生きを擦って、(猿上がりシティーポップ/秋山 黄色)
辛うじて息を吸って吐いている
青酸なんとかだったら終わりって
笑えるね
「息を吸って」と変換しようとしたら、「生きを擦って」とまったく使ったことのないことばになった。
「擦り減りながら生きている」ってこと? PCにまで、そんなことを言われるようになったのか。
「笑えないな」と思いながら、笑っている。
好きが高じて 儚さって知っている
檻の中
俺によく似た奴が笑う
一生なんて言えるほど生きちゃいないけど、ほとんど同じ街に住み続けている。(少なくとも、100km圏内から出たことがない。)
物理的距離っていうのは、結構大事だと思う。
「街から離れたところで、何も変わらない」?
そんなはずはない、と思う。
だって僕は、この街に縛り付けられている。
しがらみが体に巻き付いて、がんじがらめになって動けない。
かろうじて動かせるのは、利き手だけ。
その手で、僕は街から解放されるために、日々何かを生んでいる。
生んで、生んで、生んで。
もしくは、
書いて、書いて、書いて。
けれど、それらは誰にも認められず、日の目を見る前に撃ち落とされ、地に墜ちる。
僕は、大量の死骸を集めたり集めなかったりしながら、落胆する。
せめて、お前達に羽を付けてあげられたらいいんだけど。
本当は、羽を生やして逃げたいのは、僕なのに。
何黙ってんの? ここは何もない町の底
きっと凛としなくちゃいけないよ
嘘は得意な方かい?
今生きている僕の原動力。
「ここから逃げ出したい」
それだけだ。
こんな街でも、大切にしているものはいくつかある。
ここから逃げることは、それらを置いていくことになる。
でも、それを覚悟と言うんだろう。
逃げるためには――自分が生んだもの達に羽を生やすためには、それくらいの覚悟はできている。
「もう一度どこかで 会えたらいいな いいな いいな」って
何より愛したいんだ
居場所くらいは 居場所くらいは
僕は、息を吸っている。
そして、「生きを擦っている」。
何かを擦り減らしてばかりの日々だ。
その「何か」も、わからないまま。
けれど、僕は日々生み続けている。
誰かの居場所になりますように。
そんなものを、生み続けている。
たとえ、飛んでは墜ちたとしても。
僕以外の誰かに、拾ってもらえ。
そしていつか、僕と共に、この街を抜け出そう。
Look for city pop
猿上がりシティーポップ(『Hello my shoes』収録)/秋山 黄色(2018年)
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