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アカネの小説

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2018年10月の記事一覧

【短編小説】 メッセージ

【短編小説】 メッセージ

 見渡す限り、美しい青の世界だった。
 澄み渡るような青い空にいくつもの雲がたなびいている。雲は天に近付くほど白く輝いていて、地表に向けた顔は眼下の情景を映したかのように青みがかった翳りを帯びていた。
 真一文字の水平線より下には、染みるような深い青色が広がっている。海だ。ところどころに落ちた雲の影が、大海原を一層青く見せている。
 こんなに美しい景色を写真や映像以外で見たのは初めてだ。
 そう、

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【短編小説】 きいちゃんと 車に乗ったサンタクロース

【短編小説】 きいちゃんと 車に乗ったサンタクロース

 きいちゃんはカギを持っています。
 きいちゃんのカギはなんでも開けることができる魔法のカギです。

 クリスマス・イブの夜、きいちゃんはベッドの中でぱっちり目を覚ましました。
 どこかでゴソゴソと音がします。
 きいちゃんはいつものように魔法のカギを首にかけ、赤ずきんちゃんみたいなフード付きのケープを羽織って部屋を抜け出しました。
 リビングからほんの少し明かりが漏れていたので、ドアの隙間からそ

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【短編小説】 きいちゃんの魔法のカギ

【短編小説】 きいちゃんの魔法のカギ

 きいちゃんはカギを持っています。
 きいちゃんのカギはなんでも開けることができる魔法のカギです。
 きいちゃんが魔法のカギを差し込んでガチャリ!と回すと、どんなものでも開いてしまうのです。

 ある時、きいちゃんはお散歩中にペットショップを見つけました。
「まぁかわいい。みんないっしょに遊びましょう」
 きいちゃんは犬や猫、トカゲ、小鳥などなど、目についたケース全てに魔法のカギを差し込んで、ガチ

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【短編小説】 なまえをつけてください

【短編小説】 なまえをつけてください

「あ〜また死んじゃった」
「ツトムのへたっぴ!」
「これやったことないもん。ヒメがやってよー」
 僕はコントローラーを放ってゴロンと横になった。
「仕方ないなぁ」
 と、ブツブツ言っているのは幼馴染のヒメだ。僕たちはヒメの部屋で長いことテレビゲームをしていた。
 チラッと壁掛け時計を見る。そろそろ9時か。
「おばさん遅いね」
 テレビ画面を見ているから僕が何をしているかなんてわからないはずなのに、

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