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つれづれ雑記*梵と凡、の話*

 少し前、車で市街を通っているときに、路端のお店の看板が目にとまった。
 いかにも、ザ・昭和な喫茶店。
 看板にはちょっと古風なフォントで、「梵」の文字。

 
 プロ野球のファン、それも広島カープがお好きな方なら、皆さんご存知かと思うが、以前、広島カープに「梵」という選手がいた。(現在はオリックスのコーチをされているらしい)
  
 私は「梵」という漢字をいわゆる「梵字」とか「梵語」という言葉以外では見たことがなかったので、新聞の記事で初めてこの選手の名前を見たとき、「?」となった。
 ええっ、と。読み方は「ボン」でいいのかな。
 外国人選手?なのかしら。中国? 韓国? 
 でも、これらの国の人でも、この字の姓は今まで見たことがなかったような。

 私のnoteを普段から読んでくださっている方々には周知のことだが、私はタイガースファンだ。
 テレビ中継は特別な場合以外はあまり見ない。いつもはラジオでタイガースのゲームの実況放送を聴いている。
 もう10年以上前のある日、対広島戦の放送で実況アナウンサーが「そよぎ選手」と言うのが聞こえた。
 野球が好きと言っても、当時はそこまで詳しいわけではなく(いや、今もそんなに詳しくはないが)他球団の選手の名前を全て覚えているはずもない。
 「そよぎ」? なんて涼やかな名前だろう。名字なのかな。いや、ひょっとして、ファーストネーム?だろうか。
 どっちにしても、素敵な名前。
 ここで疑問が湧く。
 「そよぎ」とは、どう書くのだろう。
 風がそよぐ。「そよぐ」という漢字、あったかな。あったとしても私は知らない。
 
 しばらくして、たまたまタイガースの対広島戦をテレビで見る機会があって。
 アナウンサーが「そよぎ選手」と呼ぶのを聴き、画面の表示を見て、ここで初めて「そよぎ」と「梵」が一致した。
 えー。「梵」は「そよぎ」と読むの?
 知らなかったー。

 後から調べてわかったのだが。
 梵選手のご実家はお寺だそうで。(あー、やっぱりね)この姓もとても珍しく、広島以外ではほとんどおられないと聞く。さもありなん。

 梵とは、仏教用語で、この世の現象の理を表す言葉だそうだ。
 この字をなぜ「そよぎ」と読ませるのかはあまりよくわからないらしいが、字の中に「林」と風を意味する(こともある)「凡」とがあるから、林の中を吹き抜ける風、を表した、という説もあるという。
 やっぱり、とても素敵な名前だ。
 でも、知らないとまず読めない。
 まあ、初対面では、「ぼん」さんですか?、とか言われるだろうなあ。

 さて、それとは少し違う話なのだけど。
 ずっと以前、通学にバスを使っていたとき。
 毎朝通る道すがらに大きな看板があって、それには「凡ゆるネジ 〇〇鋲螺」と書いてあった。
 数年の間、何も考えずに毎朝それを眺めながら通学していた。朝早いこともあって、まだ寝起き頭、いつもぼーっとしていたのかも、しれない。
 あるときふと、「ボンゆるネジ」って、どういう意味なんだろう、と思った。
 
 ネジなんだから、ゆる、というのはいかがなものか。
 さらに、ボン?とは何だろう。
 そういうネジの種類があるのかな。

 これが、「ボンゆる」ではなく「あらゆる」と読むと知ったのは、いつだったか。
 何かの本を読んでいて、その中に「あらゆる」とルビの打たれた「凡ゆる」という言葉を見つけたときには、思わず「うわっ」と声が出た。
 「凡」にサンズイ偏のついた「汎」という字があって、これが広くいろんなもの、という意味があるのは知っていたけど、「凡」にも似たような意味があるとは。これは盲点だった。

 誰かに「あの、ボンゆる、って書いてある看板なんだけどー」などと言わなくて、よかった、としみじみ思った。

 これだから、漢字は油断がならない。

 ちなみに前述の喫茶店の店名「梵」は、残念ながら、「そよぎ」ではなく「ボン」だったことが後からわかった。

 「そよぎ」の方がちょっとオシャレじゃない?と思ったことは、内緒。

 「ボン」繋がりの、どうでもいいお話でした。

#つれづれ雑記 #日々のこと
#漢字の読み #凡と梵
#ずっと月極はゲッキョクだと思ってた