事業創造に参画するUI/UXデザイナーに必要なものとは
昨今、「デザイン経営」「ビジネスデザイン」といった言葉を頻繁に耳にします。経営や事業創造にもデザインが必要とされ、デザイナーのビジネス領域への参入が求められています。
そこで今回インタビューしたのは、今年から事業創造フェーズに参画することになったUI/UXデザイナーの原。社会人として最初のキャリアは新聞のDTPデザイナーに始まりUI/UXデザイナーに転身したという経歴です。そんな彼女のデザイン領域はWebやアプリに限らず店舗やパッケージ、イベントなど、ユーザーの一連の体験をシームレスに設計しています。これまでの道程を聞きました。
目次
・新聞のDTPデザイナーからUI/UXデザイナーへの転身
・「デザインの言語化」がデザイナーとしての成長のきっけだった
・「0→1」の事業創造フェーズに参画
・事業創造フェーズを担当するデザイナーに必要なこと
新聞のDTPデザイナーからUI/UXデザイナーへの転身
ー まずは簡単な自己紹介からお願いします。
ajikeでUI/UXデザイナーをしている原です。UI/UXデザインは未経験でajikeに入社し、来年の2月で6年目を迎えます。
Webデザインやアプリデザインをやりつつ、最近ではブランドデザインやロゴデザインなどプロジェクトの上流のデザインも担当しています。
ー どのような経緯でデザイナーになりましたか?
新聞の制作会社のDTPデザイナーからキャリアをスタートしました。その会社に入るまでIllustratorやPhotoshopも使えず、デザインの経験もなかったのですが、WordやExcelが得意だったので、漠然とPCに関わる仕事ができるならいいなと思っていました。
入社後は、スポーツ紙の見出しや新聞広告のデザインをしていました。ただ、社内には画像のレタッチや組版を専門にした部署があったので、自らその部署に遊びに行って画像合成の仕方やレタッチの方法や組版で文字組みの基本を教わったりと、担当部署以外の業務を学びました。
ー なるほど。そんな職場から転職しようと思ったきっかけは何ですか?
5年ほど働いて、そこで学べるデザインスキルは吸収し尽くしたと薄々感じることがあって、次はWebデザイナーになることを決めました。Webデザイナーの募集を探す中でajikeを見つけました。
「デザインの言語化」がデザイナーとしての成長のきっけだった
ー ajikeに入社後はどのようなことをしていましたか?
初めはブランドサイトの運用・更新やバナーデザインをしていました。バナーデザインを続けることで、配色やレイアウトなどデザインの基本を学びましたね。それからLP、ブランドサイトなど新規のデザインを担当するようになりました。
ー デザインする媒体を紙からWebに変えて、何か難しいことはありましたか?
1つは、Webはユーザーが操作することができ、動きがあるという点ですね。紙は印刷物なので当然動きなどはなく、一覧性や文章の流れなどを考えることが主だったので、最初は平面的な考え方しかできず、とても難しかったのを覚えています。
また、クライアントワークもデザインの提案も経験がなく、初めてajikeに入って自分のデザインを提案しました。デザインの言語化に苦労しましたね。最初はデザインの根拠を言葉に出来なくて、クライアントの好みでデザインが決まってしまう、なんてこともありました。
ー そんなことがあったんですね。その状況をどのように解決しましたか?
まず、どんなに小規模なデザインでも、ペルソナを作るようにしました。最初にユーザーをペルソナとして可視化し、クライアントやチーム内で共通認識をとってからデザインします。
そうすることで、ペルソナ視点でデザインについて議論することができ、クライアントと目線を揃えて目指すべき方向性を決められるようになりました。ペルソナ作成後は、ペルソナに対してデザインで伝えたいイメージをキーワード化し、デザインコンセプトを作ってから、実際のデザイン作業に入るようにしています。
これによって感覚ではない、課題解決を目的にした根拠のあるデザインができるようになりました。入社直後は苦手だったデザインの言語化は、今は好きというか割と得意になりました。
「0→1」の事業創造フェーズに参画
ー 今はどのようなことをしていますか?
いままではオンラインのみの体験デザインでしたが、プロダクトデザイン、店舗イベントなどデジタルに触れていない時の体験も包括して考えています。例えば、いま某コーヒーメーカーさんの新規サービス立ち上げからデザイナーとして参画しています。
これまではダブルダイアモンドで言うと、真ん中の解決すべき課題が特定されていて、アイディアを出す段階からデザインを担当していました。この段階の場合は既にいるユーザーを参考にしてペルソナを作っていくんです。
※ダブルダイアモンドとは「正しい課題を見つける」、「正しい解決策を見つける」という2つの枠組みで事業を捉え、思考するデザインプロセスです。
一方、現在担当しているプロジェクトは事業構想が固まっていない段階から始まりました。ダブルダイアモンドの一番左にある「顧客インサイトを知る」フェーズからです。
ー このフェーズから担当するのはajikeとしても初めてですよね。
はい、初めてなので手探りの状態からスタートでしたね。ユーザーがいない状態なので、まずはアンケートをとってユーザーをセグメントし、仮説立てを行いました。
ー 店舗でイベントも開いていましたよね。
店頭でお客様にプロダクトを触ってもらって体験の仮説検証をしました。具体的に言うと、お客様にいくつかのコーヒーを試飲していただき、ツールを使って好みのコーヒーの味を発見していく、というものです。
このツールやイベントの体験をデザインしました。オンラインのプロダクトだけでなく店舗やパッケージなどのも含めユーザー体験に関わるタッチポイントをデザインしています。
店舗でのイベントの様子
ー なるほど。私たちはリアルとオンラインをまたぐ体験のデザインを「シームレスなUXデザイン」と呼んでいますが、このデザインで難しいと感じることはありますか?
リアルとデジタルの接続部分をよりシームレスになるようデザインする必要があって、そこがデザインする上で重要で、難しい点でもありますね。
それを乗り越えるために、「ストーリーボード」を作成するようにしています。サービスの利用者がどんな行動をするのか具体的なイメージに落とし込むことで、全体のストーリーで不自然なところが見えたり、与えたい体験が何なのか明らかになります。
ー きちんと視覚化することで、クライアントのイメージとズレのないデザインをすることができるんですね。
事業創造フェーズを担当するデザイナーに必要なこと
ー 最後に、事業創造フェーズから参画してみて、この領域を担当するデザイナーにどのようなことが必要だと感じたか教えてください。
デザインをきちんと言語化するスキルはもちろんですが、他には2つの視点が必要だと思います。
1つは、クライアントの課題や構想を理解するビジネス的な視点。2つ目はサービスを利用する中でのユーザーの本質的な欲求や課題を発見するユーザー視点です。この両方を持って、課題を解決するためのデザインができるかどうかが重要だと思います。
そのためには、ビジネス視点でのデザインが持つ役割の理解や、ユーザーの行動、体験を仮説・検証するためのUXDスキル、そしてサービス全体の世界観を統一させるブランドデザインの知識やスキルが必要だと思います。
こどものワークショップ開催費にします👦