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赤岡典明
2024年5月15日 10:43
喜助を捕らえた吉川は興味深い名前を出した。「赤沼という人物を知っているね?」喜助は驚いた。「なぜその名前を?」「私は赤沼を追っていた。あいつも君と同じ猟奇的な殺人者だ。しかし、ある時期から急に殺人が止まった。その時期とは、15年前の篠塚夫婦十字架殺人だ。その夫婦には息子がいた。それがあなたですね。喜助さん」警察がまさか赤沼のことをそこまで知っていたとは気づかなった。喜助は疑問に思う。何
2024年5月14日 11:17
夜の倉庫は静まり返っていた。ただ一つ、外灯がぼんやりと光を放っている。その光の中で、喜助はコーヒーを片手に設計図を眺めていた。コーヒーをすする度にゆいの思い出が蘇る。施設で一人で遊んでいるゆい。しかしその姿は寂しいとか悲しいとか、そんな雰囲気はない。ただ一人で熱中している。それが本来の彼女の姿だ。それを大人が無理矢理、人の輪に入れようとする。人の輪に入った方が寂しいそうだ。そんな
2024年5月13日 10:41
朝の光がマンションの外観を照らし、静かな住宅街にパトカーが停まっている。喜助はリビングのソファに座り、窓から差し込む朝日を背にしていた。吉川は彼の前に立ち、静かに話し始めた。「ご主人は、朝帰ってきて寝室で死んでいる奥さんを発見したと」吉川の声は穏やかだったが、その目は何かを探るように鋭い。喜助はうなずいたが、その手はわずかに震えていた。「いつも朝帰りするのですか?」吉川の問いかけ
2024年5月10日 09:59
あの事件の夜、家でゆいはうつむいて座っている。その前にはマキが仁王立ちで顔を赤くしていた。そんな状況で喜助が帰ってきた。「ちょっとあなた、どこに行ってたの?ずっと電話してたんですけど?」とマキは喜助にもチクリと言った。「あーちょっとな。何かあったのか?」と喜助が言う。「ゆいよ」マキは視線を鋭くゆいに向けた。「ゆいがどうした?」「男の子に暴力」「暴力?」喜助は疑問に思った。
2024年5月9日 10:13
朝の光が校舎の窓ガラスに反射してキラキラと輝いている。中学校の生徒たちの賑やかな声が校庭に響き渡り、新しい一日の始まりを告げている。遠くの運動場では、体育の授業が始まる準備で、ボールが跳ねる音が聞こえてくる。2年3組の教室では、朝のざわめきでいっぱいだ。生徒たちは入ってきては、友達と話したり、笑ったりしている。しかしゆいは違った。彼女はいつものように窓際の席に座り、外を見ている。誰も彼
2024年5月8日 11:07
暗闇に包まれた倉庫は、古びた木造の壁と錆びた鉄の屋根で覆われていた。月の光が僅かに差し込む中、赤沼整備のトラックが静かに到着した。赤沼は倉庫に足を踏み入れ、壁に取り付けられた古いレバーに手を伸ばした。彼がレバーを引くと、蛍光灯が一斉にチカチカと点灯し始め、やがて倉庫全体が明るい光で満たされた。「入っておいで」ゆっくり喜助が入って来た。警戒心と恐怖心が混ざりながら。ただ別に拘束されている
2024年5月7日 10:41
赤沼はコップの水を勇助に頭からかけた。目を覚ました勇助は、自分も十字架に縛られていることを瞬時に判断した。「あなた」同じく十字架に縛れている好美が声をかけた。「修理屋?何のマネだ?」威勢よく勇助は言う。「さきほど、奥さんに説明したんで、省略させてもらっていいですか?」赤沼はそういったが、面倒くさいけど仕方ないという表情で説明する。「まあ、簡単に言いますと、DVの夫に罰を与えるという
2024年5月3日 11:00
まだまだ15年前の話です。31歳の刑事吉川が登場です。赤沼が若者を殺害したリビングから始まります。夜の帳が下りた静かな住宅街を背に、吉川は犯罪現場のリビングに立っていた。彼の目は冷静に、部屋の中央に横たわる若者の死体を観察している。死体の周りには、鑑識が証拠を探すために忙しく動き回っていた。「これは、どうやって死んだんですかね?」吉川の声は落ち着いていたが、その目には犯人を追う決意
2024年5月2日 10:56
夜の静けさを破るように、パトカーがマンションの前に停まっていた。赤色灯が暗闇に光を投げかけ、不穏な空気が漂っている。村田家のリビングには、若い刑事と鑑識が捜査を進める現場と化していた。彼らの間を縫うように、吉川が入ってくる。46歳にしては若々しいその男は、現場の異様な雰囲気にも動じない様子だった。「あ、吉川さん」と刑事が声をかける。「何これ?」吉川は部屋の中央に置かれたガラスボックス
2024年5月1日 11:38
夜の更衣室は、店が閉まった後の静けさに包まれていた。篠塚喜助は、他のスタッフと一緒に着替えを終え、帰宅の支度をしていた。彼は料理長に向かって一礼し、「料理長、お疲れさまでした」と声をかけた。料理長も疲れた様子で「はい、お疲れさん」と返した。喜助は何かを料理長に手渡し、そのまま店を後にした。料理長が手に取ったのは、辞表だった。「ちょっと、篠塚君」と料理長が呼び止める声が、喜助の背中に届く
2024年4月30日 10:52
夜の居酒屋の厨房は活気に満ちていた。フライヤーからは唐揚げのジューシーな音が響き渡り、料理長と村田は忙しく調理をしている。喜助もその一員として、唐揚げを揚げる任務に就いていた。この居酒屋の新人は、まず唐揚げを担当する。このカリカリ唐揚げはこの居酒屋の名物だ。その名の通り、外側のカリカリがお客さんに好評なのだ。タイマーが鳴り、喜助はそれを止めてカリカリ唐揚げを取り出す。そして盛り付ける
2024年4月29日 10:19
あらすじ篠塚喜助30歳は殺人者である。自分が許せないと思った人物は殺してしまう。しかし、すぐに殺すわけではない。喜助も我慢はする。その我慢は3回まで。メモを取る。そして×が3つ並んだら殺すのだ。なぜこんな人間になったのか?それは15年前のこと。赤沼光一郎45歳に出会ったからだった。喜助は父親にDVを受けていた。母親も父親の味方。それを許せなかった赤沼。赤沼はそういうものを許せない。しかし