myfff2024感想まとめ
myfff2024感想まとめ。(長編のみ)
スペアキー
互いに居場所のなさ、孤独を感じていた2人の奇妙な交流。バカンスに行けない人たちによる見事なバカンス映画。
「正しい時に、正しい場所にいる」
何も起きないようで、不意に芯をつくようなハッとさせられる瞬間がある、フランス映画だなあ、と。会話劇の心地よさがナイス。
映画の中でちゃんと家族構成を説明してくれる訳ではないが、見ていたら何となく分かる上に、ソフィアがいたくないと思う理由も察せられる。色々問題がありそうな母親だが、ちゃんと子供のことを見抜いているという場面には唸らされたな。
一つ残念な点としては、15歳という設定のソフィをそれより少し歳上の女優が演じてはいるが…入浴シーンでわざわざ胸まで露出してなくても、と思ってしまった。過剰反応かもしれないが、疑問に感じてしまうような露出は減らして欲しい。少し年上の女優とはいえ、撮影時は19〜20歳くらいだろうし。
のら犬
田舎町、幼馴染のドッグとミラレス。ある日、ドッグに恋人ができると2人のホモーソーシャルな関係性が崩れていく。ドッグを見下していたミラレスの嫉妬と孤独も、結局子供で頼りないドッグも、何というか……不器用すぎるよボーイ。未熟できりきりする映画だか、切なくて好き。
見ていてふと思ったが、片方に恋人が出来たことによって2人の関係性にヒビが入り執着…という展開では女性同士の映画ではよく描かれているように思うが男性はあまりないかも。さらに、本作はそこにクィアネスがあるのかは曖昧ではあるが、全体的に心情を丁寧に描き、安直ではない点は好感。
イヌとイタリア人、お断り!
ストップモーションアニメと実写の融合、そう語ってくるか!という面白さから始まり、家族の物語にグッと引き込まれていく。個の物語が街を形造り、歴史を造り上げていくという感じが好きなので、時代背景も相まって興味深い映画だった。
ジャングルのけもの
クラブで踊りもせずただぽつんと“あれ”を待っているというジャン。メイはそんなジャンを好奇心から付き合い続ける。時に離れようとして、離れられず。時代は変わりゆくなか変わらぬジャン。終始勿体ぶって何をしてるのかという映画なのに嫌いになれないから負けた気持ち。
全然テイストは違うのに、恩田陸の『ライオンハート』を思い出した。運命の糸で結ばれた2人は時空を超えて巡り合うけれど、互いが運命の相手だと分かった瞬間に別れが来る。ため息が出るほどロマンチックな小説で私のオールタイムベスト小説に入る。なぜ思い出したのだろう…また読み返そうかな。
本作は2024年の年間ベストにもセレクト。
緑の香水
ヒッチコックを意識した軽妙洒脱なサスペンスと思いきや…どんどん失速。根底にあるヨーロッパの政治問題もどこかピンと来ない。舞台を使った殺人劇やスパイ作戦と面白くなりそうでなんだか小洒落てない。ヴァンサン・ラコストの色気を浴びる101分という感じ。
楽園
焦りと怒りと…いつ爆発してもおかしくない少年院の息苦しさ。束の間の楽園も知ってしまえばもっと求めて抑えられなくなる。抑圧は反発を増すだけであるが、彼らを抑える側もそうせざるしか得ない状況も分からなくもないからこの澱み、怒りをどこにぶつけたら良いのか分からなくなる。
北極星
親に愛されなかった。様々な苦しみが今も蝕む。妹の出産、自身の結婚を経て、家族の苦しみを断ち切ろうともがく。忘れたくて船に乗っても性被害を受ける現実。卑下せず、上手く生きられるならこうなっていない。足掻きながら生きるしかない。でもそんな自分が苦しくなる時も。
ふたりだけのロデオ
娘を思っているが、だめだめで全てが間違っている父が娘と刹那の逃避行…。良い話っぽくしているが、責任の持てなさ、考えなしで嘘つき、カッとなるなど、良い話にしていいわけないでしょ、とイラおこ。許容できる範囲のダメな父親ではなく、自分勝手な誘拐でしかない。
ジャヌスとサムの酔っ払い道中
お酒を飲むこと以外楽しみのない田舎、冴えない2人。ひょんなことから酒を密造、意気揚々とパーティーへ。男女コンビが恋愛関係に発展しないのがよかった。特に何かある訳でもない、テンションも高すぎないサラッとしたお馬鹿ムービー。見やすいけども…。