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製作過程と物語がリンクしていてさらに泣かせる「アイミタガイ」

故佐々部清監督の遺志を受け継ぎ製作されたこの作品はその物語自体も故人の遺志を受け継ぐ善意の連鎖を描く作品でした。

「チルソクの夏」「半落ち」などで知られる佐々部清監督が生前に映画化を企画していた小説「アイミタガイ」を「彼女が好きなものは」の草野翔吾監督が市井昌秀と佐々部監督による脚本を引き継いで映画化したヒューマンドラマです。

三重県在住の原作者の作品だけど

物語は

親友でカメラマンの叶海を事故で亡くしたあとも彼女のスマホにラインメールを送り続ける梓は恋人澄人との結婚に踏み切れずにいた。
それは梓の両親が離婚し、梓はその修羅場を見ていて結婚に希望が見いだせなかったから。
中学のときに桑名市に転校し、居場所がなくいじめられていた梓を救ってくれたのがカメラが趣味の叶海で、二人は夕方6時なるとある大きなお屋敷から聴こえるピアノの音を聴くのが楽しみだった。
現在、ホテルのウェディングプランナーとして働く梓は銀婚式の担当となり年配のピアニストを探すことに。叔母からの紹介された93歳のピアニストは中学の頃に梓とピアノを聴きにいっていた家の主人だった。
叶海の実家では叶海宛てに届いた山梨にある児童擁護施設からの手紙が気になり施設に連絡する。叶海はカメラマンとして取材に訪れたその施設と交流を続けていた。
叶海の両親はその話を聞きある決断をする。
梓の恋人澄人は梓にプロポーズし、勢いで梓について近江八幡にいる梓のお祖母ちゃんに会いに行く。
そこであるハプニングが起こり、梓は澄人を頼れる男だと実感し…

絶妙なキャスティング

梓が黒木華で叶海が藤間爽子でした。

藤間爽子は「90歳、何がめでたい」でも草笛光子と共演

藤間爽子は今年出演作が相次いでいて「90歳。何がめでたい」ではこの作品で老ピアニスト役で出演している草笛光子の孫役でした。澄人は佐々部監督の「東京難民」主演の中村蒼で佐々部監督の「大綱引きの恋」に出演し、佐々部監督の親友だった升毅が澄人が行く宝石店の主人役でした。
黒木華の中学時代を「サユリ」の霊感少女役が
印象的だった近藤華が演じていてまたしても陰キャ少女役でびっくり。でもすごくハマっていました。

映画の内容と製作過程がリンクする

この作品の物語は事故で若くして亡くなった叶海の遺志が残された両親や親友を後押ししていくという展開で、この映画を企画した佐々部清監督の姿が彼女にダブって見えて来ました。
原作が連作短編ということで複数のエピソードが少しずつ絡み合い、終盤一気に伏線回収していくのが気持ちいい作品でした。

主題歌は黒木華が!


その終盤はずっと涙が止まらないレベルで泣かされ、エンディングに流れる黒木華歌う「夜明けのマイウェイ」がちょっと拙くて、その拙さ具合が絶妙に温かみになっている奇跡。
歌自体も子ども時代にテレビで観ていたドラマ「ちょっとマイウェイ」の主題歌だということもあり懐かしさもあってぐっときました。

三重県出身者としては


全体的にとてもよい映画なんですが三重県出身者として残念なことが一つ。
物語のほとんどが桑名で展開するわりに三重弁が全く聴こえないこと。
風吹ジュン演じるお祖母ちゃんは関西弁でしたがあれは近江に住むお祖母ちゃん役なので近江の方言のはず。
中学のときに引っ越してきたとはいえ梓だって三重弁に染まるはずだし、少なくとも叶海は桑名っ子だろうから三重弁じゃないのは不自然。澄人もしかり。
個人的には三重弁は女子がしゃべると日本一かわいい方言だと思うのでそれがなかったことだけが残念でした。

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