【試着編】スリングショット水着は地獄への片道切符か
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「おぉ……なんじゃこりゃあ……」
というのは、姿見に映るわたし自身を見てリアルに口からでた声だった。
身につける水着というより、身体にひっかける紐といった方がしっくり来る。なんという問題だらけの着衣であろうか。
白昼の蛮行
そう。何の因果かわたしは平日の昼間っから【スリングショット水着】を着ているのである。
旦那は仕事。自宅にわたしひとりである。
セクシーな下着や水着は手に取ると「ちっさ!」「布すくな!」という印象を抱きやすい。
でも普通なら、実際に着てみると強調するとこを強調してくれたり、縫製やデザインの効果であんがいサマになったりもする。
それで気分をアゲて「今夜はがんばってみようかな」と思ったりするのである。
だが、いま姿見に映っているのは、“恋人との睦みへの期待に胸を高鳴らせるいつもより少しセクシーな赤石ちくわ”ではない。
“なんかしらんけど全裸でいたら紐が引っかかった赤石ちくわ”である。
これ、エロいの? 笑われない?
旦那はこれを見てムラムラするというの? なぜ??
わたしの華奢な身体がさらに貧相に見えてしまうだけでは?
なんか一気にわからなくなった。
気づき
そもそも日中の明るいリビングで着てるからわけがわからなくなるのだと思って、カーテンを全て閉めた。暖色系の間接照明だけ点けておく。
ちょっとコーヒーを飲みながら考えてみる(紐を纏ったまま普段通りインスタントコーヒーを入れるのってシュールだ)。
旦那と一緒に通販サイトを見て注文したときには、わたしも「これセクシーだね。ちょっと着てみたいかも」とか言ってた気がする(めっちゃ酔っ払っていたが)。
通販サイトを改めてみると、適度に肉付きがよくメリハリのあるボディラインのモデルさんが、胸を反らすようにして着用している画像があった。
股間から肩へ伸びる紐がバストのボリュームで押し上げられている。なるほど、そうして出来る紐の高低差が女性らしい体つきをさらに強調するわけか。
画像検索もつかって、セクシーだと思える着用写真をいろいろ見てみる。
わたしも真似して胸を反らしたり、上体を捻りながら両腕を頭の上でクロスしたりとかやってみる。
姿見の前でポーズを変える紐ちくわを見ていて、私見だがいくつか気づいたことがある。
縦のラインを意識させるつくりなので、横のメリハリがでづらく、スタイル良くないと着用者は命を吸われてしぬ。村雨。
回避策として、上体を捻ったり斜めに立ったりして横を意識させるポーズを取ると、ちょっと見栄えする。
少しでも前屈みや猫背になると、紐が緩んでバストトップが出るし、見た目に情けない。一瞬の油断でしぬ。
あほみたいな水着にも関わらず常に堂々と胸を張った姿勢を強いられるため、羞恥心がバグる。
着用方法や見せ方はわかってきたが、結局これを着るわたしを他者がみてエロいと思うのかは全くわからない。
それは旦那にしか判断できないことだ。
ただ、姿見の前にいままで見たことのない自分がいたというのは事実。
これを着て行う営みはこれまでとは違うものになるかもしれない……という期待感を抱くこともできた。
これでガチガチに勃ったりして?
想像すると、ちょっとムラムラした。
そりゃそういう気分にもなるよ。どうやったら旦那がムラムラするかなぁ、なんて考えながら小一時間くらい羞恥心バグらせ紐を着用してるのだから。
案外わたし自身の性欲も高める効果があるのかもしれないと思えてきた。紐のくせに。悔しいけど。
このあと着たままセルフプレジャーして、股間と肩にひっかけた紐を外し、手洗いしながら、次のセックスのときこれを着て旦那の前に立つことを想像する。
さっきは羞恥心がバグると言ったが、いやいや、絶対恥ずかしい。
でも、好きな人をドキドキさせたい気持ちと恥ずかしい気持ちが同居する感覚は久々だ。
生娘みたいでなかなか可愛いんじゃないのか、わたし。
などと考えながら、ぐへへ、と気持ち悪い笑顔を浮かべるのだった。
(実践編へ続く)