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映画『薔薇とチューリップ』ネタバレ感想/2PMのジュノが一人二役で演じる

2018年制作(日本)
監督:野口照夫
原作:東村アキコ
キャスト:ジュノ、谷村美月、玄理、ふせえり、チャンソン
配給:NBCユニバーサル・エンターテイメント
ラブコメレビュー記事まとめ

2PMのファンである東村アキコが、2PMのジュノのために書き下ろした漫画を、なんとジュノ主演で映画化。原作漫画は未見だが、このような映画があったのだな、と思いJテレでやっているのを録画して見た。

2PMのジュノが、天才画家ネロと大学生のデウォンを演じる。個展のため日本にやってきたネロは、とある人を探しにある温泉旅館にやってくる。そこで出会ったのが自分と全く同じ顔をした温泉が大好きな大学生のデウォンだった。お金を払うと言われて何も知らずに入れ替わることを了承したデウォンは、入れ替わった相手が有名な天才画家と知り驚く。

それでも「あなたが必要」と、マネージャーのミョンアに言われ、偽物として上手くイベントを乗り切ろうと頑張る。人が良いデウォンは、自分は人から必要とされず、やりたいこともない人間だから、偽物であっても必要とされて嬉しいという。

一方、大物気取りでキザなネロは、大金を払うから旅館にある絵を全部買い取らせて欲しいという。旅館には、女将である母親が亡くなり、一時的に女将となった娘のかおりと悦子が何とか切り盛りして借金を返そうとしていた。そんなところに飛び込んできた大金である。かおりはどこまでも人が良く、おっとりしているが、やや暴走気味の思考…と日本のドラマや映画でよく見るタイプのキャラクターだ。(そして好きではない)

ネロが買い取るといった絵はかおりの父親の描いたものであるが、家にいなかった父親のことはよく知らず絵の価値もわからない。そんな絵を大金をはたいてまで買うのには理由がある。天才画家として有名になったネロもまた、“偽物”であったのだ。ネロは自分が描きたい絵を否定され、違うものを描こうとしてかおりの父親の絵を盗作したのだ。アーティストであるネロを作り上げたのは人の作品であった。

ネロは偽物であることに嫌気がさし、盗作したことを謝ろうとしたが、その相手はもうこの世にいなかった。そしてまた偽物として存在し続けなければならないことに嫌気がさし、呑気な大学生のままでいたいという。そんなネロにデウォンは、誰からも必要とされず、やりたいこともない人間の何がいいのか。それでも自分はネロと違う、逃げずにダメな自分のままで生きるという。その言葉に背中をおされ、ネロは偽物の自分を捨て一からスタートし直す決意をする。

正反対の立場にあるネロとデウォンが出会い、それぞれの道を見つける——といったシンプルなストーリーだが、シンプルといえば聞こえはいいものの、悪く言えば薄く都合の良い展開で、ファンタジーにも程がある。

「イケメンは正義」など悦子がいう言葉もううむ、と眉を顰めてしまうものばかり。いちいち言葉尻に文句を言うなんて面倒くさい人間だと自分のことを思うこともあったが、そのようなもやもやを自分は気にしすぎなのかも、と思わず大事にしていこうと思うようになった。私は好きじゃない、どうかと思う、それでいい。

また、「温泉旅館の娘だから男の人の裸は見慣れている」などのかおりの発言もどうかと思った。実際に温泉旅館で働いたことはないが、普通に考えて客がいる時間に掃除をするわけがない。逆だったらまず描かないだろう。女性から男性へのハプニングならOKとしてしまいがちな風潮も良くないと思う。

原作漫画はもう少しそれぞれのキャラクターの背景を描いているのかもしれないが、映画だけの印象だとそれぞれの葛藤に現実味が全くない。ツッコミどころ満載でも許せてしまう映画とそうでない映画が自分の中にあって本作は後者であった。キャラクターの肉付けが出来ていないため、登場人物に誰1人魅力がない。ストーリーにも大きな起伏もなく、そんな簡単に解決するはずのないことが解決されてしまっている。

題の「薔薇」と「チューリップ」でやりたかったことは何となく察するが、絵を描くモチーフにチューリップを選んだだけで大学を辞めろとまで言われるのは現実味がなさすぎるのでは。それが他人の盗作ですんなり評価され世界的アーティストになってしまうという。そもそもどうやって手に入れたのかなどもふわっとしている。

実家が電気屋で、継ぐわけでもないけれど日本に留学し、電気工学を学んでいるというデウォンも正直よく意味がわからない。温泉が好きという設定も安直で、全ての結びつきが強引で粗いので気になって仕方ない。そもそも肝心の2PMのジュノの魅力も引き出せていない気がするのが一番残念な気がする……。

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