなので性悪説で考えることで、ここらへんの道筋が見えるようになると思います。独特の言い回し、文言に慣れないかもしれませんが、例えば、保険に入る時、家を借りる時等、自分のみに置き換えてみると、危険予測とそれに必要な条項が網羅されているかという感覚が養われると思います。
○まとめ
研究者と知財は、あまり関係ないのようにみえて、実は、一体となっております。交渉側に立つ機会が何度もありましたが、とても勉強になりますし、知財の方とリーガルチェックや議論することで、自分の知財に関する知識が深まり、実務に還元することが出来ました。機会があれば、是非是非、チャレンジすることをお勧めします。