遠く離れていても
遠く離れていても
遠く離れていても
この声は確実に届いている。
わたしはこの部屋から、
そっと窓辺のずっと遠くにいる
あなたに話しかける。
そう、ここまで、
やっと、ここまで。
生きてきた。
生きていく。
あなたと、生きていく。
ねぇ、この鳥の声聞こえる?
いろんな鳥がいるでしょ?
私がいる場所からは全然見えないんだけど、
きっとすぐ近くにいるんだよ。
みんなねぇ、私たちのこと歌ってくれているんだよねぇ。
なんかさ、きらきらぼしに聞こえない?
え?きこえないかなぁ。
そんな風に聞こえちゃうんだよねぇ。
また一緒に歌いたいねぇ。
あなたの気持ちはね、
ここまで届いているんだよ。
口下手だしさ、めっちゃ心配してくれるし、
いろいろ言いたいことはいっぱいあるのに、
だまってそこから見ていてくれる。
時々、ねぇ、ちゃんとしゃべってよ。
じゃないとあたし、わかんないよ。
って言いたくなっちゃうときもあるけど、
これが、あたしたちの程よい距離感と安心感なんだよね。
言葉は距離も時間も越えて、
あぁ、この光にやってくる。
ほら、梅が咲いているよ。
そっちはもう終わっちゃった?
ここはちょっとおそいのかな。
そういえば、君の運転する自転車の後ろに乗って、
春の光の中を走ったことを思い出す。
ただただ毎日が何事もなく
平凡に通り過ぎていただけの
あの日々。
白いアスファルトに照らされた
そう、ゆっくりと流れる
道路を、君と、走った、あの日々を。
遠く離れていても
ここには、ちゃんと届いているから、
お互いそれぞれの日々を
ここからそっと思いあおう。