好きだった人
半年ぶりに彼に会った。
その前は5年ぶりだったから
かなり頻度が高まっている笑
情報としてのやり取りはメールでも電話でもzoomでも出来るけどやっぱり会わなくっちゃ済まない用事というのも人間だからある。
ひとまわり年上なんだけど相変わらず年齢不詳で、何ならムンバイ空港で会った時と変わらないんじゃないかと思うほどで笑。なんだか自分だけが彼の年に追いつくみたいで悔しい気もする。
相変わらず睫毛長いなあ。瞬きすると大型の鳥が翼を広げたみたいで、目の縁をびっしりと覆う睫毛を、彼が眠っている時になぞるのが好きだった。
相変わらずちっともハゲないし、白髪もないなあ。流石永遠のミュージシャン。両家の初顔合わせの時に、緊張した母が、何を思ったか、彼のお父さんに向かって、「小さい頃インコを飼っていて、インコが父の頭に止まると、よく滑っていたのを懐かしく思い出します。」と親近感が沸くとでも言おうとしたのか、今でも謎だが、あえてのハゲネタをブッ込んで場を凍らせていたのを思い出すけど、メンデルの遺伝の法則は忘れたけど彼はフサフサと巻き毛を生やしていた。
ちょっと強めの巻き毛がクルクルして、それも子供っぽくて好きだったなあ。
彼の話はちっとも耳にも頭にも入ってこない。だって離婚したんだもん。話にはならない。会話の体裁はとるけど、情報のやり取りに徹するのみ。
でも好きだった頃の彼の断片はやっぱりまだ好きで、別れ際に交差点でぎゅっとハグされると、喉の奥がツウンと熱くなって、ジワっと涙が出てきた。気づかれないように振り向かないで信号をそそくさと渡ったけど。
長女がボリュームは彼より少ないのだけど、鶴か白鳥の翼型の睫毛を受け継いでいて、眠る瞼を見ながら、あの涙は何だったのかなあと思っている。