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悪いあの人、かわいそうな私。

名著『嫌われる勇気』の続編、『幸せになる勇気』を読みました。

前作は「入門書にして決定版」というコピーで売り出されていたとおり、アドラー心理学について俯瞰的かつ本質的に理解できるものでした。たとえるなら教科書。

いっぽう本作は、アドラーの考えを実践しようとしたときに直面する課題に対して具体的な行動を示してくれる、実践書のようなものです。

終始、愛について語られています。

前作のときほどの衝撃はなかったけど、アドラー心理学がいかに自分に厳しい考え方なのか、改めて理解できた一冊でした。笑

人生は修行なのかもしれない。


● 前提の考え方

人の悩みはすべて、対人関係の悩みである。

人が今抱えている課題は、宇宙にただ一人で、社会が存在しなければ生まれ得ない。

対人関係の悩みは、課題の分離によって解決される。「自分の課題」と「他者の課題」を切り分ける。分ける基準は「その選択の結末を最終的に引き受けるのは誰なのか」。

キリスト教 ニーバーの祈り「神よ、願わくば私に、変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵を授けたまえ」に通ずる。


● 対人関係は三段階ある

仕事の関係:
信用によって成立する関係。「わたしの幸せ」を突き詰めた結果、誰かの幸せにつながる。

交友の関係:
無条件の信頼によって成立する関係。「あなたの幸せ」を実現することを目指す。

愛の関係:
お互いの決意によって成立する関係。「わたしたちの幸せ」を最上位に置く。


**● 目指すのは「共同体感覚」 **

生まれたばかりの子どもは、弱さで大人を支配しなければ生きていくことができない。したがって人はみな圧倒的な「自己中心性」から出発する。

しかし、大人になるにつれ、世界と和解し、自分は世界の一部なのだと了解しなければならない。それが、共同体感覚。

アドラー心理学のゴールは、自己中心性から脱却し、共同体感覚を持つことで、しあわせに生きること。


● 具体的なステップ

共同体感覚は、だれしもの中にある。あとから身に付けるものではなく、内から掘り起こすもの。

それは、相手を尊敬することから始まる。

尊敬とは、人間の姿をありのままに見て、その人が唯一無二の存在であることを知る能力のこと。(エーリッヒ・フロム)

まず、その人の関心ごとに関心を寄せること。他者の目で見て、他者の耳で聞き、他者の心で感じる意識を持つこと。

その先に、この人と愛の関係を築くと決意し「わたしたち」の幸せを追い求めはじめてようやく、「わたし」から脱却できる。自己中心性から抜け出すことができる。


● 自立、愛、共同体感覚

アドラーは、承認欲求を否定する。

「他者に認められたい」と行動していると、他者の要望に応えようとしてしまう。いつの間にか、他者の人生を生きることになっている。

「わたしであること」の勇気を持ち、「わたし」の価値を自らが決定すること。それが自立。

「人と違うこと」ではなく「わたしであること」に価値を置く。個性とは相対的なものではなく、絶対的なもの。

ありのままの自分を受け入れることができず、絶え間無き不安にさらされているから、自分にしか関心が向かない。自分を信じられない人は、他者を信じることもできない。

自立し、愛の関係を築き、共同体感覚を持つ。


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