城定秀夫×内藤瑛亮 奇才監督のコラボの結果は!?「嗤う蟲」
「愛なのに」の城定秀夫監督が「毒娘」の内藤瑛亮監督と共同脚本で制作したヴィレッジスリラー「嗤う蟲」。邦画の鬼才監督がコラボしたその結果は?
物語は
都会から田舎でのスローライフに憧れて愛知の田舎にある麻宮村に移住してきた杏奈と輝道。杏奈はイラストレーターで輝道はこの田舎で無農薬野菜作りをしようと夢を持っていた。
その村を牛耳っていたのは自治会長の田久保で村の駐在も彼の言うなりだった。
隣人の三橋夫婦は様子がおかしく、三橋は田久保の手伝いをしていたが仕事をうまくこなせず邪険にされていた。
輝道はあまり関わらないようにしようとするが、田久保に逆らうと村八分にされることを知り、しぶしぶ言うなりになる。
祭りの夜、酔っていたものの田久保に家へ送ってくれと言われ車を出すと、路上に倒れていた三橋を轢いてしまい…
舞台は愛知県らしいけど…
劇中に登場するパトカーには愛知県警と書かれていたので舞台は愛知県と思われ、方言も三河弁の語尾にりんをつけるしゃべり方だったり、怒るときにたわけ!という愛知独自の言葉も登場しました。だにという静岡弁の語尾も使っていて完璧な三河弁という感じでもなく違う言葉もまぜてどこでもない田舎にしているのかも。
劇中に登場する手筒花火も三河地方のお祭りにあるものです。
愛知県が舞台の理由は脚本が愛知県出身の内藤監督だからなのかも。
言葉自体は愛知県ベースですが、撮影は愛知ではなく、キャストも愛知ネイティブではない人たちなので愛知の人にも愛知県だと確信が持てない不思議な世界にもなっていました。
以下ちょっとネタバレ
愛知県ではあるけど、どこでもない場所風なのはやっぱり内容が合法的に大麻の栽培を許可されながら、その大麻を裏ルートでさばいて村の経済を成り立たせているというヤバイ設定のせいかも。
若葉竜也と深川麻衣というと
「愛がなんだ」で若葉竜也が深川麻衣に片想いする役だったことを思うと、この作品で結婚できて良かったねと思ったのもつかの間、とんでもない村に来てしまう二人。
城定監督は「愛がなんだ」の今泉力哉監督の脚本による監督作品に「愛なのに」という「愛がなんだ」にちなんだタイトルをつけたこともあります。今回の二人のカップル共演はやっぱり「愛がなんだ」ありきなのではという気がします。
城定監督がアウェイな感じの環境
城定監督といえばエロスとコメディを武器にしたストーリーテラーというイメージですが、今回は笑いなし、エロなし、三橋役の松浦祐也さんとは過去に仕事しているものの常連キャストもほぼいないというアウェイな感じでした。
自分で脚本も書く城定監督、今回も脚本に名を連ねてはいますが内容的には内藤監督のフィールドに近い内容だと思いました。
同日から公開しているルーマニアの田舎を舞台にした「おんどりの鳴く前に」も田舎町で果樹園でもやろうと思い村長に協力してもらっている手前村長に頭が上がらない警官が、一見のどかに見えた村の暗部に触れ、大変なことになる物語で根っこの部分ではこの作品と共通するものを感じました。
城定監督と内藤監督、二人の鬼才のコラボで生まれた日本製ビレッジスリラーの佳作なのであんまりお客さんがいないのがもったいない限り。