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カメライフ『最善手ドリル』★12★

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こんにちは! 藍澤誠です。

自分は自分自身を動かせますが、他者を動かすのは難しいですよね。さらに「生徒をコントロールしよう」という発想が、大きなストレスを生むと私は考えています。

しかし自分では「生徒をコントロールしたくない」と思っていても、親や本人から「コントロールして欲しい」というリクエストがある場合があります。

【問題】

じゅげむくん(小5・男子)は、塾では楽しく勉強するのですが、家ではあまり勉強をしません。親からは「家庭学習できるようにならないでしょうか」と相談されました。家でちゃんと学習できるようにしたい、というのはじゅげむくん自身の願いでもあります。どのような手を打てばよいでしょうか。

①勉強のポイントカードを作ってモチベーションを高める。
②毎日、直筆のミニ手紙を渡し、励まし続ける。
③短くてもいいから毎日、生活の記録をつけさせる。

【解説と解答】

これはどれも良さそう、と思えるかもしれないが、慣れてくるとすぐにダメな選択肢がわかる。悪手に共通している、ある言葉だ。

「毎日」

「②直筆の手紙」も効果があるだろうし、「③短くてもいいから」という考え方もきわめて重要だ。しかし、そこに「毎日」が加わると、教える方(応援する方)・教わる方(応援される方)、双方にとってつらい

「毎日直筆の手紙を書く」となると、先生自身の生活習慣を、その子のために変えなくてはならない。「日記」の方は、逆に生徒が生活習慣を変える必要がある。

自己犠牲をいとわない、手間ひまををかける

という発想は、良さそうに見えるが、常に最善というわけではない。とくに、ぜんぜん学習の習慣がない子のファーストステップとしては重い。また②と③は双方向性がやや低い。①ポイントカードは、「与える/もらう」の立場がはっきりして、生徒と先生の交流が活発になる

生活習慣を変えるというのは、根本的な解決につながるし、目指すべき地点だが、第一歩目は勉強するといいことがあるということを脳を含めた体に覚えさせることだ。そして勉強のモチベーションをアップしながら、生活と思考様式を「少しずつ」「長期にわたって」改善していくことが大切だ。

「毎日」と「長期にわたって」は、似ているようでちょっとニュアンスがちがう。毎日は努力、長期は期間だ。違いをよりはっきりさせるなら、「毎日学校に通う」と「6年間学校に通う」の違い。毎日通うという日々決戦を目標にするのではなく、6年間というスパンから一手一手を意識する。

そして「長期にわたって」やるプロジェクトには、そこに「ハマる要素」「やりこみ要素」が必要で、できればゲーム感覚のようなものを取り入れたい。

最善手:①勉強のポイントカードを作ってモチベーションを高める。

◎実戦の棋譜を見てみよう

勉強するといいことがある、生活習慣を改善するのは楽しい、ということを実感してもらうために「カメ帳」というポイントカードを作りました。カードというよりはノートですが。

▲限定版のミニノート。マリオ最強です。

中身はこのような感じです。
自分にとって「成長できる行動」をするとカメがもらえます。逆にマイナスなことをすると「カメ」が減少します。カメはハンコだったのですが、すぐにハンコを押すのが大変になり、「単位としてのカメ」だけが残りました。

3連勝ボーナスというのは、漢字テスト(学校の10問のテスト)を、3回連続満点を取った、という意味です。塾で「テストのスケジュールと範囲」を確認し、「難しい漢字だけ練習」して、「あとは家でトレーニングしたらいいよ」とアドバイスしました。

また友達がちゃんとやらなかったので「まきぞえ」をくらったり、人から「おわび」を受けたり、体調を崩した子やケガした仲間に「おみまい」を与えられたりという、メンバーとの連携をプログラムします。結果、友達同士で「頑張ろうぜ」という空気ができてきますし、一人一人、目指すべきゴールが違うことを意識できます。ある子は、部活やクラブ活動でのポイントが多くなり、ある子は、創作活動を褒められます。受験生は、狙っている状況に対し、たくさんの手を打つことが課題になり、それらはノートではっきりします。

学校でやったテストを塾に持ってきて、努力や工夫や成果をプレゼンするとポイントになります。ミスが多いテストは、直すとポイントがもらえます。失敗をターンさせるチャンスを与えます。

また、ポイントの価値は、自分でジャッジさせるか、サイコロで決めます。自己評価が大切、と繰り返し強調します。「今日は自主勉強をしたけれど、ギリギリだし、ポイントをもらうためだった」という状況は、「粘った」という意味でプラスになったり、「せこい」という意味でマイナスになったりします。そこは本人しかわからないので、正直に自分でジャッジさせます。

「持久走5位」などのイベントのがんばりについては、サイコロを振ります。上の写真では、サイコロを3つ振ってポイントを決めました。サイコロは最大10個まであります。

「良い質問をする」ことでプラス、「同じミスを繰り返す」ことでとマイナスなど、自分の行動を書き出し、ゲーム感覚でテンポよく調整していきます。このカメポイントは、シャーペンなどの文具やデュエマのパックなど、役に立つものに交換することができます。なぜかレンジで温める「さとうのごはん」と交換した子もいました(笑)500万カメ貯めてポルシェを買うと言っている子もいます。

別の子(中1男子ルイージくん)のカメ帳も見てみましょう。

かなりの「おカメ持ち」ですが一進一退の毎日です。いいわけしたり、暴言が多いのが判ります。「カービィ批判」というのは、塾の子が寄贈してくれたカービィのぬいぐるみを批判したからです(笑)。

短所については、本人も「ここがダメなんだよな」とわかっていることが多いです。そんな直すべき「修正ポイント」を、少しずつ、改善していきます。マイナスが重なり始めたときは、やる気が低下するので「芸術的な寝ぐせだね!」という感じで、予想外のところを褒めて、プラスポイントを付与し、モチベーションを調整します。

このように、短所と長所をくっきりさせ、勉強の累積を記録していきます。その後、「小学生に日記を書かせる」という大変なプロジェクトも、このカメ帳を使って2年間書かせることができました。ポイントは「物で釣る」という印象もあるかもしれませんが、上手く使えば「褒めの機会」を増やすことにつながるし、「言いにくい指導」をマイルドに行うことができますし、立派な学習記録にもなります

ログインボーナスだとか、誕生日ボーナスだとか、お年玉だとか(笑)、しまいには節分ボーナスとか、謎なものまで登場。今、やれやれ、みたいなことを書こうとしましたが、そうすると「弱音」ということでマイナス2カメくらいされちゃうので、こらえて今日はここまでにします。

★13★に続く



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Jの先生 / 藍澤誠
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