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落ちた単位

 大学2年前期。単位を初めて落とした。

1年生のときは「単位を落としてはいけない」と肩に力が入っていたため、1つたりとも落とすことはなかった。2年生になって気が緩んだのか。たぶんそうだろう。まぁ別に落としたこと自体はどうでもいいのだ。

 落とした教科が少し引っかかった。

 3人に1人が落とすような教科や、期末試験でそれっぽいことをつらつら書いただけで内容についていまいちよく分かっていない教科の単位は取れていた。

それなりに対策をして、課題もちゃんと出して、授業も毎回受けて、なおかつ去年単位を甘くつけてくれていた教授の科目を落としたのだ。

何で落ちちゃったのかなー。

ちゃんと期末試験も対策して受けたのになー。

100点満点の中間試験で16点取ったからかなー。

取ったからだろうなー。


...まぁいいか。来年は頑張ろう。

 大学生なんてものは単位を落とす生き物である。だから別に1個落としたことくらいどうってことない。どうってことないんだ。


 単位を落とすことはよくあることだが、落とした単位は一体どこへ行くのだろうか。

 例えば、学校で鉛筆を落としたら、まず「落とし物箱」を見に行くだろう。あの段ボールに乱雑な文字で「落とし物箱」と書かれたやつだ。そこに行けば、大抵落としたものは見つかる。

ショッピングモールで落とした場合は、サービスカウンターに行く。落とし物の特徴を覚えている限り伝え、それっぽいものがあるようなら、落とし物保管センターへと連れて行かれ、無事再会を果たす。


マンションで落としたときは、管理人へ。


駅で落としたときは、駅員へ。


町中で落としたときは、交番へ。

 このように落とした場所によって尋ねる場所こそ異なるが、ちゃんとどこへ行けばいいのかというのは決まっている。そこへ行ってもないこともあるが、日本は平和なのでそれなりの確率で手元に戻ってくる。


 では、落とした単位はどこへ行けば、手元に戻ってくるのだろう。

 交番へ行って、「単位を落としたんですけど、届けられてたりしませんかね?」と聞けばいいのだろうか。


サービスカウンターへ行って、「60代くらいで、眼鏡をかけてて、髪は白髪交じりだけどちゃんと生えてて、話し方が柔らかい、おじいさんの教授で、講義中に電話に出ることが多々あって…」といった具合に特徴をつらつら話せばいいのだろうか。


それとも、全国の大学生の落とした単位が集められている「落とし物箱」がどこかに存在しているのだろうか。


 というか、そもそも一度も手元にあったことがないものを「落とした」って言うこと自体が変じゃないか?

「落とし物」って言うのは、元々「自分のもの」だったから、「落とし物」なのである。元々「自分のもの」ではないのに、「単位を落とした」いわゆる「落単」というのは変ではないか。「手に入れ損ねた単位」で「手に入れ損ね単」の方がよっぽど正しい表現だ。


 さて、ここまで読んでくれた人ならなんとなく勘づいてくれただろう。

 そうだ。そうなのだ。単位を落としたことが悔しいのだ。悔しいから、「落単」という言葉そのものに八つ当たっている。

ちくしょう。ただの勉強不足だってのは、わかってんだよ。


僕の落とした単位を見つけたら教えてください。

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