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美味しい出汁、とはなにか

師走に突入し、今年も残すところ半月となりました。

かつお節屋は年末年始が一番の書き入れ時で、この時期は会社によっても違うのですが、12月は平月のと比べて2倍以上の売り上げを記録するところが多いようです。(さすがに今年は例年通りとはいかない事が多いですが…)
それだけ、年末年始という「ハレノヒ」は、今でもきちんとお出汁を引いてくださっている方が多いのだと実感します。
普段はダシパックや顆粒、またはめんつゆで済ませているけど、ハレノヒだけはきちんと出汁を引いて、年越しそばとおせちお雑煮を楽しむ、というご家庭があることは、日本の文化が頭の片隅にでも残っているのだと思えるので、とてもありがたいのです。

さて、せっかく出汁を引くなら美味しい出汁を引いてほしい、と思うのが私の願いです。
しかしどんな出汁が美味しい出汁なのか?それについて書いてみようと思います。

お味噌汁

1. かつお出汁の本来の味は…

かつお節の出汁の引き方は、TVや本でいくらでも紹介されていますが、ほとんどの場合に言われることの共通点は…

・鰹節は火を止めてから、または入れたらすぐに火を止める
・沸騰させてはいけない
・できるだけかき混ぜない、触れない
・鰹節が沈むまで待つ
・濾すときは静かに丁寧に
・絞ってはいけない

こんなところでしょうか。
これらを言われる一番の理由は『雑味が出ることを防ぐ』ためです。

近くのスーパーなどで売っている花かつおをお使いになってみるとわかるかと思いますが、かつお節で出汁を引こうとすると、酸味や苦み、渋味、臭みが出やすく、場合によっては味付けをしていないにも関わらず、しょっぱい(塩味のする)ものもあります。

これらは全て雑味であり、こういったものが出てしまうと「美味しくない」ということで、料理本や料理人さんは丁寧な出汁の引き方として、最初に書いた内容を注意事項として伝えています。

しかし、本来のかつお節にはこういった雑味はありませんでした。
酸味にも、苦みにも、臭みにも、塩味にも、全てそれらが生まれる理由があります。
裏を返すと、雑味が生まれる要因を取り除いて作られたかつお節であれば、そもそもそんな難しい出汁の引き方はいらないのです。

昔のままの原料と製法のかつお節は、酸味も苦みも臭みもありませんし、灰汁なんて出ません。前回上げました かつお節の目利きについて でも書いておりますが…

もちろん『美味しい』が前提ですので、酸味やえぐみ、渋味、苦みといったものがある節は、当然ながら選別の対象外です。
(このような雑味が出る節は、そうなる原因があります。本来かつお節から雑味は当たり前に出るものではありません。これはまた別の回で書きます。)

美味しいかつお節の基準に、こういった雑味は入らないのです。

かつお節とは、とても芳醇な香りと、力強い旨味を持ったものです。
昆布のように幅広く受け止めて、そっと後押しをしてくれる懐の深い出汁とは少し異なり、他の食材と手を組んで他の食材の旨味をグッと引き出すものです。

黄金の出汁

⇑濁りもなく、美しい黄金色の出汁は見ているだけでも嬉しいものです。

2. 出汁は難しくない

手前味噌な話ですが、弊社のかつお節は上記したような雑味はありません。
それは、そうならないようにうちの社長と生産者で、ずっと美味しいものを追求して作り続けていたからです。
時代の変化の中で漁法や冷凍法をはじめ様々な技術が変わってきましたし、関連する費用も変わってきました。
その中でずっと変えずにいたことは「美味しいものを作る」という目標です。

美味しいという言葉は「美しい味」と書きます。
日本料理としてのそれは、洗練され、透き通った水のようなものではないかと考えています。
素材そのものが元来持っている、味わいとしての酸味や渋味は活かしても、それが手の加え方ひとつで大きく変わってしまうというのは、それは扱い方や技量の問題かと思うのです。

例えとして牛蒡を出しましょう。
牛蒡という野菜は、土から引き抜き、その後は適切に処理や調理をしなくては、灰汁が回ってしまいます。その牛蒡の育てられ方や引き抜いた後の処理、これがかつお節でいう漁法や処理、冷凍方法に当たり漁師さんたちの仕事です。そして、牛蒡をどのように扱い、下処理をして調理をするかというところが、かつお節の生産者の仕事になります。
どんなに良い原料があってもそれを適切に扱えなければ質は落ちますし、それを誰がどう料理するかで、同じ塩きんぴらを作るにしても全く別物ができてしまうのです。

きちんと作り上げられたかつお節であれば、そもそも雑味自体が無く、充分に本領を発揮できる状態なので、純粋なかつお節本来の「美味しさ」を、誰が出汁を引いても失敗なく引き出すことができるのです。
それが、「沸騰させても絞っても大丈夫」と私が伝え続けている理由でもあります。
そして、本来のかつお節は雑味がないだけではなく濃厚ともいえるほどの、かつお出汁の旨味が溢れています。これを知ってほしいと思います。

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次回は、雑味が何故生まれるのか、その原因について書いていきます。


美味しいかつお節、興味がある方は弊社HPにもちょっと書いてありますので、良かったらご覧ください。
↓↓↓
かつお節のタイコウHP


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