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創作

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全てフィクションです。
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記事一覧

おなかすいた

おなかすいた

渋谷駅、東急東横線に乗り換える。
駅前のパン屋で、クリスマス限定のコッペパンが売られている。Suicaで買い物をする。財布の中身は知らない。

途中、コンビニに寄る。ここからあと10分歩く。もう3年も続けている。

ぬるいおにぎりを頬張る。鶏五目。冷たい空気が流れ込む。カーテンが揺れて、陽の光を思い出す。いつかはここに居られなくなる。そう言った人達は、必死にまともなふりをしている。ねぎトロ巻き。何

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愛の意味を尋ねようにも

 誰にも愛されていないから。

 そう言って、君は消えてしまった。
 さようならとありがとうを伝えることすら許されない、実に一方的な別れだった。
 私は常日頃から君に好意を伝えていたし、君がその存在を否定するたびに、言葉を尽くして肯定してきた。曖昧な言葉は君には伝わらないと知っていたから、できるだけストレートに伝えるよう意識していた。そのどれもが伝わっていなかったのだとしたら、それは私が悪いのだろ

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テイク2

テイク2

いつの間にか髪が伸びていた。毛先ばかりが傷んでいて、中途半端にしか傷付くことのできない自分を見ているようで嫌だった。授業中、いくつもの視線から逃れるように綴った言葉が、僕の将来になったらいいなと思った。

僕にはいつまで経っても救いが来なかった。クラスメイトは皆、大学やら専門学校やらに進学するらしい。一方の僕は、高校を卒業したらこの施設を出なければいけないことが決まっている。その先は全て自己責任。

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Q.朝起きて最初にすることは?

朝起きて最初にすることは、歯を磨くことでも、顔を洗うことでも、朝食を摂ることでもない。僕の一日は、絶望から始まる。

ひとしきり絶望をして、ああ今日も絶望しているな、僕の人生はこうでなくっちゃ。と、謎の納得をするところまでがワンセット。そのあとは、ひたすら間違いを正す作業をする。正して、正して、正して正して正して、ああ今日も間違いだらけだな、もうやめてしまおう。と、諦めるところまで完了してから、や

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あけびちゃん

「わたし、あけびちゃんと一緒に住む」

 そうパパに伝えたら勘当されてしまい、わたしはあけびちゃんの家に転がり込んでいる。
 結果的にあけびちゃんとの同居ライフを送れているので、これはパパなりの肯定の仕方だったのかもしれないな。絶対そんなわけないだろ、と言いながら、あけびちゃんがポテチに手を伸ばしたのを、わたしは見逃さない。

「あけびちゃん、あと600グラムでゲームオーバーだよ」

 うるせぇポ

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あけびちゃんの話

(↑先にこちらの記事を読むことをオススメします)

突然物語を投稿したものだから、驚いた方や「何この記事?」となった方もいらっしゃると思います。でもフィクションなので安心してくださいね。そして過去にもいくつか創作した文章を投稿しているのでそちらもぜひ。↓

『あけびちゃん』の本文の最後に問いを設置しましたが、私の想像していなかったアンサーをいくつか目にして、言葉の受け取り方や解釈の仕方は人それぞれ

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