Anya Luna

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流れ星

流れ星 流れ星を見ていた。 マンションの部屋のベランダに出て。 ビルやマンションが立ち並ぶ、普通のマンション。 テレビで今日はナントカ流星群が見える。ってやってたから。 ナントカ流星群は名前は忘れちゃった。 ビルとビルの間を見ている。 曇りの空が広がる。 今日の筋トレ、結構いいトレーニングだったな。 会社帰りにジムに寄ってきた。 ヒップアップにバストアップのメニュー。 一人で孤独に筋トレの毎日。 家に帰ってきても何もすることがない。 Macの電源を入

    • 44番

      44番 「あ、ゾロメだ。」 その日、銀行に用事があって、取った受付番号は44番だった。 4と4。 看護師のわたしにとっては、あまり見慣れない数字。 でもひそかに目に付く。 銀行にはしょっちゅう行く。 記帳が趣味なのだ。 お給料の振込や各種様々な引き落とし。 いろんな数字が出たり入ったりする数字の記録。 それがしたくて、銀行に行く。 物事の出入りが好きなのだ。 記帳は単純明快に数字が出入りする。 だから楽しい。 新聞を読んでいても、 患者さんの点滴

      • クリームパンと食パン

        クリームパンと食パン 白いカーテンが揺れる。 褐色の私の肌が鏡に映る。 まだ日は登っていない。 薄暗い部屋の中の何も音がしない時間。 「朝ごはんはクリームパンにしよう。」 昨日近所のパン屋さんにいって買ってきた、クリームパン。 大きくて甘いクリームがたっぷり入っている。 甘いものに目がないわたしは、パン屋でパンを選ぶときも ついついチョココルネとかシナモンロールとか甘い菓子パンに目がいってしまう。 「へぇ、いいね。こういうの、作れるんだ。」 そういったのは恋人だった。

        • あわゆきかんてん

          あわゆきかんてん 女1「あわゆきかんてん、かんてん、ほーい。」 女2「何それ?」 女1「覚えてない?昔あったCMの歌」 女2「そんなん、あったっけ?」 女1「あったよ」 女1「ほら、白い牛乳固めたようなお菓子でさ、 ふるふる。っていってて、で、冷やして食べるやつ。」 女2「んー、覚えていない」 女1「そっか。」 女2「それっておいしかった?」 女1「うーん、それが味しなかったんだよね。」 女2「なんじゃそりゃ。」 ソファに座って二人でテレビを見ていた。 お笑い番組の勝ち

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          痛みの歌

          痛みの歌 痛み。 僅かな痛み。 大きな痛み。 それらはすべて遥か彼方の宇宙からやってくる。 遠い星の彼方からやってくる 青色の光。 とてつもない速さで地球に住む私の元をめがけて走ってくる。 誰も望んではいないのに。 それはやがて私の痛覚にまで伝わって、 全身に広がる。 人体はまるで小宇宙だ。 みたいなことはよくいわれているけど、 とおい宇宙からやってきた 綺羅星のごとくあらわれた ほうき星のようなスピードで駆け抜けた それが痛みという感覚を伝わってわたしに

          痛みの歌

          かぼちゃのおもり

          かぼちゃのおもり 秋の風物詩はかぼちゃだと思う。 スーパーでかぼちゃを見ると、 「あぁ秋が来たな。」っておもうから。 でも同時にかぼちゃは呪いでもある。 かぼちゃは魔法の馬車じゃない。 毎年やってくる毒と言う名の呪いだ。 毒はリンゴじゃなかった。 黄色い顔したごついやつだった。 赤いリンゴならまだわかる。 赤なんて警告信号の色だから、 はじめから近づかないもの。 だけど、かぼちゃは黄色。 注意して進め。だ。 そんなに警告されるものでもない。 温かい色をして

          かぼちゃのおもり

          The destination

          The destination 「Lailailailailai~~~~。」 音楽をかける。 パソコンのアプリに取り込んだ音楽。 ピアノの音があたたかい。 ララライとだけ歌声が響く。 瞳を閉じれば、瞼の下には、 いつか戻るであろう故郷の風景。 今朝は春だというのに、まだ寒かった。 肩からショールを羽織る。 冬用の厚手のショールだから、そろそろクリーニングにだそうとおもっていたけど、 まだしまってなくて、よかったな。 昨日、友達と電話で話した。 内容はなんてことなくて、

          The destination

          連(れん) 目の前に広がるのは、どこまでも続く山並み。 右も左も山、山、山。 途切れることない山を見ていたら、もうちょっとだけ頑張れる気がした。 「大丈夫、あともうちょっと。まだやれるよ、わたし。」 こんなところでテレワーク?驚かれたと思う。 昔の大作家じゃあるまいし、こんな山奥に来なくたって。って言われそう。 それでもわたしは車を走らせて1時間もかかる山の中のカフェに来ていた。 仕事用のパソコンといつものノートを持って。 朝家を出た時は、いつも通り普通に仕事場に行くは

          ジグソーパズル

          ジグソーパズル ピースを集める。 ジグソーパズルのピース。 1000ピース?いやもっとだろうか? そのピースをひとつひとつ選んで、よく観察して、 最後に一枚の絵になったとき、 私は人生という旅を終え、死を静かに迎えるだろう。 それまではジグソーパズルのピースを探す。 毎日毎日。 飽きることなく、ずっと。 こつこつこつこつ、集め続ける。 わたしはどんな絵になるのだろうか? 空の絵かな? 街の様子かしら? 今はまだぼやけてしまっているけど、 なんとなくピースは集まってきてい

          ジグソーパズル

          大きな背中

          大きな背中 一人で部屋にいるとき、黄色いカモミールティーを飲んで落ち着いた。 安心して、楽しい、一緒にいてラク。 そう思える毎日を過ごしている。 たぶん、これからも続く。 今だけじゃない。 それくらい彼のことを信頼しているし、 その大きな背中をずっと見ていたいと思った。 わたしの行きたい世界は、安心の世界だ。 眠るときはその背中に腕を回して、 ぎゅっと抱きしめられて眠っている。 わたしにとってベッドの中で眠ることは、 ほんとうに愛のかたまりなのだ。 夜、ほっとして眠

          大きな背中

          香水のにおい

          香水のにおい ふわっ。と香る香水の匂いが好きだ。 「いってらっしゃい。」というと、 「なるべくはやく帰ってくるからね。」 そういって頭をそっとポンポンされた。 いくつになっても頭ポンポンはうれしい。 ふわふわの髪をそっと撫でてくれる。 「ふふふ、かわいいねぇ。」 わたしがほしい言葉を一つ一つ丁寧にくれる。 からだのすみずみまでが触られて喜んでいるのがわかる。 ここにいつまでもいたかったけど、彼は仕事に行く時間で、 早く帰ってくるからの言葉がうれしくて、私はもう一回ソファで

          香水のにおい

          愛しい人

          愛しい人 私をカメラで撮る。 それがあの人の日課だった。 シャッター音はそれはそれは小さな音で、 隣にいないといろんな物音にかき消されて消えてしまうくらい、 小さなものだった。 それでもあの人は毎日私をフィルムに収める それこそ、こちらがくすぐったくなるくらい。 大抵、朝、目が覚めるのは私のほうが早かった。 だから、ふわふわのパジャマの上にカーディガンを羽織って、 キッチンでお湯を沸かすのは私の役目だった。 まだ部屋の温度が上がらないキッチンにて、 コーヒーを淹れる準備を

          愛しい人

          静かの海

          静かの海 音もない。 ただ漂うだけ。 遠くで聞こえるカモメの声に、 そっと思うだけ。 湿った風が、頬を撫でる。 息は白い。 「静かの海を見に行こう。」 そういったのは私だった。 手はつないだままがよかった。 ひだりの薬指にプラチナの指輪。 外されることのない、暗く重い屍。 「どうしてわたしのものになってくれないの?」 そういっても、苦笑いをするだけで、答えてくれなかった。 今になってははっきりと言われなくてよかった。と思っている。 何か返事が返ってきたら、わたし、息がで

          静かの海

          雪が降る夜

          雪が降る夜 本来ならばこんな町はとっくに出ているはずだった。 冬になると寒いし、雪が恐ろしく降る。 雪かき、すっごくたくさんしなくちゃなんなくて、 お米はおいしいし、水はきれいなこの街を、 私は心底呪っていた。それもおそろしいくらいの執着で。 その故郷を私は出ていかない。 高校を卒業しても、文句を言いながらこの街で暮らしている。 出ていけないのだ。 ひとりになるのが怖くて。 友達もバイト仲間も、みんながいる。 わたしはこの街を愛している。 今日も雪が降り積もる。 しか

          雪が降る夜

          陽はまた昇る

          陽はまた昇る 「え、何で?」 「いやだからばーちゃんが会いたい。っていうからさ。」 今年のクリスマスを一緒に過ごす予定だった彼から 「ごめん、キャンセル。」 って言われた。 別に若い子じゃないから、特別何かがしたいわけではないのだ。 家でホットワインを飲みながらネトフリ見るとか、 そういうのでいいのに、今年は急遽帰国することになった。という。 彼はエストニアと日本のハーフだ。 エストニアにいるおばあちゃんがどうしても今年のクリスマスを一緒に過ごしたい。 と言っているの

          陽はまた昇る

          白いお鍋

          白いお鍋 今日のごはんはお鍋だ。 お豆腐と、豚肉と、あと白菜。 白菜はさっき一緒にスーパーに買いに行った大きなもの。 重くてどうやって持って帰ろうか?とレジで考えていたら、 隣にいた彼が黙ってひょい。って持ってくれて、 あぁ、優しいな。って単純に思った。 「俺、缶ビール飲みたいんだけど。まだ冷蔵庫にあったかな?」 わたしはビールは苦手だ。 「うん、まだあるよ。あと2本くらいは残ってたと思うな。」 ぼんやりと街路樹の葉っぱがくるくる道路を舞い散るのを、 遠目で眺めながら、答

          白いお鍋