【第220回 開催レポート】「結婚式のメンバー」カーソン・マッカラーズ著 村上春樹訳
開催日:2023年7月6日
課題図書:「結婚式のメンバー」カーソン・マッカラーズ著/村上春樹訳
少女が主人公の名著は数あれど、この小説に出てくる12才のフランキーは少々厄介だ。
1946年に刊行された小説で、その後舞台化されて評判になったらしく、1952年に映画化までされている。
あらすじはこんな風。アメリカの南部の田舎町が舞台。母を早くに亡くし、父は仕事で忙しく、ほとんどの時間を女料理人のベレニスと従弟のジョン・ヘンリーと過ごす主人公のフランキー。そんな彼女がむせかえるほどの暑い夏に、人生が変わることを夢見る。兄の結婚式をきっかけにこの街から出てみせる!と。フランキーの夢は叶うのか?!
というもの。
あらすじだけを見ていると主人公のフランキーの厄介さはわからないが、小説を読んでいくと、彼女は独特の解釈でほとんどの事柄をこじらせてしまい、読み手をヒヤヒヤとさせてしまう。
この小説の書き手カーソン・マッカラーズの半自叙伝というだけあって、少女の感情の微妙なニュアンスは驚くほど見事に描かれている。
読書会に参加したメンバーはどのように読んだのか。
少し読みづらさをおぼえた人も少なくなかったようだが、
・この年代特有の悩みや閉塞感を感じた経験がなかったので、フランキーの気持ちになれなかった。
・昔の自分を思い出してしまった。
・べレニスのフランキーに対する視線は母の役割を果たしていたのではないか。
・自分の内面と向き合うことで生じる葛藤がうまく文章にされていて、感心した。
・他人と関係を持つことで他人と共感することを覚え、人は「大人」になれるのではないか?
などが挙げられていた。
主人公のフランキーが女の子のせいなのか、どちらかというと女性メンバーのほうが、共感できていた人が多かったように思う。
私自身も10代前半の頃、自分ではない自分になりたくて、やたらと周りの人を巻き込みこじらせていた記憶がある。人に自分を理解してもらいたくても、自分の気持ちを表す言葉を持っていなかった。あの頃にこの小説を手にしていれば、何かが変わっていたのかもしれない。
これまでに記録したことがないほど厳しい暑さが続く今年の夏。
この小説に出てくる「気の触れた夏」を体験するにはベストタイミング。人間模様だけでなく、時代背景も感じ取ってもらえるとそれぞれの主人公のセリフの意味がさらに広がります。この時代にLGBTQの問題を取り上げてるところも読みどころのひとつです。
一番印象に残ったセリフは、P236のベレニスのセリフ。ご自身の目でぜひご確認を!