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記号接地の具合を見極める英語教師

JapanとJapaneseの関係

Japanese、KoreaとKorean、PeruとPeruvianにはどのような関係があるのだろうか。今までの授業では、一見似たような単語であるが故に、導入が疎かになっていると感じてきた。そこで今回の授業の一部分では、言語活動の中で名詞と形容詞の関係について記号接地を促すことを目的とした。

本時の流れ


本時の主要な目標は、I want to ~ の一般化であった。前時では、I want to join~ . I want to enjoy ~. を取り扱った。この時、joinとenjoyの違いが明確でない児童が多いことに気づいていた。そこで今回の授業では、国の名詞、形容詞に加えてI want to ~ の記号接地も図りたいという授業者の二つの意図を組み込んだ欲張りな授業を構成したのである。授業の流れは以下だ。

1 好きな海外のご飯について言語活動を行う
2 クイズを用いて母語との接続を図る
3 リトルワールドで注文するご飯について言語活動を行う
4 本日のまとめの活動を行う

それぞれについて詳しく記述していく。

① 好きな海外のご飯について言語活動を行う

What country’s food do you like? をお題として、Small Talkを行う。ここで想定されているのは、以下の会話である。

S1: What country’s food do you like?
S2: I like Japanese food.

この時児童は、実際に行くことを想定した「リトルワールド」というテーマパークのガイドブックを見ながら発話する。

ホームページを切り取りながら作成したガイドブックがこれだ。


※リトルワールドの情報は以下のURLを参照ください。私自身も、何度か訪れていますが、一番のおすすめスポットです!どの発達段階においても、行きたい国についての言語活動をするのが難しいと感じてきました。他方リトルワールドについてであれば、言語活動で身体的に表現することが可能かもしれないと考えて実践してみたという次第です。

② クイズを用いて母語との接続を図る

まず、Quizletでワードマッチングを行う。その後、ロイロノートの全体クイズ機能を使って選択問題に取り組む。

https://quizlet.com/jp/997637781/japan%E3%81%A8japanese%E3%81%AE%E9%96%A2%E4%BF%82-flash-cards/?x=1jqU

https://quizlet.com/jp/997637781/japan%E3%81%A8japanese%E3%81%AE%E9%96%A2%E4%BF%82-flash-cards/?x=1jqU
ロイロノートのクイズ機能

③ リトルワールドで注文するご飯について言語活動を行う

実際のメニュー表を用いて、言語活動を行う。ここで想定されているのは、以下の会話である。

S1: What do you want to eat?
S2: I want to eat Korean food. I want to order Cheese Dog.

S1: What do you want to drink?
S2: I want to drink Peruvian drink. I want to drink INCA KOLA.

④ まとめの活動

2つの活動に取り組む。まず、JapanとJapaneseと同じ関係にある語を見つけて図式化する。その後、Japan とJapanese、KoreaとKorean、それぞれと同じ概念に当たるものを分類する。最後に、I want to 〜を用いた文を完成させる。

出題する問題は以下です。
参考:今井むつみ「学力喪失」p.66 の実行機能を伴う拡張的類推の例

ちなみに、正答者の中に以下のような誤答が散見された。
筆者によって書き直した誤答の例が、以下である。

矢印の使い方から、語の概念が接地していない可能性があることが分かる


矢印の向きがバラバラであることから、関係性が理解されていない可能性があることが分かる

ロイロノートのシンキングツールを用いて、語の概念を整理した図が以下である。複数のカードを、所定の場所に分類するという課題だ。

正答の中に、以下のような誤答も見られた。
これは、筆者によって再現された誤答の例である。

文字と写真に分類している例


正答

成果と課題

成果

  • I want to enjoy ~. とI want to join ~. という二つの離れた概念として定着していたものが、一般化され、分類された。

  • Japan とJapanese、KoreaとKoreanなど名詞と形容詞という関係が概念として理解された

課題

JapanとJapaneseという関係性が身体的に理解されているとは言い難かった。これは、foodという特定の言語材料を扱ったことによる弊害だと考えられる。他の例、例えばJapanese peopleやJapanese animeなどの語に触れる必要があっただろう。

所感

本時の授業では、目的場面状況の具体的な設定を行った。実際に現地に赴いたことのある児童も多く、言語使用場面が想起されやすかった。意図的にI want to eatとI want to drinkを使い分けるメニューを配信したことによって、それぞれの違いが明確になったように思う。授業後のまとめの活動では、to以下に一般動詞を当てはめる活動を行った。こちらで誤答は目立たず、一般動詞を入れ替えることによって異なる表現が可能になるという概念の定着を一定図ることができたのではないだろうか。

一貫したテーマは、日本の英語教師の役割とは何だろうか?である。デジタル教科書や外部人材が活用される現代において、英語教師の役割とは何だろう。

私が大学院の講義を通して出会った一節が以下である。

どの子どもにもうまく使えて、どの子どもも同じように学力を伸ばすことができる「普遍的な方法」は存在しないし、存在するべきでもないのである。教師は、あるいは子どもの成長にかかわっている社会の大人たち一人ひとりは、子どもたち一人ひとりの躓きや興味に気づき、子どもががもつ「学ぶ力」を開花させるように支援ができる「たつじん」にならなくてはいけない。

今井むつみ「学力喪失」はじめに より。

言語接地の具合を見極め、必要な手立てをアレンジする。
それが現代の英語教師の役割の一つであると信じて、、、、英語教師を全うする!その具体を探る命懸けの大人の探究活動に励む🔥




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