麒麟がくるレビュー・2軍 その20「家康への文」だって元康。
私の単なる思いつきで、今年82歳になるじーちゃん(日本人。日本在住)と12歳になる息子・エル(日本人とスペイン人のハーフ。スペイン在住)にNHK大河ドラマ『麒麟がくる』のレビューをお願いしている。
張り切っていこう!
手紙の場面ではあの女(元康の母親)にしてやられた
大河ドラマの感動場面をこんな風に理解する人がいるものだろうか。
じーちゃんがおもしろい場面があったというので、ハナシを聞いた。
それはあの元康(のちの家康)が母親の於大からの手紙を読む感動場面のことだった。
じーちゃん曰く、
「あの於大というお母さんが、おもしろい。自分にはもう子供の声や顔の記憶もない、と断言するほど冷たい女じゃ。なのに頼まれもせずなんぼでも手紙を書く。わしも画面で確認したが、かなり書いていました。そして、書くうちに気分がノッてきて感極まって、うっかり元康への愛情があふれているような文を書いてしまったのじゃ。これがポイントじゃ。書いているうちに勝手に盛り上がったという落差が面白い。はっはっは。これを信じた元康が女(元康の母の意味)の言う通りにすれば、戦も大混乱じゃ」
とのこと。
え。うーん、そうかな。
本気でじーちゃんはそんなことを思っているのかい?
まさか、於大の方が元康をただ動揺させ、戦に影響を与えるためだけにあの手紙を書いた、と?
本当は冷たい女で、ただ書いているうちに興に乗って息子に対して調子のいいことを書き散らかした、と?
慌てた私は、
「最初、於大の方は長く元康と離れて暮していることに罪の意識があって、自分に親の資格もないと自信がなかっただけでしょ。でも、やっぱり子供を思う愛情が手紙にあふれてきたんじゃないの? ズルこい作戦のために元康を引っかけたわけではないかと・・・」
とじーちゃんの解釈変更を試みた。
だがじーちゃんは
「ははーん。あんさんは(私のことだ)、そういう見方をするわけか。なかなかおもしろい。じゃが、あの場面は冷たい性格の於大の方が自分でもびっくりするくらい感極まるというという面白さがポイントじゃ」
と、譲らない。
ひとつのドラマを観ても、観る者によってこうも受け取り方が違うものか。
同じほ乳類なのか。
電話口で不安がる私に、じーちゃんが優しく言った。
「大丈夫。人それぞれの理解の仕方があってええやろう。自分なりの大河ドラマの楽しみ方というのがあるからなぁ」
とにかく上から目線を貫くじーちゃん。
なんか偉そうで気分が悪い。
エル語録
じーちゃんは他にも、東庵先生と元康が将棋をしている場面に超感動した、とか私にとっては謎すぎるコメントを残していたが、於大の方の手紙の件で混乱をきたした私の頭にはもうこれ以上は入ってこなかった。
気分をかえてエルのコメントを集めてみた。
・今川義元は強い人でカッコイイと思っていたけど、ちょっとcreepy(クリーピー/気色悪い)な感じがしてきた
・サムライもネコをペットにしていたの? 僕もペット飼いたい
・自分がカッコイイと思ってもらいたかったら、みんな蹴鞠はしないほうがいいと思う。掛け声や帽子が今の僕たちには合わないと思う
・信長はもう最近は魚釣りには行かないのかな?
・光秀の赤ちゃんは男? 女? 赤ちゃんだから文句は言わないけれど、着ている服が大きすぎると思うよ
・朝倉義景は戦争が嫌なんだから、光秀が就職しても仕事はないよ。サムライは首を取ってくるのが仕事でしょ? 光秀はもうリタイア(隠居)するか信長のところへ行って働かせてもらうしか方法がないね。
・それか光秀は、もう全然違う国に行ったほうがいいよ。越前にいるのが嫌なら、好きな国に行けばいいのに。
・信長は闘う人。帰蝶はそれをコントロールする人
相変わらず細かいところに反応しているエルである。
菊丸にシビれたエルと私
エルの今回一番のお気に入り場面は
「菊丸が元康に於大の方の文を届けるシーン」
である。
え。また嫌な予感。
じーちゃんみたいな妙な解釈するんじゃないでしょうな。
しかし、エルは大変素直なよい子であった。
彼の意見は私の意見と完全一致。
どこかの82歳と違い、いたってストレートな反応だったのである。
元康が涙する場面にも感動したが、エルと私がシビれたのは菊丸のセリフ。
「殿。これは三河の者全ての願いでございます。今川ある限り三河は百年ののちも日が当たりませぬ。私はこの日のために殿にお仕えして参りました。なにとぞ今川をお討ちください」
菊丸の今までで一番男前なセリフちゃう?
彼は色んなものを小出しにしてくる。
ああもう、いー加減本名教えてちょ。
姓も名も「は」がつく人でしょ?
私の調教が功を奏しているのか、エルは明智左馬助に対しても
「ふうん。Interesting(インテレスティング/おもしろい)だねぇ」
と興味津々。
これで藤田伝吾も揃えば、光秀も私も元気がでること間違いなしなのだが。
おわりに
次はいよいよ桶狭間の戦いだ。
元康が戦場でどういう行動に出るのか、信長の奇襲作戦は実行されるのか気になるところ。
そしてそれが終われば『麒麟がくる』もしばらくお休みとなるそうな。
エルは残念がっており、じーちゃんはそのフリをしている。
戦国ドラマの醍醐味は合戦なんだから、気合いを入れて観なければ。