きらい、きらい、だいきらい(ねえ/ニシカワタイヘイ)
僕は、人が嫌いだ。
どうしてって訊かれても、そんなのわからない。
僕だって、人を好きになりたいのに。
嫌いになんか、なりたくないのに。
一つだけ、わかっていることがある。
誰かが、笑っている。
どうして、笑っているの?
誰かが、泣いている。
どうして、泣いているの?
僕には、わからない。
何も、何も。
檻の中でウサギたちが じゃれあってはケンカしてる
それを見てるボクの眼は
キレイなの? 汚れてるの?
けれど、人というのは上手く出来ている。何が面白いのかわからなくても、「面白い」ということが出来る。何が腹立たしいのかわからなくても、「腹立たしい」ということが出来る。僕はこんなだけど、一応出来るんだよ。楽しい、っていうフリも。悲しい、っていうフリも。まあ、すぐにバレてしまうくらい、下手くそなんだけどね。
何も思っていないのなら、
何も感じていないのなら、
そもそも、フリなんてしなければいい。
まあ、そうなんだけどね。僕だって、フリなんて面倒なことしたくないよ。でもね、フリを止めたら、もっと面倒なことになるんだ。こんなときに笑わないなんて、そんなときに泣かないなんて、こいつはきっとおかしいんだ。なんてね。仲間はずれって、すぐにはじき出されちゃうから。仲間はずれになってもいいんだけど、それじゃあ、どこにもいられなくなって、生きられなくなっちゃうからね。人は一人じゃ生きられないようになっているんだから、この社会は。
だから、
僕は今日も、
笑いたくもないのに笑っている。
悲しくもないのに、悲しんでいる。
ふいに、何かに見られている気がした。でも、ふり返っても何もいない。誰もいない。でも、じっと見つめられている……。ああ、と僕は思い当たる。そうだよな。僕のことを四六時中見ているなんて、僕以外にはいないもの。
ねぇ それって楽しいの?
ねぇねぇ 教えてよ?
……楽しい?
楽しいって、何が?
楽しいフリはしているけど、本当に楽しいかどうかなんて……。
ねぇ それって楽しいの?
ねぇねぇ 聞こえないよ?
……。
……。
楽しくないよ。
楽しいわけないだろ。
でも、
楽しくなくても、楽しいフリをしなきゃ。
悲しくなくても、悲しいフリをしなきゃ。
そうしないと、生きていけないんだろ。
そうしないと、見てもらえないんだろ。
僕を。
私を。
ねぇ。
フリをしているのは、僕だけなの?
あなたは、今、本当に楽しいの?
ねぇ。
ねぇ。
註:引用部分は、全て「ねえ」の歌詞より。
ねえ/ニシカワタイヘイ feat.滲音かこい(2013年)