わたしは、BUMP OF CHICKENになりたいのかもしれない。結成25周年への祝辞
「やっと会えた…」
ある曲の間奏中、ボーカルの藤くんがそっとつぶやいた。
心の中で言葉を返した。「いや、ほんとよ。」
2022年7月2日、幕張メッセで行われたBUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messeに参加してきた。
BUMP OF CHICKENの銀婚式
「Silver Jubilee」とは、25周年という意味の英語。このライブは結成25周年記念公演として位置付けられたものだった。
ほんとうの結成記念日は2月11日で、この日に公演が予定されていたが、緊急事態宣言により延期になってしまい7月になったのだった。
私は15年ほど前からBUMP OF CHICKEN(BUMP)のファンで、初めてライブに参加してから今年でまる10年がたった。毎年友達とライブに行くのがライフワークになっていたのに、コロナでぽっかりブランクができてしまった。
2年8ヶ月ぶりのライブは、それはそれは素晴らしいものだった。音楽が主役の、原点回帰みたいな印象。ああこの曲は高校時代に部活帰りのバスで聞いていたなとか、「うわあ沁みる〜」とか言いながら聴いたわ〜とか、いろいろ思い出した。1曲1曲に思い出や風景、においが詰まっていた。
けれど公演を終えて家でビールを飲んでいたら熱い思いがふつふつしてきた。
「会場で手を振るだけじゃ感謝を伝えきれない気がする!!!!」
そこで祝辞を書こうと決めたのである。
わたしのBUMP経歴
BUMPの音楽はこれまでずっと、わたしにとってのシェルターだった。
「うわあ、この人たちに多分一生ついていくんだわ」
そう面食らった瞬間をよく覚えている。楽曲「Merry Christmas」を聴いた時だった。
「『こっち側』のクリスマスを歌う人がいるんだ」
衝撃だった。「クリスマス=大切な人と過ごす楽しいもの」という視野しかなかった高校時代、この定義どおりにクリスマスを過ごせない疎外感、寂しさの中にいて、自分を肯定してくれるような歌詞だった。
暗いところを懐中電灯で照らしてもらったようなホッとした感覚。
「音楽に救われる」経験はBUMPが初めてだった。
それまでもMDやCD、「スクールオブロック」なんかでBUMPの曲は聴いていたが、Merry Christmasをきっかけに沼にはまった。
TSUTAYAでCDを借りたり買ったりして、とにかく全曲をむさぼり聴いた。
BUMPの曲たちは、シチュエーションと楽曲を変えて、いつだってそばにいてくれた。
家族に悲しいことがあったときは「花の名」に慰められて、
なんとなくさみしい夜は「embrace」を聴いて眠って、
人のやさしさに触れて泣きそうなときには「ベル」を聴いて帰って、
仕事に悩んだ時は「ギルド」を聴いて金曜までたどり着いて、
布団から出られないほどつらい時は「Flare」を聴いて泣いた。
楽しいときも、悲しいときも、いっちょ頑張るぞってときも、「これ私だけなのかなって悩むとき」も、いつでも味方だった。
BUMPつながりで仲良くなった人もたくさんいる。部活の合宿でおんなじライブTを着たり家でライブDVDを見てギャーギャー騒いだり変なことばかりしていたけど、いまでも大切な人たちばかり。
パンデミックが始まる前の最後のツアー、Netflixでも公開されているライブの最後にボーカルの藤くんはこう言った。
私はこの言葉を常備薬にしている。ライブDVDに収録されたこのMCの画面を、動画に撮ってスマホに保存していて、辛いときに再生している。
メンタルがぶっ壊れていたときは、千代田線の電車内で再生してマスクがびしょびしょになるほどひとりでボロ泣きした日もある。
いろんな当たり前が壊れてしまったこの3年間、このMCを信じて胸に抱えて、今日まで生きてこれた人は私だけではないはずだ。
たったひとりに向けて書くと、100万人に伝わる
BUMPの音楽がこれだけ多くの人に刺さって、人生をともにするのはなぜだろう?
私なりに出した理由は「たった一人に向けて届けているから」。
ライターの世界ではよく「たった一人に届くように書け、そうすれば100万人に伝わる」といわれるけれど、BUMPの曲を聴いたりライブに行くと、ほんとうにそうなんだなあ、と実感する。
藤くんはよくライブ中「みんな」ではなく「あなた」に言い換えたりしていて、それにものすごくたくさんの人が救われている。たった一人に届けているからこそ、みんなにとっての「自分のための音楽」になるんだと思う。
最近はよく自分のことや、将来像みたいなことを考えたりアウトプットすることが多かった。そのたびにわたしは、人に寄り添いたいと言ってきた。
どうして寄り添いたいのか。そう思う原体験は何なのか。
それはBUMPに寄り添ってもらったことで布団から出られたり、もう少し頑張ろうと思えたり、歩みを止めずにいられた経験なんだ。
「わたしはずっと、BUMPになりたかったのかもしれない」
ライブで音楽を聴いていて、そんな言葉が浮かんできた。
わたしが発信したことが、私がした仕事が、私自身の存在が、そんなふうに誰かを救いたいんだと思う。
25周年、心からおめでとう
四半世紀もの間、音楽活動をしていて、辞めたいと思ったことはなかったんだろうか。
歌なんてどうでもいい、って日だって、これは上出来だ!と思ったものが意外と反応悪かったな〜ってことだって数え切れないほどあったはず。
小さいながらもコンテンツを作る立場になって痛感するのは、変わらずアウトプットを続けるって並大抵のことじゃないってことだ。
それでも、きっと聴いてくれると信じて、活動を続けてくれてありがとう。
4人がいてくれたおかげで、今の私がいる。
結成25周年、心からおめでとう。
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