もっと求めてほしい女と信じてほしい男
「あの、お話があります。」
付き合って半年になる彼氏に真面目な話をするときは必ず、お酒を飲む前にこんなふうに声をかける。
今日は仕事終わり、彼の家のダイニングテーブルに向き合って座った。
彼と付き合ってよかったなと思うのは、真面目な話をまともに落ち着いてできることだ。
経験上、こういう話し合いの時って男はマウントをとりたがる。
恋愛心理学の本で読んだが、『好きな人に頼もしいと思われたい』という本能から、彼女と喧嘩したときには強い口調になったり、謝れない人が多いらしい。
そんな頼もしさいらないよ…とその本を読んだ時は心底思ったが、幸いにも彼はその点では男性脳ではないらしい。
だが、
今回シラフでダイニングテーブルに座らせたのは、紛れもなくその男性脳について物申したいことがあったからだ。
「これから言うことはもしかしたらめんどくさいと思われるかもしれない。でも言うね、察してって言うほうが図々しいし、難しいと思うから。」
彼の不思議そうな表情にはつっこまず、続けた。
「いつも会いたいって言うのも、デートの日時提案するのも、帰りたくないって言うのも、電話したいって言うのもわたし!記念日に気付くのも!これについてどう思いますか?」
あー…言ってしまった。いや、言うつもりだったんだけどさすがにメンヘラ発言すぎた。
今日まで、仕事に理解があって物分かりのいい彼女を務めてきたし、彼の友達からもその点に関しては評判が良かったのに…
やらかしたかも。
彼が発したのは次の言葉だった。
「えー!全然考えたことなかった。言われてみればそうかも!ちゃんと会えてたし、会えた日は楽しいし、俺はさよちゃんとのお付き合いで不満な点なかったから、気づかなかったよ。ごめんね。」
おお、なんと物分かりのいい彼氏なんだ。
じゃあこれからは改善してもっと愛情表現を…
「でもさ、どっちでもよくない?どっち発信でもこうやって会ってる時間がちゃんとあることには変わりないし。そこが重要なら気をつけるけどさ。あー、でも帰りたくないとかはさすがに次の日お互い仕事だと難しい時あるよね。俺だって帰るのめんどくさい時あるけどさ〜あはは」
あれ?
なんか思ってたのとちがう。
そこは、寂しい思いさせてごめんからのハグからの頭ぽんぽんじゃないの?
むしろそれさえあれば満足なんだけどな。
男の人って女の悩みに対して共感じゃなくすぐ解決策を言うってよく聞くけど、
こうやってド正論を突きつけられると多少なりともショックだな。
まあ仕方ない、今日は言いたいこと言えたし、よしとしよう!
こうやってお互いの気持ちを言い合って、徐々に擦り合わせていけばいいのだ。
わたしは帰り際また彼に言う。
「帰りたくない〜もっと一緒にいたい〜明日仕事やだ〜」
「いやいや笑、また明後日すぐ会うでしょ、すぐだよすぐ、駅まで送るから靴履いて、ほら。」
またド正論。
まあ男と女なんて、こんなもんですね。