韓国映画『パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女』ネタバレ感想/パク・ソダムが女性ドライバーを演じる
『パラサイト 半地下の家族』などのパク・ソダムが凄腕の運び屋を演じる。思えば、運び屋(もしくは逃し屋)を主人公にした韓国映画と聞かれ、パッと思い浮かぶものがない。ライアン・ゴズリングの『ドライヴ』や、ライアン・オニールの『ザ・ドライバー』など、ハリウッド映画であればいくつも浮かぶ。しかし、その中で女性の運び屋を描いた映画…となると、これまた思い浮かばない。(私が知らないだけかもしれないが)その点において、本作は非常に興味深い映画なのである。
とはいえ、韓国映画におけるカーチェイスは、迫力満点で見事。好きなカーチェイスは、『新感染半島 ファイナル・ステージ』のゾンビも交えた盛大なカーチェイス。さながら『マッドマックス 怒りのデス・ロード』であった。『モガディシュ 脱出までの14日間』での内戦の最中、本で車を武装して決死の脱出を試みるカーチェイスもかなりの迫力であった。本作においてもカーチェイスの見応えは間違いなし。特に、路地裏を利用した緩急のあるカーチェイスが良い。
パク・ソダム演じる主人公・ウナは、訳ありの荷物を届ける「特送」の仕事をしている、凄腕ドライバーである。ある日ウナは、賭博ブローカーキム・ドゥシクとその息子・ソウォンを港まで運ぶ依頼を引き受ける。しかし、合流する前にキム・ドゥシクは追っ手によって殺されてしまう。残されたのは父を亡くしたソウォンと、貸金庫の鍵のみ。ソウォンを見捨てることができず、仕方なく連れて逃げる。あれよあれよと巻き込まれ、殺し屋やら何やらに追われる羽目になる。
カーチェイス以上に見応えがあったのは、パク・ソダムのアクションである。鮮やかな身のこなしが見事で、ラストの倉庫でのアクションが特に良かった。また、『パラサイト 半地下の家族』で裕福な家庭の息子と家庭教師の関係であったチョン・ヒョンジュンとパク・ソダムが、本作で再び共演し、共に逃げるのも良い。それだけでなく、ウナがソウォンを守ろうとする背景に母性のようなものを感じさせない描き方であったのも好感。
しかし、ウナが脱北者である設定は既視感を拭えないし、女性の運び屋という点以外に目新しさをあまり感じなかったのは残念。ウナを調査する国家情報院の職員典型的で、北朝鮮の方に関する描き方について『ファイター、北からの挑戦者』でも言及されていたことを思い出した。
更に細かいことを言うと、邦ポスターのキャッチコピーも気になる。
“今度のブツは泣き虫の男の子”“返品不可のエクストリーム・ミッション”
確かに英題も“Special Delivery”で、配送することはするのだが、人間に対し“ブツ”“返品不可”と表現するのはいかがなものか。ネタバレせずに宣伝することは難しいとはいえ、あまり気持ちのいい表現ではない。