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写真を語る新しい視点――「撮る力 見る力」
渡部さとるさんの「撮る力 見る力」は、写真やカメラにまつわる謎や常識を軽やかに解きほぐしながら、深い洞察を与えてくれる一冊でした。この本は、初心者からベテランまで、あらゆる写真愛好家に響く内容がぎっしり詰まっています。
写真の「本質」に迫る語り口
渡部さんの語り口は、YouTubeチャンネル「2B Channel」でもおなじみのように明快で親しみやすいものです。本書では、撮影テクニックだけにとどまらず、写真そのものの意味や、カメラの設計思想まで幅広く取り上げています。その多彩な話題の中でも特に印象的だったのは、以下の二つです。
ボケが変えた世界の写真文化
渡部さんが紹介する「ボケと西洋写真文化」の話は、私にとって新鮮で刺激的でした。日本独自のボケ文化が、西洋の写真に影響を与えた可能性があるという視点は、単なる写真技術の話を超えて、文化的な対話を感じさせます。西洋の「主題主義」と日本の「全体構成」の違いは、カメラ設計思想にも反映されているという指摘に、深くうなずかされました。
例えば、西洋ではレンズ中心部の解像度が高くなるよう設計される一方で、日本では中心も周辺もバランスよく解像度を保つ設計が重視されるという話には、写真文化が国ごとに異なる視点で発展してきたことがよく表れています。
写真家の生き方とその哲学
写真家としてのキャリアや生き方に関するエピソードも、本書の大きな魅力の一つです。写真を撮るという行為そのものが、自分自身を探求し、世界を読み解く行為であることが語られており、写真を趣味にしている人だけでなく、人生に向き合うすべての人に刺さるメッセージを含んでいます。
また、「撮る力」と「見る力」の両方を磨くことの重要性についての話も印象的でした。カメラの操作を知ることと同じくらい、被写体をどう見るかという感性が重要であるという指摘は、日々の撮影の中で忘れがちなポイントを思い出させてくれました。
読後の気づきと感想
この本は、単なる写真の技術書ではなく、写真を通じて世界を理解するヒントを与えてくれる「写真哲学の書」と言えます。渡部さんの言葉を借りれば、「撮ること」は「見ること」であり、「見ること」は自分自身を見つめ直すことでもあります。
渡部さんのエッセイを読み終えた今、私はカメラを手にすることがもっと楽しくなりそうな予感がしています。そして、日本の写真文化が持つ奥深さを知り、その一員であることを誇りに思いました。
まとめ
「撮る力 見る力」は、写真を愛する人にとって必読の一冊です。写真の技術や歴史に興味がある人も、写真を撮ることがただ好きな人も、この本から得られる発見は多いでしょう。渡部さんの軽やかな筆致と深い洞察が、きっとあなたの写真ライフを一段上のステージに引き上げてくれます。
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