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「ご先祖様には子孫を幸せにする力がある。」という言葉の裏に隠れていた「子どもを思う熱量」のこと。

ボクはリスペクトしている石屋の先輩に「お参り」の大切さを教わりました。それがキッカケで、毎日の「お参り」を続けてきました。もう5年ほどになります。「お参り」を続ければ続けるほど、毎日の「お参り」の時間から学ぶこと、「お参り」をすることで感じるがたくさんあって、今では自分にとって、なくてはならない時間になっています。

自分自身ももちろんなのですが、一緒に連れて行っている息子たちの様子から「子どもたちにとって、ものすごいパワーになる!」ということを感じています。この効果については、もう確信に近いものがあり、このことを伝えた友人も子どもたちを「お参り」に連れて行ったり、毎日の生活の中で「お参り」をする時間をつくったりし始めています。ボクが感じていることと同じように感じている友人が多く、「お参り」の力すごさに本当に驚かされています。

お墓は”ご先祖さま”との幸せの交換の場所

今となっては「お参り」のものすごいパワーを感じるようになっていますが、始めたころはそんなことはなく、「お参り」に行った時にどんなことを願えばいいのか…と迷っていました。そんなボクが大きく変わるきっかけになったのが、リスペクトする先輩から教えていただいた「お墓は、ご先祖様との幸せの交換の場所。ご先祖さまに感謝を伝えれば、ご先祖様が幸せを返してくれる。」という言葉でした。

冒頭で紹介したように「お参り」を続けていると、自分にとって、本当になくてはならない時間になっているけれど、これは”ご先祖さま”の力なのか…。そんな気もするけれど…。なんだかはっきりしなかったので、いつもいろいろ教えていただいている先輩に尋ねてみました。すると、こんな答えが返ってきました。

柳田國男の「先祖の話」の一説に「ご先祖様を懇ろにお祀りすれば、ご先祖様には子孫を幸せにする力がある」と書かれています。

やっぱり”ご先祖さま”には、そんな力があるってことなんだな…と思いつつ、まだなんだか腑に落ちない感じがしていて、このことを教わって以来、必死で「先祖の話」をひたすら読み続けています。文中の「懇ろ」は「ねんごろ」と読みます。真心を持って、丁寧に、親密に…という意味。こんな感じで、いろいろ難しい表現があって、ちょっと難解なんですが、「お参り」をしながら、書かれている言葉を反芻して、意味を考え続けています。

まだまだ分からないことも多い中、難解ながら「先祖の話」を読んでいると、この「ご先祖さまを懇ろにお祀りすれば、ご先祖様には子孫を幸せにする力がある。」という言葉が、どういった背景で生まれたかについて、ボクなりのイメージが湧き始めています。

「ご先祖さまになる。」という言葉。

「先祖の話」は81のテーマに分けて書かれているのですが、その中の1つのテーマに「御先祖になる」というテーマがあります。ここには、今までに聞いたことがなかった言葉にかなり惹かれたのですが、その中にものすごく興味深いことが書かれていました。ちょっとだけその部分を引用させてもらいたいと思います。

たとえば、ここに体格のしっかりとして、眼の光がさわやかで物わかりのよい少年があって、それが跡取り息子でなかったという場合には、必ず周囲の物が激励して今ならば早く立派な人になれとでもいう代わりに、精出して学問をして御先祖になりなさいと、少しも不吉な感じはなしに、言って聴かせたものであった。

柳田國男「先祖の話」4 ご先祖になる より

つまり、昔は「ちゃんとする」とか「立派な人になる」といった意味と同様に「御先祖になる」という言葉が普通に使われていた…ということだと思います。でも、この言葉から分かるのは、自分は”ご先祖さま”に守られていて、立派になれば子孫を守ることができる”ご先祖さま”になれる…ということ。

この言葉から考えると、”ご先祖さま”は決して遠い存在ではなくて、いつも近くにいて守られてきているし、自分自身も”ご先祖さま”になって子孫を守ることもできる…という感覚があったんだろうなと。たぶん、今よりももっともっと亡くなってしまった方と近くにいる空気だったり、自分がなくなってしまった後に残されたみんなの近くにいれる…という空気だったりがあったんだろうな…と想像しています。

おそらくスタートは「子どもたちを守りたい!」と願う熱い気持ち!

先輩から教えてもらった「ご先祖さまを懇ろにお祀りすれば、ご先祖様には子孫を幸せにする力がある。」という言葉を聞いて、初めは「”ご先祖さま”に不思議な力があるってこと?」と考えていましたが、たぶん思っていたのとはちょっと違うんじゃないかな…と思い始めています。

「”ご先祖さま”が守ってくれる。」ということよりも先に、自分自身が亡くなってしまった後も、”ご先祖さま”になってでも、子どもたちやその子どもたちを守るんだ!という熱い気持ちのことなんじゃないかな…と想像しています。それをちゃんと子どもたちに分かってもらうために「ご先祖さまを懇ろにお祀りすれば、ご先祖様には子孫を幸せにする力がある。」ってことを伝えたんじゃないかな…と。ちょっといろいろ考えて、この熱量のある感じがなんかめっちゃステキだ!と思っています。

まだまだ勉強を始めたところですが、今「先祖の話」を読んで学んでいて、ボク自身は亡くなってしまった大好きだったおじいちゃんやおばあちゃん、2人のお姉ちゃんにもっともっとそばにいてもらっていいのかも知れないな…と思っています。あと、亡くなってしまった師匠や友人も、遠いところにいてらもうんじゃなくて、もっと近くにいてもらってもいいのかも知れないな…と思えています。

そして、自分の子どもたちにも「ずっとそばにいてちゃんと見守る!」って覚悟で接していきたいし、その気持ちを伝えるために「お参り」を大切にしていきたいし、事あるごとに”ご先祖さま”や大切な友人のことを言って聞かせてやりたいな…と思っています。

家族の形が変化して、つながりが希薄になってきていることが嘆かれていますが、おそらくこういう子どもたちを大切に思う熱い気持ちをもっともっと表現したり、”ご先祖さま”への「お参り」の時間を大切にしたりすることで、もしかしたら、昔とは形は違うけれど昔以上にステキな家族の関係が生まれていくんじゃないかな…と想像しています。自分自身、お墓さんを作る…という仕事でそんな空気を作っていきたいです。

まずは今日のどこかで、うちの息子たちに「ひいじいちゃんやひいばあちゃんにみないな立派な”ご先祖”になるんやで!」って声をかけてみるところから始めてみようと思っています。

庵治石細目「松原等石材店」3代目 森重裕二



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