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15時の手紙

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ささやかな昨日のできごと。
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#コミュニケーション

家事分担を決め事にせずにいられたら

諍いのきっかけは、家事分担だった。 妻が仕事から帰宅すると空腹を満たそうと、いそいそと夕飯を作り出す。ぼくも手伝うことを促される。 もちろん一緒に料理をすることはやぶさかでない(むしろ一緒に料理をしたいと思っている)。しかし、日によってぼくは空腹でもなく、食事はもう少し後でよいと思っていたりする。 妻は、サーカディアン・リズムに基づき、夕食は18時か19時には摂るのが望ましいと主張する。それが「時間栄養学」に依拠した「健康」の秘訣であると説く。ぼくにはいささか教条主義的

どうしてどうして私の話を分かってくれないの

ぼくらはやにわにヒートアップしていた。 夕食にぼくがご飯を3杯食べると、血糖値スパイクを起こして途端に眠気に襲われる。それが血管を傷つけ、長い目で見て身体にも良くないので、その食習慣を改善せよと、妻が迫る。 具体的には、食後の運動か、一日の糖質摂取のバランス改善か、糖尿病検査かと、迫りくる。 恐い。 怒られたくない。 正論を盾に喉元に刃を突き立てられれば、ぐぬぬとしか声が出ない。 でも、ぼくにもかすかな言い分があった。盗人にだって三分の理がある。 それは、妻の健康管理の握

夜の屋上で。相手の大事にしている価値観を大事にすること

ビアガーデン開催中というチラシを偶然見かけて赴いた百貨店の屋上は、ほとんど真っ暗闇だった。 ところどころに置かれた円卓に客はまばらで、夜景が見えるでもなく、ビアガーデンといえば電球の列が吊り下がって鬱陶しいほどの酔客で賑わう画を想像していたので、さすがに戸惑った。 よくよく目を凝らせば、奥のほうのテントを張った一角で静かにビアガーデンは執り行われているようだった。 しかし考えてみれば、台風直撃と報道されていた当日であり、(結果的に台風の進路は首都圏からは逸れたものの)昼すぎ

明るい声で暮らせば

妻の声は、いつも明るい。 これは想像以上に大事なことだと、妻と暮らしはじめてから実感している。 人がメッセージを発するとき、「誰が言うか」が最も大事になると思うけれど、「何を言うか」以前に「どう言うか」も大事なのだと思う。 これは、シュミレートしてみると判る。 たとえば、「ああ、つまらない」という言葉を、見知らぬ人が言うか、自分にとって大事な人が言うかで、受け取り方が当然まったく変わる。大事な人がそれを、明るく言うか、暗く言うかでも、受け止め方がまるで異なる。 相手のメッセ